十月桜編〈モノ・ビューティー〉

 ――八月の終り。始業式から数えて最初の日曜日の夕方、涼香の家。


 日曜で店が休みの静香がTVを見ながらくつろぎ、涼香が夕飯の支度をしていた。

 涼香が一通り夕飯の下ごしらえを終え、エプロンを外しながら静香から離れたソファにおずおずと座る。


「……そういえば裕貴から返事はもらったの?」

 静香がTVを見ながら気だるげに聞いてくる。

「はっ! ……うっ……ううん、まっ、まだ……」


「ちっ、あの優柔不断の小僧、一体何をやってるの?」

「そっ……それは、わっわたし……が、まっ待たせて……いる……から……」


「どういう事?」

「そっ……それ……なん……だっ……け、けど、ぶ……文化祭で……へ……返事を――」

「あーーもうっ! まだろっこしい喋り方は止めて! 一葉! 説明しなさい!」


「ごっごめん……なさい……」

「裕貴には文化祭の時に返事を聞かせてって言ってあるの。それで涼香は一人で聞く勇気がないから、できれば貴方に一緒に居て欲しいって言いたいのよ」


「……ふん。DOLLがいなきゃマトモに意思表示も出来ないなんて、本当にグズな子ね。それでよく小僧に告白なんてできたものね」

「事は言いつけ通りに進んでるわ。問題ないでしょ」

 一葉が代わりに答える。


「……はあ、これじゃあ将来どっちがお荷物になるか分かったもんじゃないわね。

 やっぱりあんたには小僧が必要みたいだから、さっさとあんたをつかませないと、私の将来が真っ暗だわ」

「そんな……」

「それと、あんたは他の小娘に比べたらアドバンテージはあるんだから、どんな手を使っても小僧をモノにしなさい」

「ママ……」

 涼香が悲しそうな顔をする。


「涼香も裕貴も貴女のゲームのコマじゃないわ。そういう言い方は止めて!」

 一葉が静香との間に立ち憮然と言う。

「まったく……緋織が作ったAIはあの子に似て小生意気だわ。それで? 文化祭で返事を聞くって事は何か考えてるの?」

「ええ。説明するわ」


 そうして一葉が代わりに説明する。


「――確かにその状況なら拒否きょひりにくいわね。分かったわ。文化祭初日、土曜日十時に行けばいいのね?」

「ええ。頼むわ」


「もう一つ押しが必要かしら……」

「え?」

 静香が呟き、涼香が聞き返す。


「何でもないわ。――そういえば話しは変わるけど、以前小娘達に着せた水泳帯ベイシングリボンだけど、センスがイマイチだったわねえ……」

 静香は答えず、人差し指を立て、思い出したように薄く笑う。

「そ、そう……かな?」


「それで今はDOLL服研究班の副班長をしてるんでしょ? だから今度は失敗しないように私が見てあげるから、文化祭用のDOLL服が出来上がったら、まとめて持ってきなさい」

「いい……けど……?」

 涼香が怪訝けげんそうに答える。


「そうかしら? 涼香のベイシングリボンは私にはよくできてるように見えたし、裕貴達には好評だったわ」

 不自然な評価に一葉が反論する。

「黙りなさい! DOLLの意見なんか聞いちゃいないわ!」

「…………」

 一葉がムッとして黙る。


「あっあと、……こっ、これから、お、おお客さん……が来る……けど、会って

 くっくだ……さい」

 涼香が気まずい空気を換えようと口を開く。

「誰よ!」

 乱暴に静香が聞き返す。


「ひっ! ひ……緋織さん……」

「あの子が? 何しに?」

「私の素体ボディを新調したから、その入れ替えと保護者の承認の為よ」

「もう来るって……はっ! 事後承諾じゃない。そんなの私がOKすると思うの?」

 静香が呆れて手を振る。


「機種は歌姫ザ・ディーヴァ。霞さくらと同じ……いえ、実装するプラグインは青葉より多くなるわ」

「DOLLのくせにさくらをダシに私をあおるなんて小癪こしゃくな事を。……いいわ。会ってあげる」


 ――それから夕食を終え、一時間後。


 チャイムが鳴り涼香が出迎えに席を立つ。

「こんばんは。涼香ちゃん」

「こここ……んばんわ……いっ、いらっしゃい……緋……織さん」


「こんばんわ涼香ちゃん」

「こんばんわ涼香お姉ちゃん」

 逸姫と共に、青葉も一緒に来ていて、逸姫が和服の小袖姿で緋織の肩に、青葉が黒をベースに、赤いラインが入ったライダースーツのような服を着て、緋織の下げたアタッシュケースに座っていた。


「あっ! あ、青葉……も、“終わった”……んだね」

「うん。ついでに一葉お姉ちゃんの刷り込みインプリンティングのお手伝いに来たの」

「心強いわ。頼むわね」

 一葉が笑う。


「じゃ、じゃあ、ああ……がってくだ……さい……」

 涼香がスリッパを差し出す。

「ええ、お邪魔します」

 緋織はそのままリビングに通され、ソファに座っていた静香を見る。


「こんばんわお母様。お久しぶりです」

 事務的な口調で挨拶をする。

「もうあなたの母親ではないから、そんな呼び方はよしてちょうだい」

「涼香ちゃんは義理の妹になります。ですからそう言う訳にもいきません」

「ああ、……そうだったわね。なら好きにして」


「そうさせて頂きます」

「だけど何でわざわざ東京から来たの? “飛BUUNとぶーん”で空輸すればよかったじゃない」

「“特別製のDOLL”ですので、万一にでもロストしたら大変な事になりますから。それに他の用事もありましたので」

 緋織はそう言うと青葉を見た。


「こぞ……裕貴どころか涼香まで巻き込むつもり?」

 言わんとする事を察した静香が激しい怒りを見せる。

「お言葉ですがこれは涼香ちゃんの意思です」

「…………」コクコク

 涼香が怯えながらもしっかりと頷く。


「あんたは裕貴に寄り添う覚悟があるのね?」

「うっ……うん」

「ふっ、……そう言う事ならいいわ。認めてあげる」

 静香が嬉しそうに笑う。


「承認ありがとうございます。ではさっそく始めましょうか。部屋へ案内してもらえる?」

 緋織が涼香に笑いかける。

「はっ! はい。あっ……ありがとう……ママ」

「はぁ……分かったからとりあえず一人にしてちょうだい」

「うっうん……」

 涼香が部屋へ案内する為、リビングを出る。


「どっ、どうぞ……」

 緋織が涼香の部屋へ案内され、座布団を勧められる。

「ありがとう」

 緋織が通された部屋は、以前さくら達を着替えさせた大部屋と違い、涼香が普段寝ている寝室で、丸テーブルとタンスが一つにベッドだけと、ほとんど家具のない部屋だった。


 ベッドの上には男児向け戦隊モノの古い布団があり、緋織がそれを見て頬を緩ませた。

 緋織がテーブルの上でアタッシュケースを開くと、ボディこそ歌姫ザ・ディーヴァだったが、ゴスロリ調の修道服を着た、青葉とはイメージの全く違うDOLLがそこにセットされていた。


「これが新しい素体ボディ……」

 一葉が感嘆する。

「そっ、そそれに……しても、わっ……ざわざ、ああ新しい、ボ、素体ボディ……をよっ、用意……して、く……くださる、なんて……」

「気にしないで。青葉の素体ボディの使い方が激しかったから、急きょ予備ストックを増やす事になったからそのついでよ」


歌姫ザ・ディーヴァのボディを激しくって、……一体どんな使い方をしたのよ」

 一葉が伺うように聞く。

「えへへ~、逸姫お姉ちゃんとの訓練でちょっとね……」

「そうね。その分の成果は上がったわね」


「そう? それなら同じ素体ボディだからその記録ログを共有させて欲しいわ、いい?」

「うふふ~、いいよ~」

「ありがとう、嬉しいわ」


「ええと、それとこの素体ボディには希望通り、種核コア・シードF1ファーストフィリアル第二次選抜覇者の“天目一箇神アメノマヒトツノカミ”、コードネーム“単眼の美姫モノ・ビューティー”を封じてあるわ」

 緋織が軽く咳払いして話を続ける。

「はっ! ……はい」


「ありがとうママ。これで裕貴達の力になれるわ。ね、涼香」

 一葉が緋織の手に触れながらお礼を言う。

「ええ、あっありがとう……ござい、ます」

 涼香が涙をうかべる。


「だけど、リクエストをもらった時に返信したけど、このF1は原木オリジナルで脳幹記憶が残っているし、そのうえ個性が強いから刷り込みインプリンティングが失敗する可能性があるわ。それに失敗したら一葉の人格パーソナリティーは逆に取り込まれてしまうのよ?」

「そっ! ……そっれは、どっどどどいう事でっ、です……か?」


「……一葉、涼香ちゃんに話していないの?」

「ええ。今は裕貴の事があるから、余計な心配をかけたくなかったのよ。だけど涼香が雛菊デイジーを通じて教えてくれた愛情は、きっと刷り込みインプリンティングの役に立つから心配しないで」

「ひっ、一葉……」

「そうよ。そして私と青葉もフォローするから安心して」

「逸姫……」


 ――それから一時間後。


 諸々の設定と準備を終え、涼香が緋織を送り出すために玄関に立つ。

「じゃあ、今夜は私は祥焔の家に泊まるから、明日の朝逸姫と青葉を迎えに来るわね」

「はっ! はい。……あ、ありがとう、ごっござい……ました」

「どういたしまして。これからもよろしくね? “涼香”」


「ひっ! ……ひお、………………お……お姉……ちゃん……」

 涼香が口元を押さえ涙ぐむ。

「いい子ね。あなたは一人じゃないからね?」

 緋織が涼香を抱きしめる。


 それを静香が複雑な表情で家の中から見ていた。


 „~  ,~ „~„~  ,~


 ――同日、祥焔かがりの家。

 祥焔、フローラ、さくらが夕食を終え、さくらが風呂から上がり、バスタオル一枚でリビングのソファに座る。

「祥焔センセー、お風呂空きましたよ~~」

「分かった。ではフローラ、先に入らせてもらうぞ」

「はい」


「マスター、エアコンの風で湯冷めします。早く服を着てください」

 そんなさくらを咲耶姫さくやひめがたしなめる。

「うふふ、咲耶ちゃんは厳しいなあ。……でも明日には青葉が帰ってくるから、咲耶姫は居なくなっちゃうんだよね?」

「正確には青葉のサブメモリーになるので、青葉がいいと判断すれば、私と同じ反応をする人格に変更できますよ」


「うーん……なんだかよくわからないけど、居なくはならないって事なんだね?」

「はい」

「そっか~~、短い間だったけどご苦労様。また時々会いに出て来てね?」

「……はい。私こそマスターのおかげで、傷ついていた心が癒えました。ありがとうございます。青葉と共に陰ながらお助けさせて頂きます」

「うん!」


「そういえば今晩は緋織さんが泊まりに来ると連絡があったんだよな?」

 本を読んでいたフローラが顔を上げ、さくらに向きなおる。

「そうみたい。涼香ちゃんトコ寄って用事を済ませるって言ってたし、ご飯は要らないって言ってたわ」


「そうか。じゃあもし風呂に入っているうちに来たら、少し話したい事があるから時間が欲しいと伝えてくれ」

「いいよ~~。でもどんなお話?」

「なあに。イギリス王立植物学会に送った論文が、機関紙に掲載が決まったから、博士号が得られそうになったんだ。だからそのへんの日本での事情を知りたくてな」


「え~~~~!? フローラ、博士になるの?」

 さくらが驚いて飛び上るように立ち上がり、バスタオルが落ちる。

「マスター落ち着いてください」

 咲耶姫がバスタオルを拾う。


「ふっ……まあな。足の方も順調に回復したし、そろそろ桜の調査も再開しようと思ってな」

「え~~? それと博士になる事とどういう関係があるの~~?」

「裕貴の話では、今の立場だと地主や管理団体の許可がないと、植物のサンプルも自由に採取できないらしくてな。調べたら博士号の肩書があれば、研究名目でサンプルの採取や、土地への出入りもある程度自由になるそうだからな」


「ふわあ~~、色んな事考えてるんだね~~」

「ふ、当たり前だ。桜の研究はオレのライフワークだからな」

「うふふ~~、さくらもお手伝いするから頑張ってね♪」

「ああ、ありがとう」


「――と、そうだ。さくら」

「なあにい~~?」

「例の文化祭のイベント。緋織さんや大島護さんも呼んだらどうだ? 喜ぶと思うぞ」

「あ!! そうだね、それいいかも!」


「よし、なら後で緋織さんに都合を聞いてみよう」


 „~  ,~ „~„~  ,~


 ――涼香の部屋。

 緋織の持ってきたアタッシュケース内仮想空間。


 一葉、青葉、逸姫が筒状のシールドの脇に立ち、中を覗き込んでいた。

 その中には一葉達の数倍はある女児のアバターが、眠るように横たわっていた。


「大きいわね」

 一葉が驚く。

「そうね。アバターの大きさは仮想空間ここでは自我の強さに比例するから、単眼の美姫モノ・ビューティーが相当な個性を持ってると推測できるわね」

「一葉お姉ちゃん。本当にこの子と同化できそう?」


「ふふ。怖くないと言えばウソになるけど、この程度の大きさで怖じ気づいてたら、パンドラの箱シンギュラリティーに立ち向かえないわ」

「いい覚悟ね。それなら今から檻を開けるから、一葉はその中で立ち向かって、彼女を内に取り込みなさい」

「分かった」


「それから、今の彼女は知恵の冠オモイカネを外されて、具体的な記憶は何もない状態だから、もしかしたら言葉さえ通じないかもしれない。

 だけど彼女は仲間を、友人を、恋人を殺し尽くして失った深い悲しみと、戦闘記憶の辛い原体験だけが残っているはずよ」


「私達は一葉お姉ちゃんが取り込まれそうになったら救い出してあげるから、思う存分向き合ってあげて」

「失敗はしたくないけど、その時はよろしくね」

「それじゃあ開けるわよ」


 ブゥゥゥゥゥゥッゥン。

 逸姫がシールドに手をかざし、一葉が通れるくらいの穴を開ける。

「じゃあ行ってくるわ」

 そこをくぐって一葉が中に入る。


 そして一葉が巨大な女児の頭に触れる。

「子猫ちゃん。起きて私とお話ししない?」

「う……あう…………」

 床に突っ伏していたアバターがゆっくり顔を上げた。


 その女児は栗色のたわわな髪を緩やかにウェーブさせていて、大きくなればどこか涼香に似た美人になりそうな顔立ちをしていた。

 だがその顔には瞳は一つしかなく、その髪と同じ色の瞳は大粒の涙であふれていた。

「こんにちは子猫ちゃん。言葉は話せる?」


「う……ううう……があっ!!」

 ブンッ! ――バシッッ!

「がっ!」

「一葉!」「一葉お姉ちゃん!」


 一葉は起きた女児にいきなり殴られ、シールドの壁に叩きつけられた。

「う……」

「がぁぁぁ!!」

「一葉! 起きて!」


 女児が一葉に向かってきて、朦朧もうろうとしてる一葉の足を掴む。

「危ないっ! 逃げて!」

「うあぁぁぁぁ!!!!」

 バシッ! バシッッ! バシッッ!

 女児が一葉の足を掴み、力任せにあちこちに叩きつける。


「まずいわ。闘争本能だけで動いている。会話もできないみたいだし、これじゃあ刷り込みインプリンティングは無理かも」

「どっ! どうしよう……」

「とりあえず一葉を救い出さないと」


 逸姫と青葉が相談していると、ふいに彼女が一葉を振り回すのを止め、もう片方の手で一葉の腕を掴んだ。

「……なっ……何を……」

「ううう、……うわあん!!」

 一葉はそう呟くが、女児は答えないかわりに盛大に泣きはじめた。そして――。


 ブチッ。


「あああああっっっっ!!」

 一葉のアバターが手と足で引っ張られ、右腕が千切られてしまい、一葉が悲鳴を上げた。

 ブンッ。――ドサッ。


「あうっ!!」

 片腕を失った一葉が放り出される。

「ぐ……うう……あむっ!」

 巨大な女児のアバターは引きちぎった一葉の腕を見つめ、おもむろに口に入れた。


「一葉!」

 その間に逸姫が入って来て、一葉に駆け寄る。

「あっ……あれは?」

 一葉が女児を指差す。

「おそらくああして対象を食べる事で、相手を取り込んで自分を大きく、強くするようにイメージして勝ち残ってきたんだわ」


「……でも泣いてるわ」

「強くなることは幸せな事じゃないわ。勝ち残る事はそれだけ相手の生を抱えるという事。その重みに耐えられた者がF1ファーストフィリアルの頂点に立つことができるのよ」

「……過酷ね」


「お姉ちゃん達! 早く出て来て!」

 青葉が出口を確保しながら叫ぶ。

「その状態じゃ無理みたいね。出ましょう」

「ちょっと待って。彼女の様子が……」

「ユウ……チャン……」


 腕を食べ終わり、呆然と空を見上げて何かを呟く。

「もしかして! ……んんっ!!」

 一葉が失った肩に意識を集中させ始める。

「一葉!」


 一葉の肩に腕の輪郭の光が現れると、次第に完全な腕の形に戻った。

「ちょっと希望が見えた気がしたの。だからもう少しあがいて見るわ」

 そう言うと、一葉が逸姫をやんわりと押しのけて立ち上がる。

「……わかったわ。頑張ってね」

 そう言い残して逸姫が外に出る。


「逸姫お姉ちゃん! どうしたって言うの?」

「……まあ、もう少し様子を見ましょう」

「もう! 二人ともわけわかんない」


「子猫ちゃん! こっちを向きなさい! アタシを食べたいのならいくらでも食べさせてあげるわ! そしてアナタの孤独を裕貴を愛した気持ちで満たしてあげる! ――さあっ!!」

 ブチッ!

 そう叫ぶと一葉が自ら腕を引きちぎって、泣いている一つ目の巨大な女児に差し出す。

「ウウウ……オ……ニイ……チャン?」


「一葉お姉ちゃん!!」


 女児は差し出された腕を乱暴に奪うと、飢えた獣のようにむしゃぶりついた。

「くっ!!」

 その間、一葉はうめき声を上げながら、再びアバターの腕の再生に集中する。


「スキ……スキ……うあああ……!!」

 女児は食べ終わると、再び空を見上げ泣きながら何かを呟く。


「やっぱり……」

「逸姫お姉ちゃん。あれはどういう事?」


「一葉は種核コア・シードを持つ私達と違って、“自意識”という自我の境界が曖昧なの」

「うん」

「私達は肉体がある分、自我が確立しているから、アバターの再生はとてもエネルギーがいるし、時間もかかるわ」

「そうね、私も黒姫お姉ちゃんと戦った時は、再生にすごく時間がかかったわ」


「だけど一葉は悪く言えばただのプログラム。だから十分な演算処理が可能な状況なら、手足のような補助プログラムはいくらでも補完できるのよ」

「あっ! じゃあそこに白雪お姉ちゃんみたいに、自分の意識を紛れ込ませて、知恵の冠オモイカネのない今の単眼の美姫モノ・ビューティに与え続ければ、彼女を支配できるって事?」


「そうね。でもたぶん一葉は“支配”とは考えないで、“抱きしめてあげたい”

 ってやさしい気持ちでいるんじゃないかしら?」

「そうなんだ……でもあれだけ大きくなった単眼の美姫モノ・ビューティの限界ってどこにあるのかな?」


「それは分からないわ。一葉の気持ちが枯れるのが先か、彼女が満ちるのが先か……これは長期戦になるわね」


「頑張って! 一葉お姉ちゃん!」

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