第2話 現象2

 ここはフランス、パリ。昼食の準備が行われる中、セリシアはパソコンの前で何やら嬉しそうに話をしていた。

「ああ、あと一週間でジャパンエキスポね!すっごく楽しみ!」と流暢な日本語で対応していた。

パソコンの画面に映し出された相手も同じ調子で「うん!私も今から楽しみ!セリシア当日はよろしくね!」と応えた。

「どっちの服を着ていこうかな?」そういうとクローゼットの中からワンピースを取り出した。

ただそれはロココ調のたくさんのフリルとリボンのついた高そうなワンピースだった。「あら!素敵じゃない!沙織ならきっとどっちも似合うわよ!」とセリシアはすすめた。「ありがとう。そうするわ!」と言った途端、大きな機械音とともに眩い光が差し込んできて、画面が真っ白になったかと思うと、一瞬で元通りになった。「ああ、よかった。パソコンが壊れたかと思った。」

とセリシアが安心したのもつかの間、目の前にいたはずの沙織がいなくなっている。「トイレかしら?」しかし、十分経っても20分経っても帰ってこない。

「セリシア!いい加減にしなさい!ごはんが冷めちゃうでしょ!」

「分かったわ。ママ今行くわ。沙織、聞こえる?ちょっと席を外すわ。また一時間後。」セリシアはメールでもそう伝えると席を外した。

一時間後もう一度メールでスカイプの再開を伝えたが応答はなく、セリシアは胸騒ぎがした。

変だ彼女は急に態度を変えるような人じゃない。何か事件に巻き込まれたのでは?

他の友達に相談すると意外な言葉が返ってきた。

「オペラ座周辺にある日本食レストランで日本人スタッフが消える事件が起きたんだ。君の友達もこれと何か関係があるのかも。」「ちょっと待って彼女は事件に巻き込まれるような人じゃないわ。」とセリシアはかばった。

「俺だって彼女のことは知っているさ。俺が言いたかったのは・・・っとこれみろよ。」そういうと男はスマートフォンをセリシアのほうに向けた。セリシアは彼が持っているスマートフォンの画面を見てみると「フランス政府は日本人消失の原因、テロの可能性を示唆。日本行きの飛行機及びフランスへの日本人入国を制限。…って何よコレ?」セリシアは茫然とした。

「何ってそのままの意味さ。」スマートフォンを返してもらうと彼は続けてこう言った。「仕方ないよ。どこの国だって自国の防衛が最優先何だ。日本人とテロとの因果関係がはっきりしない以上仕方ないんだよ。」冷静な指摘にセリシアは返す言葉が見つからなかった。「そんな・・・。沙織どうか無事でいて・・・。」



 台湾でマグニチュード8クラスの地震が起きた。自衛隊が真っ先に駆け付け救助活動を行っていた。すっかりあたりは暗くなってしまい一人ひとり励ましあいつつテントのほうに向かった。「今日はよく頑張ってくれた。今日はゆっくり休んで明日に備えてくれ。」何か言いたそうに救助犬がこちらを見ている。

「もちろんお前の頑張りを忘れたわけじゃないさ。ごくろうさん。ロック!と話しかけた。「お疲れ様です。自衛隊の皆さんこちらへどうぞ。」地元のボランティアだろうか?食事を一緒に取らないかと言ってきたのである。「・・・とおっしゃってます。」と通訳が言うと「どうしますか?松島曹長。」すると彼は複雑な表情を見せ「せっかくなのですが・・・。」と言いかけた瞬間、大きな飛行機音が聞こえたかと思うと辺りは眩い光に包まれてたかと思うと2.3秒で元通りになった。地元ボランティアと思われる男性が「あれ?さっきまでここにいたのにどこへ行ってしまったんだ?」と戸惑っていた。



 豚骨ラーメンを習いに単身ロンドンから博多にやってきた男性はラーメンの作り方を教わっている最中に、交換留学生のブラジル人は日本人の友達と帰る途中、フィリピンの出稼ぎ労働者は日本人が経営するレストランで晩御飯を食べている途中この不可思議な現象に出くわしていた。「マッドこの現象に出くわしていたのはあなただけじゃないの。」アリシアは今までに届けられていた報告をした。するとマッドは「日本各地だけでなく世界中で日本人が行方不明になっていたわけだ。じゃあこんなことを起こした犯人は?原因はなんだ。」少しイラつきながら二人に聞いた「アメリカ政府の・・・世界各国の共通の見解だとテロの可能席も視野に入れてそうさをすすめているそうよ。」「テロねぇ…だとしたら相手は北朝鮮か?」「北朝鮮のようにお金がない国が最先端技術を持っている日本を相手にこんな形でテロ行為を行うなんて考えにくいわ。」とアリシアは冷静に分析した。「じゃあ結局原因が何であるのか分からないんじゃないか。」苛立つマッドの背後から「可能性があるとするならワープかもしれないな。」と一人の男が話しかけてきた。「ああ、マッドこちらはエリック・クロフォード、宇宙工学が専門なの。エリックこちらはマッド・ノックマン少佐。横須賀米軍基地勤務よ。」「どうも」とエリックのほうが手を差し伸べそれに戸惑いつつもマッドも「よろしく」とにぎりかえした。

「ワープって聞こえたけど。」「ああ、確かにそういった。目撃者の情報をもとに考えられるのはそれしかない。」とエリックは気にせずどんどん話を進めていった。「君、ホワイトハウスで抗議するために乗り込んだんだって?ぼくにはまねできないな。」そう俺は抗議の最中に身柄を拘束されここまで連れてこられた。

「こうでもしなきゃアメリカ政府は動かない。どうして今回の件はアメリカ政府は慎重なんだ。」怒りを隠しきれない俺に対してアリシアは「そんなことはないわ。アメリカだけじゃない。世界各国この事件に対して全力を挙げて調査、対策を行っているわ。」とアリシアは言った。「行動が遅いのは対象が日本人だからだ。」とエリックは悪びれた様子もなくそういった。「なんだと?」マッドはエリックにつかみかかった。

 



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