第19話 ゆるゆる
ゆるゆると溶け合う空の色が好きだ、と、半端な時間に散歩をしながら、私は思う。
一緒に散歩してくれる相手に犬でも飼おうかと考えてみたこともあるけれど、最近は大きなわたげが散歩のお供についてくる。
わたげは散歩中の私を見つけると、すぃと寄ってきて、肩に乗っかる。私たちは一緒になって、ゆるゆると溶け合い混ざり合う空の色を楽しむのだ。
わたげはずっと離れない。一度くっついたわたげは、私が家に帰ろうが、風呂に入ろうが、仕事に出ようが、お構いなしだった。
私は頻繁に半端な時間に散歩する。
散歩するたびに大きなわたげが現れて、私の肩に乗っかった。
私の肩はわたげにおおわれて、じきにふわふわと浮かび始める。
わたげが増えるたびに、私の体もますます浮かび上がるようになり、なんだか、すうすうふわふわとした頼りない心地だ。
じきに私は、地に足のつかない不安定な現状に嫌気がさしてきて、大きく肩を回してわたげを振り払おうとした。
わたげは私の肩ごと私の体から離れて行き、二度と戻っては来なかった。
肩を失った私はあいもかわらず、すうすうふわふわとしながらも、しばらくの間は平気だったけれど、徐々に輪郭がぼやけていき、最後にはたくさんのわたげになって、四方八方に散らばってしまった。
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