隠れている湖

 小さな男の子、レテクル・スプリングと大鴉のワタは、フンチェラの湖に辿り着いた。


「美しい湖だね」

「月の夜に映えそうだな」


 湖のほとりの湿った枯葉の下から、一匹の山椒魚さんしょううおが顔を出す。

 ぬるぬるした皮膚と、ぼんやりした目玉。くるりと目玉が動いて、小さな男の子の方を向いた。


「こんにちは、山椒魚さん」

「おや、こんにちは、可愛らしい坊や。それと、見たこともない大きな鴉さんよ」

「ここがフンチェラの湖か?」


 山椒魚は、そう呼ばれることもある、と言った。

 あちらでは、蛙が湖に飛び込む。


「君たちは、ここに何の用があって来たのかね。それとも、何の意味もなくここへ?」

「探し物があるんです」

「そうか、それは残念だ。何かの目的をもってここを訪れても、この湖は本当の姿を見せてはくれないだろう」

「どうやら、ここは俺たちの目指す場所じゃあなかったようだな」


 山椒魚は、また枯葉の下へと潜っていった。おかしなことに、山椒魚が姿を隠してから、湖の周りでは誰とも会うことがなかった。

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