いきつく底

擦り切れた条件反射の背後では鬱憤が爆発し 青色は優雅だ

雨が今にも降りたいのなら 了見の狭い奴ばかり打つがいい

歩道橋見るからに柵が巡り 未来への一歩を踏み止めている

落伍者が咲いた花道の上 我が物顔の通行人が優雅だ

電柱改め案山子の肩へ黒々と鈴生りの天使たち 横行する土手南瓜嗄れ声で脅かした研がらした嘴で恋を見下した黒ずくめに毛羽固め支配者の傘下へ参画した頭垂れて次破る戒律を所望した 口角を上げた鳥撃ちが優雅だ!

曇りの翌日にねずみらのコロニーが凍えずに眠れたのは その先で妖精の群れが透かし羽を濡れそぼちたから

競り合いも 確執もなくとも

地上に縫われた羽虫と別段で ただ一夜溺れぬ肺は優雅だ

禿山の天竺 さらばえ毒っぽいレトロフューチャー

廃鉱に掲げ通しのスローガン 後ろ暗く剥げ落ちて伏せ字

黄金狂の玄孫たちがシャッター街去りあぐね 水溶の煙弄したむろしたる春

頂では棒立ちに睥睨する 公約破りの未来仏が優雅だ

斜陽の戦国 錦の雨 呻く戦奴の珈琲色は 赤土を搾った燃えカスだ!熱波で歪んだ旧国道を 嗅ぎ回る野猿の鼻息は風雅だ 人身を耕すまさかりを受けて 掻き毟った喉笛に迸る脂汗干涸らびさす都市ガスも未曾有の優雅だ 折れた宝刀噴く粉が 喚き崩れる義勇軍が優雅だ

詰め所に行き帰る人々の 瞳の奥行きは絶して深遠な空虚だ モノローグに埋没して細る 幽光 余暇ならぬ製品寿命が優雅だ あばら家より滴る怨嗟のくちなわは 辛酸もたげる鎖どもは

イナゴの濁流に貪られた土地で 憤激にやつれ立ち往生した旗持ちは その旗色は虫食いにして 塵一つ認めぬ誠の青だ

意に介さぬ好天が優雅だ!


圧縮と伸長を繰り返している 同じ題目のディテールをとっかえひっかえしている

濃密と希薄を取り交わしている 違う模様のテクスチャをためつすがめつしている

ただ一層の優雅で 凡百を踏まえ輝けるか

なお一層の優雅へ 大群の細胞を導けるか

蛆虫のように若々しく 蛇蠍の如く精強に 厚遇ほど苦々しきものはなく きっと青色はずっと優雅だ

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