神様は不公平 3/7
合コン当日。悠は自分が持っている中で比較的オシャレと思われる服を引っ張り出し、それを着る事にした。もうずっと着ていなかったため、何となく肩が凝る。
電車に乗り、待ち合わせの駅へ向かうと、すでに村田さんともう一人の女の子が到着していた。今日は三対三らしい。
少しすると、男性陣も到着。悠は思わず心の中で『ゲッ』ともらした。
男性陣三人のうちの一人が、黛君だったのだ。
「あれ、木村さん? なんでいるんですか?」
こっちのセリフだ。
「村田さんに誘われたから」
「マジですか? おい村田、誘うなら大学のやつ誘えよ」
黛君は顔をしかめてそう言う。村田さんは実に申し訳なさそうな顔で「すいません」と頭を下げた。
「大学の方では都合付く子見つからなくて……」
本当なら大学の知人を誘うところだったが都合がつく子が見つからず、最後の手段で悠を誘ったというわけだ。しかも、黛君がいると悠は断る、と恐らく村田さんは気付いており、秘密にしていた。してやられた。
―― 今からでも帰りたい……。
そう思ったものの、流石にここで帰るわけにもいかず、六人で店に向かった。
「幹事やらせてもらってます、黛です。木村さん以外の学生のみなさんは、試験終わったばっかで開放感いっぱいだと思います。今日は楽しみましょう! 乾杯!」
六人で乾杯。悠は気持ちを入れ替えて合コンを楽しむことにした。幸いなことに、向かいに座っているのは黛君ではない。
「猪俣諒です。政開大学の経済学部三年です」
そう名乗った彼は三人の男性の中で一番地味な格好で、どことなく悠と同じように場慣れしていない雰囲気が感じられた。
「木村悠です。岡本食堂っていう定食屋さんで働いてます」
他の参加者全員が学生の中、そう挨拶した悠に対し、諒君はにっこりと興味を示した。
「定食屋! 厨房立ってるの?」
「最近はたまに立ってるよ。まだ任せてもらえる時間は短いけどね」
「へえ。料理人かー。職人だよね」
「まあね」
「いいねー。俺そういうの好きだよ」
「はいはいそこ! 序盤から二人だけで話さない!」
幹事の黛君の注意が入った。
「自己紹介終わったら早速ゲーム始めまーす! まずは……」
*
合コンのゲームがひとしきり終わり、悠と諒君は音楽の話で盛り上がっていた。悠が好きな『リトルジャーニー』というバンドを諒君も好きだったのだ。
「俺はセカンドアルバムが一番好きかな。『桜ハイウェイ』」
「あー、桜ハイウェイね。初期の魅力は、あのアルバムに全部つまってるよね」
「そうなんだよね! まだポップになりきる前の、ちょっとひねくれた歌詞と、アクの強いサウンド。あれが病みつきになるっていうかさ。悠ちゃんよく分かってるなー!」
「あのアルバムの後、ギターの松野さん辞めたじゃん。サウンド変わったよね」
「いや、ほんとによく分かってる! じゃあ悠ちゃんのベストは?」
「うーん、私は『ホットロリポップ』かな……あー、でも『虎コレクション』も捨てがたい」
「『虎コレ』!!」
諒君は嬉しそうに笑った。悠もつられて笑顔になる。
「マニアックでしょ?」
「虎コレ出してくるのは本気のファンでしょ。あれ一枚だけ異彩放ってるからね」
コアな話題で盛り上がる二人。そのさなか、諒君はテーブルの下から、悠に小さなメモ用紙をこっそり渡して来た。
--- これ終わったら二人でカラオケ行かない?
悠は、諒君にうん、とうなずいて見せた。
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