三枚の白い羽根
「まいったな、どうやらここにも無さそうだ」
大鴉のワタは、小さな男の子に向かっていった。両翼を大きく広げて、お手上げのポーズを作った。
「レテクル、お前さんの失くした悲しみは、余りにも小さ過ぎるみたいだな」
「そうかもしれないね。……あっ、ワタ、羽根が!」
ワタは、レテクルの瞳に映りこんだ自分の翼を見て驚いた。左の翼の一枚の羽根が、真っ白になっている。
「やれやれ、またどこかに羽根の色を落としてしまったらしいな」
「全然気づかなかったよ。一体、どこに落としてしまったんだろう」
「失くしちまったものはしょうがない。気長に探し出すとしよう」
その時、一連のやりとりを見ていた小さなシジミチョウが、ワタとレテクルの前にやって来た。
「どうやら、お二人さんは失せ物探しが苦手なようだね」
「あんたは何かいい方法を知っているのか?」
シジミチョウはひらひらと、捉えどころなくワタとレテクルの間を舞う。
「もちろん知っているとも。まずは、目を閉じることだね」
「目を閉じちゃ、何も見つけられないんじゃないの?」
小さなレテクルがそう言ってみると、シジミチョウは騙されたと思ってやってみるといい、と澄んだ声で言った。
言われたとおりに、レテクルは静かに目を閉じた。それを見たワタも、半信半疑に目を閉じる。
やがて、レテクルが目を開いたとき、シジミチョウは姿を消していた。
「あれ? どこに行ったんだろう」
ワタも、ゆっくりと目を開ける。そして、ゆらゆらと飛んでいたシジミチョウがどこにもいないのを確認した。
「何か、見つけることはできたか?」
「ううん、何も」
「騙されたのかもな」
「そうかもね」
気を取り直して、小さな男の子と大鴉は旅を再開した。
大鴉の右の翼には、二枚の白い羽根がある。
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