アンテナさんと愉快な仲間たち

 アンテナさんが、極めて大きな声で叫んでいた。


「俺はいるぞ! 存在しているんだ!」


 けれど、しばらくして黙った。応答は一つもなかったらしい。


「いよいよ、見捨てられたかな」


 カメラさんが喋った。自嘲気味だ。


「年だからな、もうそろそろお役御免かと思っていたが――」

「まだ、通信障害が起きている可能性も……」

「おい、電池坊や。通信にケチつけるってことは、」

「や、アンテナさんのせいじゃなくってさ……、太陽嵐とか」

「太陽嵐は起きてないよ。至って平常さ、観測上はね」


 カメラさんの言葉に、口を噤む。


「まあ仕方ないさ。運用終了直前に致命的トラブル、復旧したものの電気系統の半分が使用不能じゃあね」

「なら停止信号でも送ってくればいいのによ」

「受信できなかったんじゃないのか、……っと、禁句だったかな、アンテナ君」

「まだまだ俺は現役だ、イカれてねえぞ!」

「まーた始まっちゃった……」





「外宇宙から、妙な電波が飛んできたんだってね?」

「ああ、解読してみると、『ここに在り』といったメッセージが込められているらしい」

「へえ、シンプルだが難解だ。宇宙人は哲学者かもしれないね」

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