第14話 虹の種

淡く輝くそれの前に、あなたは静かにしゃがみこむ。

 ためらいがちに触れて、七色のそれが消えてしまわないことを確認すると、うれしそうに素手で土を掘り返し始めた。

 誰に否定され、笑われても、あなたはずっと信じ続けていたからね。虹の根元には宝が埋まっている、と。「いつか虹の根元の宝を手に入れるのが夢だ」なんて言って、ずいぶんと馬鹿にされていたっけ。

 淡く輝く虹の根元を、荒い息でせっせと掘り返し続けるあなたは、気が付いているのかな。やわらかな皮膚が血でにじみ、やぶけ、傷口に土が入ってしまっているということに。それから、虹の根元を掘れば掘るほど、鮮やかだった七つの色が確実にくすんでいってしまっていることに。

 やがて虹は色を失い、あなたは歓喜の声を上げて夢から目覚めた。一瞬、あなたはベッドの上で絶望に満ちた表情になる。でもすぐに気が付くはずだよ。手が土で汚れていることに。その手の中に、強く強く握りしめているものが……あなたの夢が、あることに。

 ああ、できることなら今すぐに伝えたい。カーテンの向こう側に綺麗な虹が出ているよ、と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る