※)読者企画〈誰かに校閲・しっかりとした感想をもらいたい人向けコンテスト〉参加作品としてレビューします。
〈まず通常レビューとして〉
幼馴染みの二人。成長して綺麗になった女の子と、男の子(!?)。
大学進学を機に離ればなれになってしまう二人の、冬の日の記憶と今。
ヒロインの心の動きが可愛らしく描けた恋愛小説です。
〈以後本格的に〉
幼馴染みの男女による恋模様――というシチュエーションはもはや定番すぎて、工夫を凝らさないと先行作品の印象を乗り越えることは難しい域にある。そういう難しいテーマだと言えるだろう。この短さの短編であればなおさらだ。
そのようなテーマにおいて本作はどのように読まれるだろうか、というと――
突出した力強さは見いだせそうにはない。
さりとて、これは工夫がないというわけではない。こうした幼馴染み二人で片方が勝ち気なお姉さんキャラの場合、保護者的な振る舞いを見せるのが定番なのだが、本作では「女らしくなってあいつに女とみられたい」という方向へと進ませている。ここは重要な工夫で、それ自体は良いことだ(ツンデレと呼ばれるものとも少し違った風に書かれているし)。
ただそうした工夫を持ってしても、このような「最初から結ばれていた」パターンの展開とハッピーエンドは、物語全体の起伏が生まれず、淡々と進んでは二人の仲や感情を「確認」して終わることになる。そう「確認」なのだ。「到達」ではなく。
本作もそうであり、中途でヒロインがやきもきし読者の感情を揺さぶりはするが、それはあまり長続きしない。そもそもの最初の場面、幼少期にすでに、いかにも彼の方が彼女を好きであるといった描写が読者に刷り込まれるからだ。
幼馴染みの二人のキャラクターや、前述したヒロインのやきもき、空回り、心理の独り相撲ぶりは面白いと思えるものだっただけに、ストーリー展開に山がなく、起伏が少ないものになってしまったことは惜しまれるべきだろう。
ただし、ここは考えどころで、ある意味こうした展開は最近の主流に近いとも言うことが出来るだろう(ストレス展開を忌避する意味合い)。それは読者側の要請であるとも思われる。
そう考えると、これはこれで一つの完成形だとも言える。キャラクターもよく描けていると思うので、その意味では見るべき点は確保されている。これで満足するWeb小説読者も多かろうと思う。
作者におかれては、ここで連ねたような指摘もあることを知ってもらい、自分がどうこれから書いていくのか、この流れで良いのか、それとも展開にまで工夫を凝らすべきであるのか、自ら選び取っていただきたいと思う次第だ。