第七話 幸せなバレンタイン?

幸せなバレンタイン? 1/6



 二月のある夜。悠と詩織は、悠の家でチャーハンを食べていた。

「もうすぐバレンタインだね」

 悠がそう言うと詩織はスプーンをくわえたまま「うんうん」とうなずいた。


「黒川君にチョコあげるでしょ?」

 にんまり笑ってそう言う悠。詩織は「まあね」とうなずいた。


「デートもするんでしょ?」

「うん。一緒に夕飯食べに行く」

「その時にチョコ渡すの?」

「そうだね」

「実はね、私、こんな本買ったんだ」


 悠は詩織の前に一冊の本を取り出して見せた。タイトルは『必ず虜になる! 究極のチョコレート』チョコレートを使ったお菓子のレシピ本だ。


「えぇっ?!」と詩織。

「チョコレート作るの? 悠、彼氏できたの?!」

「そんなわけないでしょ!」と思わず笑ってしまった悠。

「詩織が作ると思ったから。この本ちょっとレベル高いけど、私が一緒なら……」

 詩織と一緒に作るつもりだった悠だが、詩織はきょとんとした顔でこう言った。

「私はもう作ったよ?」

「え……? まさか、詩織一人で?」

「ううん。私と美紀とあり姐の三人で一緒に作った」


 ガツン! と、そこそこの衝撃が悠に走った。チョコ作りで絶対に自分を頼ってくると思っていたのに、詩織は美紀とあり姐の彼氏持ち女子三人ですでにチョコを作り終えていたのだ。独り者の悠には、声はかからなかった。



 ―― え、何これ。寂しいし恥ずかしいんですけど。



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