びしょ濡れ
。某日
雨が降った場合当然のこと、干してある洗濯物はびしょ濡れになる。蛙である男はでっぷり太っていて、昨晩も天気予報を見た筈だった。彼はベランダの棹に引っ掛けた下着が帰るとパリッと乾いているのを見、干上がるほど泣いた。これでは私の肌の粘りは無残にも失われてしまう。湿度設定を20%上げた。持ってる中で図抜けて分厚いコートを顔まで被り、決死の覚悟で水浴びに向かった。取り立てて今夏は無情な暑さである。夜道までもが例外なく。銭水から上がると、束の間の事ではあるが二十歳のころのようにぴちゃぴちゃだった。一緒に出た刺青男の足元で、からンころと下駄が色のついた声を振り撒く。いや入浴前にである。入浴前に噴霧に頭を差し出して掻いていて、ふと右隣の肌の華やかな柄を視界の端に捉え、瞬時と「本業の人だ。」と思ったものだが。冷や水に浸かってる最中よりも何故だか今の方が、憩って平和な印象を受ける。これにて計算二度目の意外也。彼の家には何が待つのだろうか。この調子で右肩上がりに良いものか?家族、娘、プリン、音楽?与り知らない。それともあれで彼なりの、束の間しか許されない艶姿なのだろうか。あの楽しげな反響音はどんな裏事情と抱き合わせで彼の生活に座席を買い取ったのだろうか。尤も得たのじゃなく居残らされたのかも知らない。その後も仮想の下駄が経時を刻むうち無意識に二度目の玄関を通り、缶詰のフレークを貪った。天気予報は外れの晴れとのお達し。じゃあ明日こそは、降りますように。今日と同じに予報に逆らってくれなきゃ、不公平だろ。ダメ押しには知己に持つツバメ女に電報を打つ。低く飛べと。
。某日
あっけらからりん、晴れていた。お天道さま?今日こそは遺体で見つかってやるからな。
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