あとがき

 予想を遥かに越える皆様に読んでいただいておりますようで、感謝の念に堪えません。そんな皆様のご愛顧にお応えしてここではレポートのあとがきとミーティングの雑感などを書かせてもらおうかと思っております。



■1.レポートを書く時の姿勢


 このレポートから皆さまはミーティングの雰囲気をどのように感じられたでしょうか。恐らくは「あらすじ」にあるように「和やかな雰囲気」と受け取られたのではないかと思います。

 もしそうならば、作者にとっては目論見通りという事になります。なぜなら、


「和やかな雰囲気のミーティングであったという前提で、このレポートを仕上げよう」


 という心構えで書いたからです。


 エッセイは事実を述べる物、だからと言って事実だけ書いたのでは新聞記事のようになってしまいます。面白くないし読み物とは言えません。ただの報告書になってしまいます。それを回避するには作者の目線を入れる必要があります。


 そこで私は楽しいミーティングであったと感じてもらえるように書くことにしました。私自身が楽しかったからです。

 しかし、楽しいという感情は個人個人違うものです。楽しいと感じた人もいれば詰まらないと感じた人もいたことでしょう。今回は楽しいミーティングという前提で書きましたが、詰まらないミーティングという前提で書けと言われれば、そのようにも書けましたし、実際、そう感じた方もおられたと思います。



 ●詰まらなさの例1


 例えば最初のトークイベント。

 私にとってトークの内容はなかなかに新鮮なものでした。しかし出版に携わっている方、あるいはそれに近い業界の方にとっては、さほど目新しいものではなかったかもしれません。そのような方は、まずここで詰まらないと感じた事でしょう。


 また講演ではなくあくまでもトーク。ほとんどお喋りに近い感じでした。有料の講演などでは講演者の言葉をそのまま書き起こすだけで、立派に筋の通る文章になりますが、今回は普通の会話に近いものですから、省略、重複、飛躍、繰り返し、何言ってるかわからないけど取り敢えず相槌打っておこう、みたいな、日常の会話で発生する瑕疵が頻発します。


 それらをまとめ、要約し、自分なりに解釈してこのレポートに載せています。ですから普通の講演を聞き慣れている方にとっては、そんな作業が必要な今回のトークを、さほど楽しいものだとは思えなかったかもしれません。



 ●詰まらなさの例2


 二部の「作品講評会」では更に詰まらなさが増したと思います。80分くらいの時間が取られていたのですが、自分が講評してもらっていない時間は完全な手持ち無沙汰になるからです。

 一応、開発のはてなのブースもあり、意見を述べられるホワイトボードも用意され、またお喋りも禁止されていたわけではないので、スタッフ、ユーザーの別なく自由に会話ができました。

 しかし、それらは全て自発的に行うもの。そんな行為はしたくない、興味はない、特に意見もない、という方はじっと机に座っているしかありません。これは苦痛以外の何物でもないでしょう。

 スタッフが「講評が済めば帰ってもらってもよい」とアナウンスしたのも、実際にそのような方がいたからだったのかもしれません。私もちょっと暇ではありました、はい。



■2.レポートの彩り


 どんな物語にもある程度の華やぎが欲しいものです。特に今回はトークの二名は男性。質問者も五人全員男性でしたので、このままでは彩りに欠けます。

 そこで登場していただいたのが司会のお姉さんでした。運営から苦情が来るかも、と心配ではあったのですが、今日現在、それらしいお叱りメールは来ていないので大丈夫のようです。


 服装に関してですが、最初はミニスカートにブラウスかなと思ったのです。しかし胸元辺りに見えた、ジャケットの下の服の柄がスカートの柄と全く同じだったので、ワンピースと判断しました。違っていたらごめんなさい。


 服装に関して言えば、もっとも印象に残ったのが萩原編集長です。ジーンズで腰から鎖をぶらさげていました。

 腰鎖姿は以前にどこかのサイトで見た記憶があったものの、やはり実際に目の当たりにするとインパクトが違いますね。かなり太い鎖です。そんなものを見せられれば当然様々な妄想が浮かんでくるわけでして、


「きっと遅筆の作家の背後で鎖をジャラジャラ鳴らしながら、無言の催促をしているんだろうなあ」

 とか、

「締め切り間近の作家が逃げ出さないように、足と机を鎖で繋いでいるんだろうなあ」

 とか、

 もう、すぐにでも、


「あたしの担当編集が鎖をぶらさげている件について」


 なんてラノベ風物語が書けるんじゃないかってくらいのインパクトでした。


※ 注:誤解しないでくださいね。これはあくまでも私の妄想です。萩原編集長がそんな行為をしているはずがありません。この部分はフィクションです。くれぐれもお間違えのないようにお願いします。


 インパクトの点では司会のお姉さんより腰鎖の方が上回っていたわけですが、目的はあくまでもレポートを華やかに彩ること。鎖では殺伐とした雰囲気になるだけなので、この部分はカットさせていただきました。



■3.ユーザーについて


 カクヨムのスタッフは仕事柄メディアへの露出もあることですし、多少の描写も許されるでしょう。しかし集まったユーザーは全くの一般人ですから、さすがに登場させるわけにはいきませんでした。

 年齢や男女比なんかも大雑把な書き方しかしていません。強いて言えば、メガネをした方が多かったですかね。質問者5人のうち4人はメガネをしていました。かく言う私もメガネです。


 実は第2部の講評で暇をしている時に、ユーザー同士の会話やスタッフとの会話をこっそり聞いていました。盗み聞きじゃありませんよ。自然に耳に入って来るので仕方なくです、はい。

 それはまあプライベートトークですから、絶対に教えられませんが、自分の小説で会話のシーンなど書く時に参考にできそうなモノも聞けたので、私にとっては収穫大でありました。


 それから、これも書こうかどうか迷ったのですが、実はユーザーの中に非常にお美しい方がおられましてね。本気で声を掛けたくなったのですよ。

 いや、別に連絡先を知りたいとか、そんなんじゃないですよ。あんな綺麗な方がどんな作品を書いているのか、それを知りたいと思ったわけです。この気持ち、作者さんならわかりますよね。


 で、いきなり話し掛けて会話が途切れると困るので、脳内で想定問答です。


「あの感じだと、やっぱり純文系かなあ。となると春樹辺りを出しておけば間違いないか。芥川賞の火花でも話が弾むかな」などと想像し、


「いや、意外と詩とか和歌なんかかもしれないぞ。自分の得意は俳句だけど、詩も俳句も似たようなもんだし、芭蕉の俳句なら一句くらいは知っているだろうから、そちらに話題を振るか」などと想像し、


「それとも普通に青春系ラノベかな。彼女がハルヒを知ってれば問題なしだけど、知らなくても学生時代の話なんかで盛り上げるか」などなど想像しまして、

 

 これで会話の準備は万全。さあ、席を立って声を掛けよう。


 と、思いつつも、


 いや~……


 結局、声を掛けられませんでした。ヘタレです。すみません。

 でもですね、言い訳になってしまいますが、ちょっと気になることがあったのですよ。たとえばですよ、


「どんな作品を書いているんですか」


 って訊いて、


「実はイックーさんを書いているの、私なんです」


 なんて答えが返ってきたら、衝撃の余り二の句が継げなくなるのは確実。メデューサを見て石化された勇者の如く凍り付き、会話はそこで終了。その夜は早々と布団の中に潜り込み、「ああ、美しい女性って心の中で何を考えているか知れたものじゃないよなあ。もうボク一生独りでいいや」なんて軽い女性不信に陥りかねません。


 世の中には知らない方がいい事がたくさんあるのです。だから私が話し掛けなかったのは正解なのです。


※ 注:これを読んで「君はイックーさんを、つまりはその作者を、汚らわしいものでも見るかのような目で見下しているのだね」などと思われた方、違いますよ。大きなお間違いですよ。イックーさんは黎明期のカクヨムが生んだ偉大な迷作だと思っています。作者様だって尊敬を飛び越えて崇拝しております。その辺、誤解のないようにお願いしますね。余談ですが、最近イックーさんの投稿が再開されております。今後の展開が楽しみですね。


 まあ、それにその方、スカートではなく地味目のパンツスーツでしたので、女性ではなく男性の可能性もゼロではありませんでした。無理に冒険するよりも、ここは自重した方がよかろうと判断した次第です。


 それにしても僅か2時間のうちに、司会のお姉さんと美人ユーザーさんの2人に、心の中でとはいえ二股を掛けていたことになります。実に不誠実です。最低な男ですね。反省です。ごめんなさい。テヘッ!



■4.数字の勘違いと言い訳


 参加者の人数ですが、どうやら42名だったようですね。私は36名と思い込んでしまっていて、その後、訂正させていただきました。どうしてそんな勘違いをしたのかは、それなりに理由があるのです。


 作品講評会では最初に渡された番号札の順番で、担当の編集者さんのブースに移動していきます。

 次の順番が回ってきたら、係りの方が大声で、例えば「次、F―2の方、お願いします!」なんて叫ぶのです。それを聞いてユーザーが該当のブースに移動するわけです。


 私は暇だったこともあって、係りの方の呼び声を聞きながらこの数字をメモしていたのですよ。それで当時のメモを見ましたら、Gは6まであったのですが、他のアルファベットは5までしかなかったのです。


 それでこんな風に考えたのです。5月13日の合否発表の時は6人の編集者がひとりで6人のユーザーを受け持つ予定で36人を選んだものの、それではひとつの作品を講評する時間が短すぎるという意見が出て、担当編集を7人に増やし今の形になったのかな、とね。

※追記:欠席の可能性を見逃していました。最初に42人選んでいたけど6人欠席したという場合もありますね。こちらの方が有り得そうですかね。


 でも、まあ、番号の呼び掛けを聞き逃した可能性もありますし、最後の一人なら呼び掛けなくてもブースに移動していたかもしれませんし、そもそもメモのないアルファベットもあったので、どうやらこれも私の妄想だったようです。御迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。


※6/8追記:近況ノートに書き込みがありまして、36名説もあながち間違いではないようです。その方の番号はD5だったのですが、次に講評を受けるユーザーがいなかったようです。ですので人数に関しては今のところ保留という形でお願いします。このまま永遠に保留になる可能性大ですけどね。



 しかし転んでもタダでは起きないのが私。この勘違いを利用してミステリーが書けないかと考えまして、次のような話を思いつきました。まだ第4章の一部しかできていませんが、披露させてもらいます。



タイトル「ユーザーミーティング失踪事件~消えたC―6ユーザーの謎」


第4章 解き明かされた欠番札


「どういう事ですか、わかるように説明してください」


 ボクが詰め寄ると、探偵は余裕の笑みを浮かべて話を始めた。


「思い込みだよ。ここにいるユーザー全員、間違った情報を信じ込まされていたのさ。入る時に渡された番号札はA―1からG―6。この時点で誰もがユーザーの数は42名だと信じ込んでしまった。だがそれは間違いだった。1枚だけ最初から欠番の札があったのだ」


「まさか、それがC―6……」

「その通り。会場には元々41名のユーザーしかいなかったのさ。Cの番号札は5までしかなかったんだ。C―6ユーザーは消えたんじゃない。最初からこの会場には存在していなかったんだよ」

「さすがは名探偵さん。よく気がついたわね」

「あ、あなたはカワノさん。まさかあなたが黒幕だったなんて……」


 どうして気づかなかったんだ。黒いジャケットに黒いヒール。黒幕は彼女しか考えられなかったはずなのに……



 はい、妄想ここまでです。ミステリーは得意じゃないのでこの話が完成することはないでしょう。足りない部分は皆さん勝手に妄想して補ってくださいね。



■5.あとがきのあとがき


 ライブコンサートのようなイベントならば、集まるのはファンですから、ほぼ全員が満足できるでしょう。

 今回は別に「編集者のファンです」とか、「カクヨム大好きです」とかいうユーザーが集まったわけではないので、それなりに不満を抱いた方も多かったと思います。特に遠方から高い交通費を使って参加したユーザーさんは、少々物足りなかったかもしれません。


 けれども今回のイベントは特にプロを目指す作者にとっては、それなりに有意義であったと思います。

 作者と作者の交流ならばネットの上でもさかんに行えますが、作者と編集者の交流はなかなかその機会がありません。

 もしプロの物書きになったとしたら、作者が相手にするのは他の作者や読者ではなく編集者や出版社です。敵を知り己を知れば百戦危うからず、プロになる前に相手を知っておけば、一方的に押しまくられる事もなかろうと思うのです。


 今回応募しても参加できなかった方、そもそも応募していなかった方、もし次回のイベントがあれば是非とも応募してみてください。意外な小説のネタが転がっているかもしれませんよ。

 そして、参加後は今読んでいるこんなレポートよりも、もっと有益で、格調高く、気品に溢れたレポートを書いて、参加できなかった皆様のお役に立ってくださいませ。

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