十月桜編〈八尺瓊勾玉〉

 ――翌朝。


 ピピピ……チュンチュン……ピーチュチュチュチュ。


「……う……ん…………」

 ベランダから聞こえる小鳥の声にフローラが目を覚ます。

 ゆっくりと目を開けると、眼前には、形は良いが、傷だらけの双丘が目の前にあった。


「!!」


 ……ああ、さくらか。

 一瞬驚くが、自分がさくらに頭を抱かれて眠っていたのだとすぐに気付く。


さくらを刺激しないよう体を起こし、ぼんやりとベッドに座って、記憶からこれまでの事を反芻はんすうする。

 感情を爆発させ、思いがけず心情を吐露した挙句、さくらに慰められた記憶がよみがえる。


 ……なんて事だ。

 ベッドを朱に染める事は無かったものの、自己嫌悪に陥ってフローラは頭を抱えてしまう。

 仮にも研究者を志し冷静沈着たらんとしていたのに、よりにもよって女性同士が最初になろうとは夢にも思わなかった。

 そうして同時に、無意識に子供の様にさくらに癒される事を求め、それに応えてくれたさくらのやさしさに感謝もした。

 ……自分が思っている以上に私は幼いようだ。

 横ですうすうと眠るさくらの寝顔を見て、フローラはそんな事を思う。


(さくらは、……子供が産めない体なのよ)


 さくらにそう告白された事を思い出す。

 その言葉から、さくらは自分の恋に未練を残しつつも、自分や涼香を応援し、雨糸にお礼を言ったりして、嫉妬や敵意を見せないのだと知った。


 ……だから自分の恋に積極的になれないのか。

 さくらの眉間は寄せられ、その頬は乾いた涙の痕が残っていた。

 フローラはその頬に触れながら、自分の唇の端を軽く噛む。


 さくらは産めない子供の代わりに、擬似的に私や涼香や雨糸を応援して、自分の持ちえない子供への母性を満たそうとしている。

 ……たしか代償行為と言ったか?


 軽くは人形遊び。重くなれば子供やペットに対する過度な教育や躾など、自身の欲求の代行と刷り込み。最悪の場合はいじめや虐待へと発展する。そう定義される精神衝動。


 今になって涼香が裕貴への想いを告白し、さくらが応援すると言い、雨糸は今までと変わらないと言い切る。

 自分も諦めるつもりなど毛頭ないが、みんなの想いの積み重ねや深さと、その理由を知って、昨夜は自信を失いそうになってしまった。


 ……だから裕貴は誰も選ばない、……いや、選べないでいるのか? だから人間でないAlphaアルファを好きになったのか?

 とりとめもなく自己分析を続けるうちに、みんなに共通の行動があった事に気付く。


 察し…………思いやり………………遠慮……か。


 日本人はまさに“桜”だな。


 桜は人為的に操作しない限り、それのみで林や森を形成しない。

 必ず他の植物相の隙間に入り込み、子孫を残すべくこの狭い日本列島で進化してきた。

 それは桜が種として完成しておらず、自家不和合成という不安定な繁殖形態でもって子孫を残し、未だその完成形を模索し続けている事をフローラは思い出した。


 入院中、押し付けるだけだった愛情表現が裕貴に届かず、昨夜は思いがけずその心情をさくらに吐露とろしてしまった。

 それを自身の恋心を押し殺してまで、フローラをいたわってくれたさくら。


 ……まったく。さくらおまえ達には頭が下がる。


 見えない所で尽くす涼香。

 スキルをフル活用して協力を惜しまない雨糸。

 深い思いやりを見せるAlphaとさくら


 3人とも自分のように強引なアピールをしないのに、行動でもって自身の魅力を強烈に示していた。

 桜が他の植物に遠慮しつつ、それでも開花時には数キロ先からでも判別でき、他の植物を圧倒するほど自己を主張アピールする。

 遠くネパールを起源とし、花を多く咲かせる遺伝因子を持っていたとはいえ、それを失うことなく今に伝えて、日本中に分布を広げている桜。


 フローラは自分が桜を好きになった時の事を思い出す。


 泣きながら桜園を歩き回り、大きな桜の木が咲き誇る直前、一足先にポツンと咲いていたOKAME 桜。

 自分の背丈とそう変わらないのに、赤く一重で小ぶりな花を、大きい木に混じって枝いっぱいに咲かせている姿に感動した。

 その姿は大きくて豪勢な八重桜に負けず劣らず見事だった。


 ……そうだ。一重で木も花も小さくても、頑張って咲き誇ろうとしている姿に感動したんだ。


 裕貴がさくらの体を見て“綺麗”と言ったのは、それまで“霞さくら”という人格パーソナリティーをAlphaを通じて知り、そのフィルターを通したからだと想像する。

 そして同時に予備知識や先入観なく、初見で“さくらの体”を見たら、同じ感想は出ないとも思う。

 フローラがそれに気づいた瞬間、フウッと肩から何かが下りるのを感じた。


 ……我を張って押し通せば裕貴は引いてしまう。

 桜が咲くように、自身を磨いて自分が一番充実した姿を見せる方が、トラウマを抱えている裕貴には有効かもしれない。


 霧が晴れるように悩みが晴れ、先の見通しが立ったと感じた時、傍らで眠るさくらが寝言を言う。

「みゅにゅ……ふろーらのおっぱい……うへへ~~……」

 口元に液体をたらしつつ、奇妙に手を動かしながら、それでも慈愛に満ちた笑顔で眠るさくら。


「全く……どんな夢を見てるんだ?」

 夢の中で自身がなぶられているのを感じつつ、フローラもまんざらでない笑みを口元に浮かべ、さくらの髪をそっと指でいた。

 そうして、空を揉むように怪しくうごめいている手に、そばにあった丸っこいデザインをした、レトロな目覚まし時計を握らせた。

「……ん?……堅い、…………だめようフローラ……もっとリラックス…………して?」

 いずれボタンを押して鳴らしそうなほど、さくらが嬉しそうに目覚ましをいじくりまわす。


 ……ふふ。

 心の中で笑いながら思考の海から浮上し、改めて起きる為に周りを見回すと、白いカーテンが揺れ、その隙間から雀の合唱が聞こえてきた。

 起き上がって下着もつけないままパジャマを着てベランダに近づき、朝日が差し込むカーテンの隙間から、眩しさに目を細めながら外を覗き見る。

 

 白い丸テーブルとイスが二脚置かれた、広いベランダのテーブルの真ん中に青葉が立ち、雀と同じ声でさえずりながら、パンを千切って雀たちに与えていた。

 驚く事に、雀たちは整然と青葉の前に並び、あたかも親鳥から餌をもらう様に、声高に甘えた声をあげながら口を開けて待っていた。

 青葉は親鳥がするように少し落ち着いた鳴き声で鳴き、クチバシの根元が黄色く幼さを残した若鳥達へ、青葉が口を開けて待っている雀達の口に、次々と順番にパンを放り込んでいく。


 ……確か裕貴が“DEVA”はクジラ語まで話せると言っていたか。

 雀と話せるとは聞いていなかったが、“さくら”のボディーガードを任されているDOLLなら、超指向性スピーカーや催眠誘導の他にも、軍事音響技術が実装されているかもしれないな。

 そしてフローラは、ふとある事を思いついて試してみる事にした。


(おはよう青葉、雀たちと遊んでいるようだが開けてもいいか?)

 扉の内側から外には聞こえないくらい、ほとんど呟きに近い小声で喋ってみた。


 すると、

『あと三羽にあげるまでちょっと待ってて』

 いとも簡単にハッキングしたのか、あるいはすでに青葉のコントロール下に置かれていたのか、フローラの首から下げたチョーカー型ツインから青葉が答えた。


『!!……あっ、ああ。……分かった』

雀たちに雀語(?)で対応しながらフローラのかすかなつぶやきを聞き取り、その返信をツインに直接通信を送る能力に、フローラは驚きを隠せなかった。


 そうして餌を与え終り、手先で親鳥がするように雀たちのクチバシさすり、何かをさえずる。

 すると、そうされた雀たちがさえずりながら、それぞれに羽ばたいて飛び立っていく。


“ハイおしまい。クチバシを綺麗にしてあげるからね”

“ありがとうママ”

“じゃあ今日も気を付けてね。また明日”

“はーい。ごちそうさま!”

“いってらっしゃい”


 フローラは待つ間、青葉と雀のやり取りをそんな風に想像してみた。


「……おはようフローラお姉さん。お待たせ~~」

「いいや、面白いものを見せてもらった……雀語が話せるのか?」

 扉を開けて外に出て、イスに腰掛けながら聞いてみる。


「ううん、何となく分かるくらいで、逆にあの子たちに教わっていたの~~」

「教わる? 雀が教えてくれるのか?」

「……そうね、正確にはパンをあげたり、色んなリアクションをして見せて、その反応から上げる鳴き声を分析して積み重ねていく、って言うのが正しいのかな?」

「なるほど、確かにそれは“教わる”のと同意義だ」

 フローラが笑う。


「まあ、雀に限らず動物の大半は主語だけで喋っているから、前後の述語は経験と推測によって補完しているのよ」

「そうか。言われてみれば動物の思考はそうなんだな。人間のような思考じゃなく、主観のみで思考しているから素早く行動できるんだろうな」

フローラはウンウン頷く。


「……始めは巣立った直後に、親とはぐれて餌の見つけ方が分からなくて、彷徨さまよった挙句に弱って家のベランダに落ちた子が居て、仕方なくその子を世話をしてたんだけど懐かれて、そのうちに同じように早くに親鳥と死に別れたりはぐれたりした若鳥が、うわさを聞きつけて集まってくるようになったのよ」

「うわさ? 鳥がか?」

「うん。最初の子が『餌をくれて言葉をしゃべるチビ人間がいる』って仲間に触れ回ったみたい」


「そうか。基本群れる動物だからな」

「そうなのよ~。雀は群れるせいか独占欲が無くて、仲間にも餌のありかを隠さないの。おかげで最近は数が増えて困っちゃて……」

 そう言う青葉はしかし嬉しそうだった。


 その微妙な機微を見てフローラは思う。


 ……これが作られた思考プログラムなら大したものだ。

 ミスを織り込まれたAlphaアルファと同等か、それ以上の思考ルーチンだな。……と言う事はもしかして。


「青葉がそうやって行使する音響技術はやはり――――――ぐんじぎじゅつなのか?」

 と、大事な部分は声に出さず口真似で聞いてみた。

 すると、フローラを読唇した青葉が、フローラのツインの空間投影装置エアディスプレイを起動させてメッセージを表示した。


『そうよ。私の正式なコードネームは音惑の戦天使ヴァルキリー・オブ・ローレライ八尺瓊勾玉やさかにのまがたまを……通称“サードニクス”と呼ばれているプラグインを実装されているわ』

 フローラの唇を読唇して青葉が答える。


sardonyxサードニクス、……和名は紅縞瑪瑙べにしまめのうか、八月の誕生石でもあるな。副音声催眠誘導に超指向性音、音波スキャニングに固有種言語解析と再生、……まるで“ソロモンの指輪”だな』

 驚き、感心しながら今度はすべて口真似で言う。


『“ソロモンの指輪”? えっと……。

偽典ぎてんのひとつとされる『ソロモン書』に記された、ヤハウェの命を受けた大天使ミカエルよりソロモン王に授けられた指輪である。

 ソロモンの指輪は真鍮と鉄でできており、様々な天使や悪魔を使役し、あらゆる動植物の声までをも聞く力を与えると伝えられている〉

 へえ、そうなんだ。まあまだ機能は他にもあるんだけど。……でもそうね。“悪魔を使役する”ってのは言い得て妙ね』

 フローラの言葉を反芻はんすうすると同時に、某百科事典サイトウィ〇ペディアの引用文が青葉のコメントと共に表示された。


 ガタッ。

「悪魔!?」

 驚いて立ち上がり、思わず声に出してしまう。

 最新機密の粋であるこのDOLLが言う悪魔とは、もちろん空想上の化け物の事ではないだろうし、もっと具体的な恐怖をもたらす確固たる存在だろう。


『考えてみて。“音”は最も原始的な通信方法でもあるの。だから音を識別できるすべての対象は、音でコントロールできる可能性を秘めているのよ』


 眼前のディスプレイに、青葉の驚くべき発言が続けて表示された。

 そして青葉の言うその対象とは、音によるハッキングが可能であることを意味している。


 ――それが例え兵器であっても。


 ぶるっ!

 フローラは思わず身震いした。

『……なぜ青葉にそれが実装されている?』

 落ち着こうと椅子に座り直しながら、フローラが口真似で聞いてみる。

『ママが眠りから覚めない状態の時、ママの精神とコンタクトを試みようとして、緋織さんはあらゆる方法を模索していたわ。音響技術もその一つだったの。そしてこうして目覚めはしたけど、ママの精神状態に不安を抱いていた緋織さんが、私にこのプラグインをインプットしたのよ』


『そんな重荷を背負わされて、お前はそれで幸せなのか?』

『どうしてそんな事を聞くの? この特技があるからママの力になれるし、軍に接収されずに済んでいるわ。それにこうして動物たちとも触れ合えるし、優しいお姉ちゃん達も居る。私、こんなに幸せよ?』


「青葉……」

 だが、どこまでも愁いを帯びた表情を見せる青葉を見て、フローラは声に詰まる。

「それにママにはもうフローラお姉ちゃんがいるものね。ママが幸せになるならこんなに嬉しい事はないわ」

「……どういうことだ?」

 普通の会話に戻り、お互い口語で喋る。


「昨夜はママとイイコトして恋人同士になったんでしょ?」

「いや、慰めては貰ったが、私はまだバージンだし、そういう仲になっていないぞ?」


「ええええ~~~~~~~!!」

「なぜ驚く?」

「え? だって、昨夜素体ボディから離脱ログアウトする直前、ママがプロポーズしてたの聞いたから……って、まさか!」

「それなら丁重にお断りしたが……」


「…………ウッソ……どうしよう」

「何がだ?」

「……う、フローラお姉ちゃんはママと恋人同士になったもんだと思ったから、さっきの話をしたんだけど……」

「マズイレベルの話だったのか?」

「それは……『私のコードネームと、主装備はトップシークレットの一つだったのよ!!』

 言いよどみ、直後にフローラの空間投影画エアビジョンに青葉の説明が表示される。

 青葉は顔を覆い、ぺたんと座り込んでしまう。


「そうだったのか」

「うえええ……“また”黒姫くろねえに怒られる~~…………」

「早とちりに思い込み……青葉はドジッ娘設定キャラか? ハァ……で、どうする?」

 フローラは呆れてため息をついて聞き返す。

「こっ、こうなったら催眠暗示で忘れてもらうしか……」

 そう言うと、青葉が両手の指をフローラに向け、クルクルと回し始めた。

「……私はトンボではない!!」

 青葉の幼稚な対応になんだかバカにされているようで、フローラは思わず大声をあげる。


「くくく、じゃっ……じゃあこっこうなったらフローラお姉ちゃんを人生から終わらせるログアウトさせるしか……」

 目をグルグルさせて、明らかに取り乱した青葉はそう言うと、ネクタイをほどいて不快な飛蚊モスキート音を発しながら、垂らしたネクタイのふちを淡い青銅色エメラルドグリーンに光らせた。


 こっ、これが裕貴が言っていた草薙の剣エメラルドブレードか!?


「st…Stop Aoba!! 人間はログアウトできない! だから今度は裕貴達にしたみたいにもう一度催眠暗示を掛けて見てくれ!」

 さすがにあらぬ所で、人生を終わらログアウトされる訳にはいかないので、とっさに言ってみる。

「はっ! そ、そうね……じゃじゃあこっここれでダメだったら今度は「言わなくていいから!」……うん」


あなたはだんだん********眠くなーる、ネムクナール**********……」

「漫才か! って、……くっ!」

 あまりの稚拙なセリフに思わずツッコみかけるが我慢して聞き流す。

ネムクナール******…………」


 ……どうした? 失敗か?

そしてワスレール********…………」

 ぶっ、くく、なぜクスリ名調? …………仕方ない。

 青葉の面白い催眠暗示に対し、一向に眠くならないので演技する事にした。


「あ~~。…………」

「そしたらフローラお姉さんはワスレール~~、ル~~…………」


 ふふ、このボケ具合、さくらマスターにそっくりじゃないか。


 内心で笑いをこらえつつ、全然効いた感覚のないまま、半目になって頭を揺らして続けて演技をする。


「はいっ パチン!」

 口マネか!


 DOLLの小さい手では大きな音が出せないのは分かるが、それをスピーカーでなくて、口語で再生する青葉が何だか可笑しく思えた。


 このリアクションに合わせるのか……仕方ないな。

「……う……ん? ……私はどうしてた? なぜベランダに居る?」


「……あ~~、フローラお姉ちゃん、トイレに行こうとして寝ぼけてベランダに出てきたんだよ~~?」

 くっ! 私はトイレの近い徘徊老人か? つか、ヒドイ設定だな!


 トンチンカンな設定を言いつつ、ロボットらしくない、カメラアイを躍らせたうえ、両手の指先をツンツンとクロスさせながら、激しくキョドる青葉。


「……そっそうか。じゃあトイレに行くか」

 ぷっくくく。この焦りよう……なかなか可愛いじゃないか。

 その子供っぽい設定とバレバレな態度を見て、フローラは思わず内心で大笑いする。


「ああ、そうそうフローラお姉ちゃん?」

 仕方なく話を合わせようと立ち上がると、青葉に呼び止められた。


「……なんだ?」

「今日はママとみんなで近くのプールに行こうね。水着は涼香お姉ちゃんが昨日選んで、用意してくれてるから涼香お姉ちゃん家に集合ね?」

「……そうか、まあ足腰も弱ってるから動かさなきゃと思ってた。いいだろう」

「よかった~~、そう言うとは予測してたけど、事後承諾で怒られるかな~~って、ちょっと心配だったの。ありがと~~♪」

「ふ、そんな事か。それだけ私を理解しての事なら怒りはしない。むしろ気遣ってくれて嬉しく思うぞ?」

「ふふ。それはどういたしまして。それともう一つ」

「なんだ?」


「ママが昨夜みたいに過剰なスキンシップを求めるのは、“今まで怖い夢を見続けていた反動だろう”って、パパ……大島護おおしままもるさんが昨夜の検診データを送った時に言ってた。だから“これからも大げさにすり寄って来るかもしれないけど、大目に見てあげて欲しい”とも言ってたわ」


「そうか。わかったと伝えてくれ」

「ありがとう。フローラお姉ちゃん」


 そうしてフローラが中へ入ろうと扉に手をかけた瞬間。


 ジリリリリリリリリ――!!

「きゃーーーーーー!!」

 中からけたたましく鳴り響く目覚ましの音と、さくらの悲鳴が聞こえてきた。


 ……ふ、起きたか。

「GOOD MORNING!! さくら!」

 フローラが笑いながら声をかけて部屋に入る。
















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