第二章 黄泉路の枷鎖よ
〈第一章あらすじ&登場人物紹介〉
===第一章 あらすじ===
長かった〈
摂政は、菖蒲の館から消えた『ライシェン』と行方不明のセレイエを探すため、鷹刀一族の屋敷の家宅捜索を決めた。また、同時に事情聴取を行うとした。
ルイフォンは「任意の聴取など行く必要はない」と主張したが、イーレオとエルファンは「エルファンが聴取に応じる」と言う。平行線となり、一族ではないルイフォンは
更に、死んだことになっている
後ろ髪を引かれる思いで、屋敷をあとにしたルイフォンだったが、草薙家に着いてすぐ、レイウェンに「事情聴取に応じるのは、摂政になんらかの交渉を持ちかけるためだ」と教えられる。そして、〈
王宮に着いたエルファンは、初めは罪人扱いで古い地下牢獄に連れて行かれたが、「『
互いに言いがかりのような言葉の応酬を繰り返したのち、エルファンは最大の
実は
摂政は鷹刀一族を軽視できなくなり、『王家と鷹刀一族は、互いに不干渉を約束する』という、エルファンの交渉に応じた。
摂政への牽制は成功したが、しばらくは、このまま様子をみたほうがよいだろうと、ルイフォンとメイシアは草薙家に留まることになった。
ある日、シャンリーが「『ライシェン』の未来の選択肢のひとつに、
ルイフォンとメイシアは、無意識のうちに、『ライシェン』を『人』ではなく『もの』扱いしていたことに気づかされた。けれど、だからこそ、もう少し、自分たちで足掻いてみようと決意を新たにしたのだった。
===『di;vine+sin;fonia デヴァイン・シンフォニア
主人公ルイフォンの姉セレイエによる、殺された息子ライシェンを蘇らせる計画。
王の私設研究機関〈七つの大罪〉の技術で再生された『肉体』に、ルイフォンの中に封じたライシェンの『記憶』を入れることで『蘇生』が叶う。
また、生き返った『ライシェン』が幸せな人生を送れるように、セレイエはふたつの未来を用意した。
ひとつは、本来、ライシェンが歩むはずだった、父ヤンイェンのもとで王となる道。
もうひとつは、愛情あふれる家庭で、優しい養父母のもとで平凡な子供として生きる道。
セレイエは、弟であるルイフォンと、ヤンイェンの
『di;vine+sin;fonia』という名称は、セレイエによって名付けられた。
『di』は、『ふたつ』を意味する接頭辞。『vine』は、『
つまり、『ふたつの
『sin』は『罪』。『fonia』は、ただの語呂合わせ。
これらを繋ぎ合わせて『命に対する冒涜』を意味する。
この計画が禁忌の行為と分かっていながら、セレイエは自分を止められなかった、ということである。
===登場人物===
『デヴァイン・シンフォニア
亡き母キリファから〈
父親は、表向きは
そのことは、薄々、本人も感づいてはいるが、既に親元から独立し、
端正な顔立ちであるのだが、表情のせいでそうは見えない。
長髪を後ろで一本に編み、毛先を母の形見である金の鈴と、青い飾り紐で留めている。
亡くなる前のセレイエに、ライシェンの『記憶』を一方的に預けられていた。
※『ハッカー』という用語は、本来『コンピュータ技術に精通した人』の意味であり、悪い意味を持たない。むしろ、尊称として使われている。
対して、『クラッカー』は、悪意を持って他人のコンピュータを攻撃する者を指す。
よって、本作品では、〈
メイシア
『デヴァイン・シンフォニア
セレイエによって、ルイフォンとの出逢いを仕組まれ、彼と恋仲――事実上の伴侶となる。
もと
箱入り娘らしい無知さと明晰な頭脳を持つ。すなわち、育ちの良さから人を疑うことはできないが、状況の矛盾から嘘を見抜く。
白磁の肌、黒絹の髪の美少女。
セレイエの〈影〉であったホンシュアを通して、セレイエの『記憶』を受け取っている。
[鷹刀一族]
約三十年前、イーレオが、王家および王家の私設研究機関である〈七つの大罪〉と縁を切るまで、血族を有機コンピュータ〈
古くは、鷹の一族と呼ばれた武人の一族であり、現在の王家樹立の立役者の一族であった。
鷹刀イーレオ
若作りで洒落者。
かつては〈七つの大罪〉の研究者、〈悪魔〉の〈
鷹刀エルファン
イーレオの長子。次期総帥であったが、次男リュイセンに位を譲った。
ルイフォンとは親子ほど歳の離れた異母兄ということになっているが、実は父親。
感情を表に出すことが少ない。冷静、冷酷。
鷹刀リュイセン
エルファンの次男。十九歳。本人は知らないが、ルイフォンの異母兄にあたる。
父から位を譲られ、次期総帥となった。また、最後の総帥になる決意をしている。
黄金比の美貌の持ち主。
文句も多いが、やるときはやる男。『神速の双刀使い』と呼ばれている。
ミンウェイにプロポーズをしたが、自分はまだまだだと、取り消した。
鷹刀ミンウェイ
鷹刀一族の中枢をなす人物のひとり。屋敷の切り盛りしている。二十代半ばに見える。
緩やかに波打つ長い髪と、豊満な肉体を持つ絶世の美女。ただし、本来は直毛。
薬草と毒草のエキスパート。医師免状も持っている。
かつて〈ベラドンナ〉という名の毒使いの暗殺者として暗躍していた。
母親だと思っていた人物のクローンであり、そのために『父親』ヘイシャオに溺愛という名の虐待を受けていたのだと知った。苦悩はあったが、今は乗り越えている。
草薙チャオラウ
鷹刀一族の中枢をなす人物のひとり。イーレオの護衛にして、ルイフォンの武術師範。
無精髭を弄ぶ癖がある。
主筋であるユイランを、幼少のころから半世紀ほど、一途に想っている、らしい。
料理長
鷹刀一族の屋敷の料理長。
恰幅の良い初老の男。人柄が体格に出ている。
キリファ
もとエルファンの愛人で、セレイエ、ルイフォンの母。ただし、イーレオ、ユイランと結託して、ルイフォンがエルファンの息子であることを隠していた。
天才クラッカー〈
〈七つの大罪〉の〈悪魔〉、〈
四年前に当時の国王シルフェンに『首を落とさせて』死亡。
どうやら、自分の体を有機コンピュータ〈スー〉に作り変えるためだったらしい。
ルイフォンに『手紙』と称し、人工知能〈スー〉のプログラムを託した。
〈ケル〉〈ベロ〉〈スー〉
キリファが、〈
表向きは普通のスーパーコンピュータだが、それは張りぼてである。
本体は、人間の脳から作られた有機コンピュータで、光の
〈ベロ〉の人格は、シャオリエのオリジナル『パイシュエ』である。
〈ケル〉は、キリファの親友といってもよい間柄である。
〈スー〉は、ルイフォンがキリファの『手紙』を正確に打ち込まないと出てこないのだが、所在は、〈
鷹刀セレイエ
エルファンとキリファの娘。表向きはルイフォンの異父姉となっているが、同父母姉である。
リュイセンにとっては、異母姉になる。
生まれながらの〈天使〉であり、自分の力を知るために自ら〈悪魔〉となった。
先王シルフェンにライシェンを殺されたため、『デヴァイン・シンフォニア
ただし、セレイエ本人は、ライシェンの記憶を手に入れるために〈天使〉の力を使い尽くし、あとのことは〈影〉のホンシュアに託して死亡した。
パイシュエ
イーレオ曰く、『俺を育ててくれた
鷹刀一族を〈七つの大罪〉の支配から解放するために〈悪魔〉となり、三十年前、その身を犠牲にして未来永劫、一族を〈
自分の死後、一族を率いていくことになるイーレオを助けるために、シャオリエという〈影〉を遺した。
また、どこかに残されていた彼女の何かを使い、キリファは〈ベロ〉を作った。
すなわち、パイシュエというひとりの人間から、『シャオリエ』と〈ベロ〉が作られている。
鷹刀ヘイシャオ
〈七つの大罪〉の〈悪魔〉、〈
妻のミンウェイの遺言により、妻の蘇生のために作ったクローン体を『娘』として育てていくうちに心を病んでいった。
十数年前に、娘のミンウェイを連れて現れ、自殺のようなかたちでエルファンに殺された。
[王家]
白金の髪、青灰色の瞳の
王家に生まれた
この特殊な力を持つ者を王としてきたため、
アイリー
大華王国の現女王。十五歳。四年前、先王の父が急死したため、若年ながら王位に就いた。
彼女の婚約を
シルフェン
先王。四年前、腹心だった甥のヤンイェンに殺害された。
〈神の御子〉の男子に恵まれなかった先々王が〈七つの大罪〉に作らせた『過去の王のクローン』である。
ヤンイェン
先王の甥。女王の婚約者。
実は先王が〈神の御子〉を求めて姉に産ませた隠し子で、女王アイリーや摂政カイウォルの異母兄弟に当たる。
セレイエとの間に生まれたライシェンを殺され、蘇生を反対されたため、先王を殺害した。
メイシアの
ライシェン
ヤンイェンとセレイエの息子で、〈神の御子〉。
〈神の御子〉の男子が持つ『情報を読み取る』能力に加え、〈天使〉のセレイエから受け継いだ『情報を書き込む』能力を持っていた。
彼の力は、〈天使〉の羽のように自分と相手を繋ぐことなく、〈神の御子〉のように手も触れずに扱えたため、先王シルフェンは彼を『神』と呼ぶしかないと言い、『
周りの『殺意』を感じ取り、相手を殺してしまったために、先王に殺された。
『ライシェン』
〈
オリジナルのライシェンは盲目だったが、周りの『殺意』を感じ取らずにすむようにと、目が見えるように作られた。
凍結処理が施され、ルイフォンとメイシアに託された。
カイウォル
摂政。女王の兄に当たる人物。
摂政を含む、女王以外の兄弟は〈神の御子〉の外見を持たないために、王位継承権はない。
ハオリュウに、「異母兄にあたるヤンイェンとの結婚を嫌がる妹、女王アイリーの結婚を延期するために、君が女王の婚約者になってほしい」と陰謀を持ちかけた。
[〈七つの大罪〉]
現代の『七つの大罪』=『新・七つの大罪』を犯す『闇の研究組織』。
実は、王の私設研究機関。
王家に、王になる資格を持つ〈神の御子〉が生まれないとき、『過去の王のクローンを作り、王家の断絶を防ぐ』という役割を担っている。
〈
他人の脳から情報を読み取ることによって生じる、
太古の昔に死んだ王の脳細胞から生まれた巨大な有機コンピュータで、鷹刀一族の血肉を動力源とする。
『光の
〈悪魔〉
知的好奇心に魂を売り渡した研究者を〈悪魔〉と呼ぶ。
〈悪魔〉は〈神〉から名前を貰い、潤沢な資金と絶対の加護、蓄積された門外不出の技術を元に、更なる高みを目指す。
代償は体に刻み込まれた『契約』。――
〈天使〉
『記憶の書き込み』ができる人体実験体。
脳内介入を行う際に、背中から光の羽を出し、まるで天使のような姿になる。
〈天使〉とは、脳という記憶装置に、
羽は有機コンピュータ〈
〈影〉
〈天使〉によって、脳を他人の記憶に書き換えられた人間。
体は元の人物だが、精神が別人となる。
『呪い』・便宜上、そう呼ばれているもの
〈天使〉の脳内介入によって受ける影響、被害といったもの。悪魔の『契約』も『呪い』の一種である。
服従が快楽と錯覚するような他人を支配する
『デヴァイン・シンフォニア
セレイエが『ライシェン』を作らせるために、蘇らせたヘイシャオ。
セレイエに吹き込まれた嘘のせいでイーレオの命を狙い、鷹刀一族と敵対していたが、リュイセンによって心を入れ替えた。
メイシアを〈悪魔〉の『契約』から解放するため、自ら
ホンシュア
セレイエの〈影〉。肉体は、殺されたライシェンの侍女で、〈天使〉化してあった。
〈影〉にされたメイシアの父親に、死ぬ前だけでも本人に戻れるような細工をしたため、体が限界を超え、熱暴走を起こして死亡。
メイシアにセレイエの記憶を潜ませ、鷹刀に行くように仕向けた、いわば発端を作った人物である。
〈
セレイエの〈悪魔〉としての名前。
セレイエの〈影〉であるホンシュアをを指すこともある。
[藤咲家・他]
藤咲ハオリュウ
メイシアの異母弟。十二歳。
父親を亡くしたため、若年ながら藤咲家の当主を継いだ。
母親が
異母姉メイシアを自由にするために、表向き死亡したことにしたのは彼である。
女王陛下の婚礼衣装制作に関して、草薙レイウェンと提携を決めた。
摂政カイウォルに、「女王の婚約者にならないか」と陰謀を持ちかけられている。
藤咲コウレン
メイシア、ハオリュウの父親。厳月家・斑目一族・〈
藤咲コウレンの妻
メイシアの継母。ハオリュウの実母。
心労で正気を失ってしまい、別荘で暮らしていたが、メイシアがお見舞いに行ったあとから徐々に快方に向かっている。
『狂犬』と呼ばれる、イカレ警察隊員。銃の名手。三十路手前程度。
幼いころ、
ぼさぼさに乱れまくった頭髪、隈のできた血走った目、不健康そうな青白い肌をしている。
ミンウェイに好意を寄せていると周りは推測しているが、真偽は不明。
[草薙家・他]
草薙レイウェン
エルファンの長男。リュイセンの兄。
妻のシャンリーと共に一族を抜けて、服飾会社、警備会社など、複数の会社を興す。
草薙シャンリー
レイウェンの妻。チャオラウの姪だが、赤子のころに両親を亡くしたためチャオラウの養女になっている。王宮に召されるほどの剣舞の名手。
遠目には男性にしかみえない。本人は男装をしているつもりはないが、男装の麗人と呼ばれる。
草薙クーティエ
レイウェンとシャンリーの娘。リュイセンの姪に当たる。十歳。
可愛らしく、活発。
ハオリュウに恋心を抱いている。
鷹刀ユイラン
エルファンの正妻。レイウェン、リュイセンの母。
レイウェンの会社の専属デザイナーとして、鷹刀一族の屋敷を出た。
ルイフォンが、エルファンの子であることを隠したいキリファに協力して、愛人をいじめる正妻のふりをしてくれた。
メイシアの異母弟ハオリュウに、メイシアの花嫁衣装を依頼された。
斑目タオロン
よく陽に焼けた浅黒い肌に、意思の強そうな目をした、もと
堂々たる体躯に猪突猛進の性格。二十四歳だが、童顔ゆえに、二十歳そこそこに見られる。
斑目一族や〈
斑目ファンルゥ
タオロンの娘。四、五歳くらい。
くりっとした丸い目に、ぴょんぴょんとはねた癖っ毛が愛らしい。
[繁華街]
シャオリエ
高級娼館の女主人。
外見は嫋やかな美女だが、中身は『姐さん』。
実は〈影〉であり、イーレオを育てた、パイシュエという人物の記憶を持つ。
スーリン
シャオリエの店の娼婦。
くるくる巻き毛のポニーテールが似合う、小柄で可愛らしい少女。ということになっているが妖艶な美女という説もある。
本人曰く、もと女優の卵である。実年齢は不明。
ルイリン
ルイフォンの女装姿につけられた名前。
タオロンと
少女にしては長身で、そのことを気するかのように猫背である。
――という設定になっている。
トンツァイ
繁華街の情報屋。
痩せぎすの男。
キンタン
トンツァイの息子。ルイフォンと同い年。
カードゲームが好き。
===大華王国について===
黒髪黒目の国民の中で、白金の髪、青灰色の瞳を持つ王が治める王国である。
身分制度は、
また、暴力的な手段によって団結している集団のことを
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