第16話 時計

 妙に静かだと思ったら、時計のカチカチという音がしない。見ると、時計は止まっていた。

 私は時計から古い電池を抜き取って、新しいものに替える。でも時計は動かない。

「動いてください」

 そう時計に声をかけると、時計はふるふると震えだした。

「たまには、時計だって、やす、休んでも、いいじゃありませんか……」

 私はちょっと言葉を失って、意味もなく「なるほど」と呟く。

 時計はふるふると震えるばかりで、それ以上何かを言うこともなく、針が動き出す気配もなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る