第30話 青野原の戦い(Ⅳ)

 軍の一部を囮にして罠にかけるというのは往々にして、戦記物のアニメやラノベの類ではよく見る戦い方であるが、実際の戦ではあまり見られない。言葉で言うほど簡単ではなく、やってみると困難な戦だからだ。

 負け方や逃げ方がわざとらしいと思わせてしまっては、罠を恐れて敵は追撃を諦めてしまう。

 敵が戦いの高揚感に囚われ興奮し、少しでもまともな考えを常に抱かれぬようにしなければならないのだ。

 だがそれは、敗走したと思って意気上がる数において優勢な敵軍を相手に、陽動だと気付かせないように、適度に戦いながら逃げ、なおかつ自らは壊滅しないようにしなければならないということでもある。

 もし陽動だと気付いたら、もしくは囮が壊滅するようなことがあれば、きっと伏兵のところに着くまえに、追撃者は正気に戻ってしまうことだろう。

 とてつもなく困難な戦だ。

 だが、困難だからこそやり遂げる価値のある戦と言えよう。

 リュケネは武人だった。それも戦いの技術を研鑽けんさんすることに喜びを覚えるタイプの武人だった。


 殺到する左軍を目にしても、狭い入り口をふさぐように布陣したリュケネの兵は一歩も退かなかった。

「よし、斉射せよ」

 一斉に放たれる矢。だが左軍は慌てることなく盾を頭上に掲げ矢を防ぐ。

 矢が降り終わり、再び前進しようとする左軍の将兵の目に、信じられない光景が映っていた。

 ここでリュケネが持つのは旅隊ひとつである。その千名に満たぬ人数で左軍に向かって斬り込んで来たのだ。

 弓で一旦足を止めたことで勢いを無くした左軍はリュケネとぶつかった。

 兵力では勝る左軍を勢いで上回る。陣形を大きく乱していた左軍は五十メートルも押し戻された。

 そして敵が異様な事態に驚いている、その一瞬のうちにリュケネは素早く、兵に退却を命じた。

 左軍から騎馬兵が抜け出て追撃に移る。リュケネ隊はそれとも戦いながら逃げねばならなかった。

 騎馬兵だけならまだなんとかなる。だがもしその後ろからヒタヒタと近づいてくる歩兵隊にまで追いつかれるようなことになったら、リュケネ隊は崩壊してしまうだろう。

 時々戦い、また逃げる。緻密な、そして一歩でも間違うと即死に繋がるこの退却行を、芸術的なバランスでリュケネは指揮し続けた。

 やがてリュケネが待ち望んでいたものが見える。両側に切り立った高い崖。

 だがもう少しの間ひきつけつつ退却しなければならない。先頭にだけ一撃を与えても大した戦果にはならない。できれば中ほどまで誘い込んでから、伏兵は使いたいところだ。


「リュケネ殿の隊がまもなくきます参ります」

 アリアボネが崖の上から、合図の旗を振って、そう知らせてくれた。

 有斗は兵に命じて道を開けさせ、リュケネの隊を収容する。誰も彼もが傷だらけ。よくここまで保ったものだ。

 追撃してきた騎兵隊は有斗たちが陣を整えて待ち受けていたことに気がつくと手綱たづなを引いて馬を止めた。その顔には動揺が見える。


 さあ、ここからは反撃の時間だ。

 有斗は腕を振り下ろす。

 先頭に並んだ兵が弓を一斉に放つと、ばたばたと敵が倒れた。

 左軍の先鋒は馬を返し、我先に逃走にかかった。罠にかかったことに気付いたのだ。

「騎兵隊、前へ! 逃すなよ!」

 アエティウスのその声に、アエネアスなど騎兵は残らず一斉に後を追った。

 それと時を置かずして、アリアボネの命令一過、崖の上に伏せていた兵が一斉に立ち、おびただしい数の矢を降り注いだ。おもわぬ不意の攻撃に左軍は混乱の極致に陥る。

 予期しない攻撃に盾で防ぐいとまもなく、ただの一射でおびただしい兵が黄泉の国へ行くことになった。

 後ろから加勢しようとする兵が前へと向かい、前からは敵に追い立てられ逃げようとする兵に挟まれた格好になったヒュベルの第三旅隊と第四旅隊ははなはだしい混乱に襲われていた。

 前も後ろも味方なのである。ヒュベル自慢のその美技も相手が味方とあっては振るうこともできない。

 頭上からは大量の矢が降り注ぎ、進むことも退くこともできない。

 行き場をなくした多くの兵が味方の兵に踏みつけられて圧死した。

 もはや戦どころではない、一刻も早く逃げるしかない。


 やがて救援するため前へ行こうとしていた左軍の後方の将も、このままでは待っている運命は全滅であると気付いたのであろう。

「転進! 急いで青野原に戻るぞ。いいか、すぐにだ!」

 他の将士も同じ結論に達したのか、次々と後ろを向いて退き始める。

 それでやっと左軍は敗走と言う形ではあるが、統一的な行動を取ることになった。

 とはいえ、埋伏していた弓兵と騎兵の逆襲により左軍には甚大な被害が生じている。

 混乱の為、ほとんどの将は指揮を取ることすら困難になっていた。ただひたすら回廊を敗走するだけだった。


 伏兵のやじりが届かなくなった辺りからだった。

 それまで後ろを見せて逃げていただけの左軍だったが、組織的な抵抗をしはじめる。

 どうやら少し広くなった場所で隊列を整え待ち構えていたらしい。

 逃走する左軍の兵を援護するべく、南部諸侯の騎馬兵が迫ると、長槍を並べて一斉に襲い掛かってきた。その勢いは激しく、同時にきわめて整然としていた。

 南部諸候軍はその一突きで騎馬兵を三十人も失った。

 その攻撃にひるんで、南部諸候軍が一旦勢いを弱めたと見るや、一息入れて固まって後ろに退く。リュケネがさきほど披露した撤退方法を寸分たがわず再現していた。

「敵の殿軍しんがりも見事だな。リュケネに勝るとも劣らない」

「あれは・・・左軍の第一旅長、陥陣営かんじんえいのエテオクロスです」

 リュケネが有斗に耳打ちした。

「異名を持ってるということは有名なの? 君くらいに?」

 有斗の言葉にリュケネは苦笑して、

「私なんかとは、とても比べられません。左軍の事実上の軍団長です。部下の信任もあつい良将ですよ。あの方とヒュベル卿は左軍にその人ありと、他軍の一兵卒すら知っている、それほどの存在です」と言った。


 南部諸侯軍は二度三度と殿軍のエテオクロスの堅陣を打ち崩そうと試みる。

 勢いに勝る南部諸侯軍が押してはいるが、エテオクロスも負けてはない。

 結局左軍を回廊から逃してしまった。

 本来なら左軍を救援すべく右軍や中軍が兵を出しているはずである。もう一度その兵に負けたふりをして回廊に引き込む、それが当初の作戦だった。

 だがそれは当然、左軍を救援するために、中軍や右軍も回廊のそばまで兵を向かわせているという前提で組まれた作戦だ。

 たとえ本気で援ける気がなくても、面子や建前ってものがある。

 だから一部の兵であっても救援の兵を出すはずだったし、その兵を誘い出すことが出来れば、援護の為の兵をも回廊内におびき寄せることができる、そう考えていた。

 だが右軍も中軍も一歩たりとも踏み出した様子はなかった。

 味方の危機に対しても、まったく動かないという行動を取るなどとは、アリアボネにも一片すら考えていなかったのだ。


「退きましょう。残念ながら右軍も中軍も左軍を援けに動こうとはしなかった。回廊内に誘い込み伏兵を使って敵を破り、逃げる敵軍を追撃して勝つという我等の目論見は崩れた。残念ですね・・・右府と内府が仲が悪いとは言え、まさか一歩も動こうともしないとは想定しなかった」

 アエティウスが悔しそうにつぶやいた。


 有斗たちは勝った。今日の戦闘に勝利した。

 だけど今日使った作戦は、もう明日からは使えない。

 さらに言えば左軍を壊滅するほどに追い込めなかった。むしろこちらの損害も多い。

 ひょっとして・・・今日勝ったことで、逆に明日勝てるすべがなくなったんじゃないだろうか・・・?

 有斗は少し不安を感じた。


 左府の本陣に不意の来客があった。羽林大将軍だった。

 明日の布陣にたいしての打ち合わせと、回廊に突入した左軍について話すためだ。

「どうやら左軍は損害を出しつつも、致命的な失敗をすることなく撤退をしたようだ」

 二人が見る前で五色岳口は撤退する左軍を全て吐き出すと、やがて南部諸侯の軍旗が入り口でちらちら見られるようになった。

「だが、敵はあれ以上出て来ぬようだな」

「出入り口付近でウロチョロして我等を誘っておる」

 時間がいくら過ぎようとも彼等はそこから青野原あおのがはらに足を踏み入れる様子がなかった。

「行くか? 羽林大将軍?」

「冗談を。私に内府殿の二の舞になれとおっしゃるのか?」

「ということは、今日はここまでであろうな」

 羽林大将軍は太陽の位置で時刻を確認する。もうすぐ申の刻(午後四時)といったところだ。日暮れまで近い。

「ええ、決戦は明日でしょうな」

 その二人にのっしのっしと足音に怒りを込めて近づいてくる影があった。

「どういうことだ!」

 怒鳴り込んできたのは内府だった。脂ぎった顔から汗がしとどなく流れ、蒸気を顔中から噴出するような勢いだった。

「何故、我々が敵の攻撃を受け苦労しているのを、黙って指をくわえてみておったのだ!」

「我等が援けに入ったとしても、状況は変わらんよ」

 左府は腕を組んで目を伏せたまま、その問いに答えた。

「左様、むしろ狭い回廊により多くの兵が入れば、混乱に拍車がかかり被害が大きくなるだけだ」

 羽林大将軍はむしろ勝手な行動をした内府の行動を問題視した。

「そもそも我らは広い平野にて、一大決戦を挑むことを決めておったはず。何ゆえ敵の手に乗って追撃などしたのだ? 抜け駆けの功名を狙っておったのではないのか?」

「なんだと!」

 左府が二人を制するように片手を挙げた。

「仲間割れはその程度にしておけ。我々の相手は王だ。王師同士で戦っても相手を利するだけだぞ」

「・・・・・・」

「とにかく明日に備えることにしよう」

「このまま今日と同じでは、おそらく明日も青野原に入ってくることはないかもしれぬ。ここは中書侍郎の策に従って陣を後退させ誘い込む。それぞれ今日中に青野原の端、丘陵部まで退いて陣を組もうではないか」

 羽林大将軍が意思の統一を計るべく念を押すように言った。

「明日は敵が入ってきても、すぐに攻めぬようにしなければ。陣を整える時間を相手にくれてやろうではないか。正々堂々の野戦ならば負ける気遣いはないのだから」

 左府のその言葉にも、内府は不満があるのか返事をしなかった。


 青野原の入り口に歩哨を残して、追撃をしていた部隊が疲れた足取りで戻ってきた。

 今日の前哨戦は有斗らの勝利といっていい。王師左軍に損害を与え、戦場であった回廊を確保したのだから。だが犠牲もまた大きい。死傷者合わせると五百に近い数であった。

 これほど有利な陣形を敷いて、思惑通り伏兵による奇襲が成功したって言うのにこの有様だ。王師三軍とまともにぶつかって勝てるのか?

 有斗は暗い気持ちで歩いていると「何、暗い顔してるんですか!」と、アエネアスがニコニコしながら近づいてくる。

 いいなぁ、いつも明るくって・・・悩みとかないんだろうなぁ・・・

「そういえばアリアボネは?」

 と有斗が尋ねると

「ん? さっき兄様のところに行くのを見たけど」との返事があった。

「そうか。明日のことで相談したいこともあるし、行ってみるか」

 有斗はたなびく色とりどりの旗の群れの中に、ダルタロスの旗を見つけると、そこへと足を向ける。

 だがそこにはアリアボネはいなかったのである。


 アリアボネは明日の決戦の前に、是非とも敵の陣形をその目で確認したかった。

 両側の山系は急な勾配で道程みちのりも長い。アリアボネの体力では自力で登ることなど不可能ごとだった。そこでアエティウスは屈強な兵士四人に輿こしを担がせ、アリアボネを山頂まで連れて行かせた。


 山頂からの展望は想像以上のもので、一眼の元に敵の布陣が収まっていた。

 王師らしく、見事に整えられた、素晴らしい堅陣を敷いて、それぞれ青野原の南端からは離れた位置に陣取っている。


 それを見た瞬間、ぞくり、となにかがアリアボネの身体を駆け抜けていった。まるで神様がアリアボネに与えた啓示であるみたいに、とらえどころの無い感覚であった。


 今のは何なんだろう・・・?

 不思議に思い、もう一度、アリアボネは青野原全体を見渡した。

 王師左軍、中軍、右軍、それぞれ青野原の端より、やや高く盛り上がった丘陵地帯にそれぞれ陣を構えていた。

 入り口からはそれなりに距離がある。今日敷いた陣を捨て、わざわざ後退させたようだ。

 意図は明白だった。我々を平野におびき寄せようとしているのだ。入り口で先頭部隊だけ叩いても確実な勝利は得られない。

 わざわざ距離を開けているのは、我々に陣を敷く空間と時間を与えるから、平地に出てきて戦を挑めと言っているのだ。狙いは明確、王の首をここで取り、全てのケリをつけるつもりだ。

 明日、青野原の敵に対して私たちはどう布陣するだろうか。

 敵は両翼に騎兵を配置し、鶴翼の陣で襲い掛かってくるだろう。

 いや、左翼に集中して騎兵を配するかもしれない。その方が効率的だ。だとすると我々は敵が回りこみを計るであろう自軍の右翼に最精鋭の騎兵を持つダルタロスを中心とした部隊、中央に位置するのは、分断されることを警戒すれば、当然王師下軍、左翼は南部の中小諸候となるだろう。

 頭の中で幾度も戦わせてみる。だが、アリアボネには一度とて勝利する予想は立てられなかった。

 右翼だ。右翼がきっと持たないだろう。

 もし右翼に兵を回し、なんとか持たせても、今度は左翼が包囲されて陣が崩れ落ちる。やはり無理だ。我々に勝機はない。

 それこそ天から神兵でも降りてきて味方しないかぎりは。

 青野原には出て行くべきではない。アリアボネの理性はそう言っていた。


 風が吹き抜ける。

 青野原は四方を山に囲まれた盆地。だが盆地の湿気もここまでは上がってこない。代わりに山々を駆け抜けていく風が心地よかった。

 これくらいの風がふもとにもあれば兵たちも過ごしやすくなるのだけど。

 陛下も来られれば良かったのに、とアリアボネは思った。軍中の陛下は窮屈きゅうくつそうだった。気晴らしにお誘いするべきだった、とアリアボネは今更ながら思った。

 境界線の山々の影は長く延び夜に備えて暗闇を作り出していた。

 まだ闇に飲まれていない地は夕焼けが綺麗に赤く染め抜いていた。

 明日は今日にもまして好天、きっと今朝まで降り続いた雨が作った水溜りも昼の間には消えうせることだろう。

 重装騎兵も難なく動かせるようになる、合戦には持って来いだ。


 ・・・?

 再び何かが体の中を駆け抜け、アリアボネは盆地を再び見る。

 盆地の端の山々では、森が溜め込んだ水気をもやとなして吐き出している。

 もう一度西の空に振り向くと、雲ひとつない空に浮かぶ西日がアリアボネの顔を赤く照らした。

 ・・・

 もしかしたら・・・これは!?

 高祖神帝サキノーフ様御世の青野原の戦いでは、何故、五倍もの兵力差があったにも関わらず高祖神帝が勝ったかは、未だ兵家の論争となるところ。決着は着いていない。

 軍記物語では、当時まだアメイジアに無かったサキノーフ様の作られた長槍が局面を打開したとも、もしくはわかりやすくサキノーフ様の神通力で勝利したということになっている。だけど・・・確かサキノーフ様が攻められたのも今頃の季節・・・ひょっとして・・・もし、これが私の想像通りだとすれば・・・!?


 ・・・

 ・・・・・・

 もし、もしもだ。

 そうなった時、もし王師を何らかの方法で個別に撃破すれば・・・?

 その時、先ほどと同じようなひらめきが三度みたびアリアボネの頭を駆け抜けた。

 左軍と中軍と右軍から南端の入り口までのそれぞれ距離は、完全な等間隔ではない。そこに何か付け入る隙があるのではないか。

 ・・・アリアボネの頭は過去の膨大な戦争、戦術、戦略が全て詰め込まれている。その中にひとつ魅惑的な戦術があったことを思い出した。

 それは危険な誘惑だった。


 もし意図が見破られれば、我が軍は逆に敗れてしまう。しかも普通に戦うより容易に、だ。

 ・・・しかし彼女には自負がある。天下に自身と知力で五分に戦えるのはラヴィーニアだけであるという自負だ。

 そしてアリアボネは極力、存在を隠してる。自分が南部諸候軍にいることはラヴィーニアには知られていないはずである。ラヴィーニアは認めた相手以外の人物を軽く見て、警戒しないという悪い癖がある。ならば恐らく戦場にまで来て戦術を立てるなどという面倒くさいことはきっとやらない。つまり、目の前の三軍のどこを探してもラヴィーニアはいない。なぜなら王師三軍を敵を包囲するように青野原に配置するという、誰がどう見ても既に勝ちは見えた戦にしたことをラヴィーニアは知っているであろうからだ。もう自分の出番はなくなったと思っているはず。


 ならば・・・見破られずに実行できるのではなくって?

 もし成功すれば、完膚なきまでに勝利することが出来る。・・・だがそれは危険な誘惑に思えた。見返りは大きいが、不安定要素もまた多かった。

 それにラヴィーニアだけを敵と決め付けるのもどうかとも思った。私が知らないだけで、私を上回るまだ見ぬ軍師が王師にはいるかもしれないのじゃなくって?

 ・・・でも、その時はその時と、再び思い直した。

 元々、アリアボネたちに勝ち目は薄い戦い。戦略的に負けている以上、アリアボネたちが勝利するには、戦場で危ない橋を渡り、戦局をひっくり返すしかない。


 ・・・でも、しかし・・・


 考えるのよ、アリアボネ。

 もし陛下が私の策を採用されたら、失敗すれば大勢の命を失うことになる。

 私の夢も陛下の大望も、いや、陛下の命すら失ってしまうことになるのよ。

 それは本当に明日取るべき戦術なの?

 アリアボネは青野原を赤く染める夕日を見て、遂に決意を固める。

 この数日の雨天。西天に雲ひとつない今日の天気。この天気ならば・・・必ずや明日は・・・!

「すみません! 皆様!」

 アリアボネはそばで休憩している、自分を担いできた四人の兵士に声をかけた。

「お願いします! すぐに・・・急いで陛下のところまでお願いいたします!!」

 先ほどまで風に涼んで何事かを考えていた軍師の、突然の豹変ひょうへん振りに、兵士たちは何が起きたのか、と顔を見合し驚くばかりだった。

 アリアボネは真剣な顔で懇願こんがんする。

「私たちが勝つかどうかは、明日の朝までに準備ができるか否かにかかっているのです!」

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