第4話 犬の利点
もう……動けない。結局四杯目もほぼ無理やり完食させられてお腹がパンパンに膨れ上がっている気がする。でも、チルに悪気がないのが一番困るところである。今後、あの量が三食出てくると考えると吐き気が……。
重い体を揺らしながらどこかへ行ったリンデを探す。リンデは先に食べ終わり大広間を出て行ったのでどこに行ったのか全く見当もつかない。ってかどこに何があるのかも実は分からない。何せここに来てまだ一日も経過していないのだから。
それってすなわち俺……迷子?
歩いていると誰かの足音が聞こえる。もしかして、リンデか?と思ってたんだが
「あ……」
歩いてきたのはあの毒舌幼女、レミィだ。やばい、変なことされるんじゃないか?一瞬のうちにそういう思考に至った。
ん……?何かキョロキョロしてる?何だか嫌な予感がする。俺も確認してみたが誰もいない。すなわち、逃げるが勝ちだ。
でも一瞬、遅かった。俺が駆けだそうとした時、レミィは既にこっちに飛び掛かっていた。そして、ガシッと捕まれる。……ダメだ、これは殺される。こんな時に魔法が使えたら……。そうか!ここは今までいた世界とは全く違うんだ。いうなれば異世界というやつだろう。なら、魔法が使えるはず……。
……どうやって魔法を使うんだ?全くわからない。つまり……詰んだ。
「リュウタン、良い子でちゅねえ、可愛いでちゅねえ、最高でちゅねえ」
え……?これは……レミィだよなあ。あの大広間で毒舌を振り撒きまくっていたレミィ……だよなあ?
こいつは物凄いツンデレだ。さっきあれだけ馬鹿犬とか言ってたのに。かつてここまでのツンデレにリアルで会ったことないぞ。まるで本やアニメの中の世界だ。
……でも、案外鬱陶しいな。見ている限りには羨ましかったんだが……。さっきから頬ずりしたり、胸で抱いたりしているが全然離してくれない。ちなみに、胸はさすが姉妹と言わんばかりにない。ほっぺたは幼女だけあって流石にプ二プ二している。とてつもない弾力だ。これは将来期待せざるを得ないだろう。
「チッ」
彼女は舌打ちすると俺を体から離す。すぐに理由が分かった。向こうから、チルが歩いて来ていた。
「あら、レミィ様。どうされたのですか?」
「何でもないわ、おっぱいお化け。さっさと仕事に戻りなさい。じゃないと、追い出すわよ」
「了解しました。レミィ様」
逃げるなら今だ。全速力で気付かれないように走り去った。その結果、全く見たこともない場所に着いたのだが……。
さっきから歌手かと思うような綺麗な鼻歌が聞こえてくる。俺には分かる。リンデだ。やっと見つけた。
「あら、リュウどうしたの?」
彼女はドアを開けて出てきた。その服装は薄い布一枚、バスタオルのみ、そう、ここは浴場だったんだ。胸こそないがその体つきは妙にエロい。何故か分からないけどやたらエロイ。しかも、俺は犬だ。いくら見続けても変態とかエロ親父とか罵られない。いや、まあ罵られるのも一興……いや何でもない。
「そうだ、リュウ。せっかくだから綺麗になりましょう」
そう言うと、彼女はその恰好のまま俺と風呂場に入る。そして、彼女は綺麗な指で俺の体毛を梳く。超気持ちいい。しかも、俺の目の前には彼女の胸が……。これは触っても良い物だろうか?とも考えたが触ると理性を抑えられなくなりそうなので流石に自重した。因みに断じて変態ではない。世の中の男は皆人生で一度くらいは女性の胸を触りたいと願うもの……だと思う。とにもかくにも、今日一番の至福の時だ。でも、その時間もいつか終わりを迎える……と思っていた。でも、リンデに毛を乾かされてそのままリンデの部屋に二人で直行する。
あー、気持ちいい。流石お金持ちと言いたい。ふかふかのベッド。しかも、リンデがマッサージをしてくれている。断言しよう、これはリアルでは絶対に体験できないだろう。少なくとも俺の18年間の中でそんな思い出は無い。悲しくなるけど皆無だ。俺の今日一番の至福の時間はまだ続いていたんだ。
……っておお!!リンデの見目麗しい顔がすぐお隣に。
「お休み、リュウ。また明日ね」
あれ?犬って最高じゃね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます