神様は不公平 2/7




「木村さん、今度の日曜、暇ですか?」

 岡本食堂のランチ営業終わり、悠にそう聞いて来たのは、学生のバイト村田さん。


「どうして?」

「合コンあるんですよ。友達と行く予定だったのにその子来られなくなっちゃって。代わりに来ません? 今回、お金は男性側が全部出してくれるんです。お得ですよ」

「合コン……」

「木村さん、彼氏いないって言ってましたよね?」

「いないけど……」

「行きましょうよー。男に興味なくても、タダ飯ですよ?」


 普段なら例えお金がかからなくても合コンはパスする悠。だが今回は、バレンタイン浩太ショックの直後だったため、寂しさから誘いに乗りたくなった。


「……行こうかな」

「やった!」と村田さん。

「結構高いお店に行くみたいなんで、楽しみにしててくださいね! じゃ、お疲れ様ですー」




 バレンタインのショックから思わず「行く」と返事してしまったが、実は、合コンは生まれて初めて。何か失敗してバレンタインに引き続き惨めな思いをするのは避けたい。

 まかないを作る合間を縫ってスマホをいじり、ネットでいろいろと調べてみるものの、言われなくても分かるようなことや抽象的な情報ばかりで、なかなかピンとこない。


「こんにちはー」

 店の扉が開き、あり姐がやってきた。大将はいつも家で昼食をとるため、今日はあり姐と阿部君と悠、三人でまかないを食べる。

「今日は肉うどんだよー」

 悠がどんぶりをテーブルに並べる。阿部君が箸と七味を置き、準備完了。「いただきます」と三人同時に食べ始めた。


「ねえ真田さん、合コンって行った事ある?」

 あり姐はもぐもぐしながらうなずいた。

「あります。もちろん鎮と付き合う前ですけど。二回だけ」


「実は私、今度行くことになっちゃって……合コンってどんな風なの?」

「お酒飲んでお喋りして、仲良くなる……端的に言えば、それだけです」

「真田さんが行った二回は、どんな風だった?」

「うーん」と、若干遠い目になるあり姐。

「一回目は……ただご飯食べてお酒飲んで、帰りました。特に興味ある男いなかったんで。二回目は、『おっ』って感じの男がいて、合コン終わった後二人でカラオケ行って……」

「二人で?! その後どうなったの?」

「カラオケ行ってみたらその人、店員さんにすごく横柄な態度で。それを私が注意したら、連絡来なくなりました」


 横柄な男にビシバシ文句を言うあり姐。ハッキリ情景が浮かぶ。それで敬遠されたわけだが、あり姐は絶対に後悔していないだろう。ちなみに、悠だったら、同じような事をしてしまったら後悔するかもしれない。


「どんな服着ていくべきかなあ?」

「何も言われてないなら別に、適当でいいと思います。で、楽しめるなら楽しんで、楽しくなければ無理に楽しまなくても。力んで行くようなものじゃないですよ」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る