第7話
ドアに立ってるみきりんを、みなりんとえみゅが、いたわる様に抱きかかえながらソファに座らせた。
「上脇、大川さんから話は聞いているよ。」
「私はいつもファンの方に言ってました。1人でも私の歌を聴きたいという人がいたら、その人の為に歌い続けたい。でも、その1人が私の為に命を失いました。もうどうしても、その人に歌を届けることは出来ません。」
きりんはそれは違う、歌って欲しいと号泣し、叫び続けている。しかし、みきりんはボロボロと泣きながらうつむいている。みなりんはゆきりんの肩を抱き、えみゅは軽く背中をさすっている。赤井Pがポケットから小さな携帯ストラップを出して、机の上に置いた。帽子を被ったゆきだるまの様なちいさなぬいぐるみが付いている。きりんはそれを見て叫んだ。
「こっ!こきもりんや!」
「 あっ。それ。」みきりんは小さな声で言った。赤井Pが話し始めた。
「うん。剣城さんから連絡を貰ってね。これ、きりんさんがずっと持っていたものらしいんだ。」
「はい。握手会でいつも身につけてくれてました。剣城社長って、きりんさんをご存知何ですか?」
「こきもりん、覚えてくゔぇてゔぅぅぅー!」きりんは感激して号泣していて言葉にならない声で叫んでいる。
「いや、グループで使ってるSNSがあるだろ。あれでね。剣城さんが親しくしているトークの常連の人達がいるでしょ。その人達の1人がきりんさんの友人らしいんだ。じょんれのんっていう名前らしいんだけどね。その方が剣城さんに何とかみきりんさんに渡せないかと相談に来たらしい。」
「SNSですか。」
「うん。きりんさんはそのSNSで有名だったらしいね。このストラップの名前は、こきもりんって言うんだって。」
「こっ!こきもりんですか。そういう名前だったんですね。」
「キモい自分の小さい版っていう意味らしい。」
ゆきりんの表情が少しゆるんだ。
「選挙の前とか大事な事がある前の握手会の時、このストラップにメッセージの書いた小さなプラカードをつけて、首にかけてたんです。これ読んでって..........:」
ゆきりんは涙ぐんで胸を抑えている。
「何て書いてあったの?」
きりんはゆきりんと声を合わせる様に、
「 夢の続きを共に歩もう」
「ゆゔぇのつづきゔぉとゔぉにあゆゔぉおー」
「言えてないやん。」
阿弥陀様のツッコミを気にならないぐらい、きりんは喜びのあまり天井でぐるぐる回っている。しかし、みきりんはもう一度うつむいて言った。
「でも........。もう出来ません。」
きりんは床に崩れ落ちた。
「上脇........。ひとつ聞いてくれないか。」
「いえ......。もう」
「いや、そうではなくて....。きりんさんにね.........。会いに行かないか?」
うつむいていたみきりんは顔を上げて赤井Pを見た。
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