小学生時代その2

仲の良かった遊び仲間のみんなでしたが、住んでいたマンションは小さなものだったので、引っ越していく人も出てきました。

実際、私も最初のマンションを離れた1人です。

私は3人兄弟で、部屋の間取りは3LDK。小学生だった私たち3兄弟は同じ部屋で寝たり過ごしていましたが、成長するにつれて1部屋で3人が暮らすのは難しくなったからです。

とは言っても、引っ越した先は暮らしていたマンションから徒歩5分で行けるような近いところで、同じ町内でした。

通学路は多少変わりましたが、同じ町内だったので子供会ではみんなと一緒。

なので、あまりみんなから「離れた」という気持ちはありませんでした。


けれど、成長するにつれて男女の差はでき、小学校を卒業するころにはちょっとずつみんなの間に「壁」が出来ていたような気がします。


一緒に遊んでいた猫たちは、いつの間にかいなくなっていました。

中には登校中に小学校までついてきた猫もいたのですが、「学校には来ちゃだめだよ。帰りな」と促し、通学路の途中で猫を残して学校へ。

その日から、その猫は姿を見せなくなりました。

慣れない場所までついてきて、無事に公園まで帰れなかったのだろうと、子供ながらに思っていました。

寂しくてその猫を探していた時もありましたが、いつの間にか猫たちの存在も消えてしまっていました。


私が何歳の時に猫たちがいなくなったのか、正直私は覚えていません。

猫がいなくなったせい、とは言えないですが、私が小6だった時、初めて病気の症状が出ました。

小学6年の修学旅行の時、京都へ行きました。

奈良で、鹿を見ました。

私は広島住まいなので宮島には何度か行ったことがあり、奈良の鹿に対しても恐怖心はなかったです。

だから、気軽に触って、撫でました。

奈良公園は移動中に通っただけで、歩きながら寄ってきた鹿に触った程度。

何気ない行為だったのに、この時、私は無性に手が洗いたくなりました。鹿を触った右手で他の物に触れたくない。初めて感じた気持ちでした。


それからバスに乗って移動だったのですが、私はうっかり右手で自分の口を触ってしまい、鹿についていた何か悪いものが入ってくるような感じがして、口の中の唾を飲み込めなくなりました。

それが「変だな」と自分でも思ったので、他のみんなには言えず、私の様子に気付いたクラスメイトは、私がバスに酔って吐きそうなのを我慢しているのだろう、と思ったようです。

バスが次の目的地に着き、私はみんなから離れてトイレに行きました。

私としては、口の中にある唾を吐き出してうがいをするだけでよかったのですが「酔っている」と思われているなら、個室に入って吐くべきかな、と思ったのです。

なので私は一度トイレの個室に入り、便器に唾を吐き出して流し、個室を出て手を洗ってうがいをしました。

気持ち悪くて吐いた後なら、うがいをしても変じゃないよね?

そんな考えが心のどこかにありました。

そして、鹿を触ったくらいで気持ちがここまで乱れるなんて、自分の考えはどうかしている、おかしいんだ、と自分の感覚が異常だということも感じていました。

だけど、いつも遊んでいた猫達じゃなくて、よそにいた鹿だから、少し違和感があったのかも。

それくらいにしか思わず、旅行中も家に帰ってからも、そんな行動はそれきり出ませんでした。

だからたまたま気になっただけなのだろうと。


当時は全く気にしていませんでしたが、今になって、病気を知ってから思い返すと、この時の出来事が私が最初に経験した強迫症状だったのだと思います。



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