質疑応答と第二部「角川文庫編集者によるプロット講評会」

 トークの後はお約束の質疑応答の時間です。

 それでは皆様の質問と吉良編集長のお答えを書いていきましょう。


 プロならば一年に二作は書き続けて欲しいとのことですが、原稿用紙では何枚くらいか?

 文庫ならば最低で250枚。10万字。多くても400枚くらい。新人の場合はあまり多くなると本の値段も上がるので、文字数が多ければよいというものでもない。

 単行本は文庫本とは購買層が違うし新人にはハードルが高い。ただし書評が出易かったり文学賞に選ばれ易かったりする利点もある。


 「お仕事小説コンテスト」で取り扱うお仕事はボランティアのような無報酬の仕事でもよいのか?

 構わない。プロでなくアマであっても問題ない。その仕事のエピソード、具体的場面が生まれればよい。


 若い男性を引き込むことを念頭に書いたほうがよいのか?

 まずは面白い作品を書いて欲しい。それが若い男性層にヒットすればなおよい。

 若者に文庫を読ませるにはどうすればいいと思うか?

 角川文庫としてアプローチしれきれていない面もあるが、やはり作者と読者の世代が離れていない方がよいと思う。近い世代の方が共有している感覚は多いはず。とはいえ若い世代に文庫を読ませるのは難しい。


 年に二冊を続けるのは難しくないか?

 専業か兼業かでまた違ってくる。本職をやりながらだと大変。しかしコンスタントに書ける作家は大変真面目で、前作の読者の反応をみながら次作に生かしている。

 仕事を続けながら書く時のサポートは?

 本業をやめろとは言えない。しかし売れてくれば「そろそろどうですか?」と促すこともある。編集の仕事は24時間体制。作品の中身をブラッシュアップするためなら、編集者は親身にサポートする。


 「お仕事小説コンテスト」で異世界が舞台では駄目か?

 たとえ異世界の仕事であっても読者が納得できればよい。人と人のコミュニケーションや社会とのつながりが現実と相似形であり、物語を知ることで現実をより深く理解できるようならOK。


 特化したジャンルを書き続けたほうがよいのか?

 読者から見れば何を書くか分かっている作家のほうがよい。アマのうちはあれこれ書くのもよいが、プロになってからは同ジャンルを書き続けたほうがよい。特にデビューしたての頃はそのほうがよい。ただし、ある程度売れれば、宮部みゆきさんのように様々なジャンルを書く作家もいる。それでも器用貧乏にはならないように。


 こんな感じですね。編集長はひとつひとつ丁寧に答えてくれましたよ。


 ここまでで40分経過。この後は事前に提出したプロットを角川文庫の編集者が批評、アドバイスします。

 今回の編集者エリアはAからDの4つ。ひとつのエリアで8人から9人を受け持ちます。

 私はC6でした。1時間ほど待って向かった先にいたのは、


 親切で優しそうな好青年!


 開口一番、

「くだらないプロットを読ませてしまってすみません!」

 と謝りました。ついでに、

「ミーティングに参加するためテキトーに書いたプロットです」

 と正直に白状しました。それでもにこやかな笑顔は崩れません。人間ができてますなあ。

 

 もちろん罵倒するとかゴミ箱に無言で捨てられることもありませんでした。チラッと見たら、あっちこっちにメモや走り書きがありました。しっかり読んでくれたようで、それだけで申し訳ないやら情けないやら……この場を借りて謝ります。本当にゴメンナサイ。


 せっかくなので私が送ったプロットを簡単に書きますと、


「S山S助は自宅警備員である。祖母の遺言により築70年の自宅を警備する日々だ。今日も役所から立ち退きの催促が来る。道路拡張計画の邪魔だからだ。自宅明け渡しイコール失業を意味するS助は断固として拒否。しかし突然発生した地震により自宅は倒壊。S助は断腸の思いで自宅を明け渡し失業する」


 まあ、こんな感じ。


 面白くもなんともありません! クソですっ!


 それでもねえ、この編集さんは親身にアドバイスしてくれるんですよ。

「仕事をしない者から仕事とは何かを考察するアンチテーゼの話なら面白いかも」とか、

「自宅警備員という仕事に読者をどう共感させるか」とか、

「伏字にすることに意味がないなら、S山なんて、名前に無用なバイアスをかけないほうがいいですよ。読者が肩透かしをくらうから」(これは単に名前を考えるのが面倒だっただけ)とか、

「地震はセンシティブな題材なので注意が必要」とか、

「結局、自宅警備員という仕事をどう描写できるかが重要ですね」とか、

「警備という仕事に関しては五輪が近いこともあり、割とトレンドかも。他にも警備を扱った小説は結構出ていますからね」とか、


 まあ、とにかく本当にありがとうございました。これだけ考えてくださって何も書かずに済ますわけにはいかないので、1万字くらいは書こうかなと思います。はい。


 こんな感じで全ての参加者(今回は34名くらいかな)の講評が終わったのは5時10分くらい前でした。充実のミーティングでございましたよ。


 あとがきはまた後日。今回はあのカワノさんとムフフなことが……

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