第786話、暫く潜伏します!
「ふあ~・・・なあ、俺たち何時までこんな所に居たら良いんだ?」
「俺だって知らねえよ。突然こんな所の警備に行け、なんて言われて飛ばされたんだからよ」
「ったく、暇で暇で仕方ねえ。金があるのに娼館にも行けやしねえし」
「近くに大きな街が無いからな」
「何でこんな辺鄙な所で、こんな訳の分からねーものの警備なんてしなきゃなんねーんだか」
「本気で言ってんのか、お前」
「はぁ? 当たり前だろ。俺は娼館通いが趣味だったんだ。とっとと街に戻りてえよ」
「そっちじゃなくて・・・まあ良いか」
どうも、休憩中の警備兵の会話を盗み聞きしながら遺跡の周辺を調査中のタロウです。
全力で隠匿と探知を使ってコソコソを嗅ぎまわっております。
念の為兵士の予備の服と装備も拝借して紛れ込む事で、隠匿効果を上げたりもしている。
なんか備品管理が結構ざるだったから、割と簡単に拝借出来た。それで良いのか軍隊。
あと今回の盗みは色々と事情が事情なのでどうか許して頂きたい。
そんな誰にしているのか解らない言い訳をしながら、ある程度状況は確認できた。
空から見た時点で解ってはいたけど、休憩人員も含めるとかなりの数が居るみたいだ。
明らかに誰も近づける気が無い、っていう指示者の意思が滲み出ている。
ただ基本的に兵士達は殆どやる気が無く、今の兵士の様に街に戻りたがっているみたいだ。
大半はこの遺跡を守る意味すら分かっていない感じで、けれど数人は違うっぽい。
何故そんな事が解るか。理由は単純明快です。気功の流れがおかしいんだよ。
結構な人数の中の数人だけど、確実に例の人員が居る。
一見普通に会話しているのは普通のふりをしているのかどうなのか。
正直俺には判断が付かない。けれど薬を使われた人間な事だけは確かだろう。
とりあえず彼らにだけは絶対気が付かれない様に、細心の注意を払って動く方が良い。
気が付かれたら問答無用で殺しにかかって来るのが簡単に想像できるし。
いや、ばれた時点で兵士達は皆同じ事をするか。
警告で済ませてくれそうな距離が外側の監視の目の範囲だからなぁ。
従わない場合は捕らえるのではなく殺害らしい。容赦が一切ないからちょっと怖い。
結局は誰にも気が付かれる訳にはいかないだろう。少なくとも侵入している時は。
という結論を出した所で一旦兵士達から離れ、そそくさと森林の蔭へと消える。
「ぷはぁ・・・流石にあの人数の中コソコソ動くのは息が詰まる・・・」
一応周囲に人が居ない事を確認しつつ、兜を取って息を吐く。
正直こんな事は慣れてないから無駄に神経をすり減らした気がする。
とはいえその甲斐もあって、色々と解った事もあったけれど。
ただ現状は不安の方が多い。何せ今の俺は一人だから。
「ハクめ・・・マジで置いて行きやがって・・・あー、一人はホント不安だ・・・」
ハクの奴は俺を届けたら、宣言通りとっとと帰っていきやがった。
マジでシガルの事しかな頭に無いらしい。ちょっとぐらい助けてくれても良いじゃん。
万が一俺が失敗した時はハクが次の候補なんだからさ。
あと魔人を倒した後ちゃんと無事かどうかの不安も結構あるし。
一応今回は倒したけど倒れたみたいな事にならない様、加減をする予定ではある。
それでもやっぱり敵地で一人は不安だって言ってもアイツは聞く耳を持たなかった。
『タロウなら大丈夫だろ?』
当たり前の様な顔でそう言って、反論する暇も無く飛び去って行くハク。
俺はそんな彼女を呆然と見送る事になり現在に至ると。
叫んだら流石に不味いから、ハクへの怨念を叫ぶ事すら許されなかった。
「信頼されてるのか能天気なだけなのかシガルの所に早く戻りたいだけか・・・多分最後が一番可能性高いな。あ~・・・上手くやる自信ねえなぁ・・・」
不安と文句を口にしつつ、持ってきたお弁当の残りをもしゃもしゃと食べる。
「後は残りの干し肉と乾燥野菜以外現地調達か・・・まあ何とかなりそうだけど・・・」
あの兵士達の備品管理がザルなのは、何も装備だけに限った話じゃない。
食料に関しても中々ざるで、いざとなればそこから拝借する手もある。
というか普通に兵士に混ざって料理を頂くのも手だ。
「出来れば長期戦にならないと助かるんだけど、な」
たれのついた指をペロッと舐めながら、遠くに見える遺跡を眺める。
今すぐ遺跡を破壊すれば、きっと魔人の問題は起こらずに片が付くだろう。
いや、俺が負けたらそこで問題発生ではあるんだけど、成功したと仮定してだ。
ただその場合、ウムルは勝手に遺跡に手を出した、という事になる可能性があるとか。
正直王女がこちらに居る現状を考えれば、そこまで問題無いように思えるだろう。
誰がわざわざそんなウムルに不利な事を告げるのか。そんな疑問を当然俺は持った。
「アロネスさんが助けた王女が言い出す可能性か・・・まったく面倒くさいね」
その疑問に答えてくれたのは、俺に指示を出したリィスさんだ。
王女が国を取り戻した後、ウムルが勝手に動いた事を逆手に取って来る可能性も有ると。
現状人となりの確認がほぼ出来ておらず、直接の関りがあるのはアロネスさんだけ。
その状況で遺跡に手を出すのは色々と面倒くさい事になる可能性があると。
なら城の爆破はどうなのかと思うけど、アレは王女を助ける為だからセーフらしい。
そして王女が国を取り戻した後に、正式に遺跡の調査許可を打診するという流れとか。
なら王女に許可を今求めて書面も作ってしまえば良いのでは、と当然凡人な俺は考えた。
けれどそこでもし話がこじれたら、更に余計な面倒が起こる可能性があるらしい。
王女との交渉で時間を使うぐらいであれば、現状の問題を先に解決した方が余程良いと。
今回既に暴れてしまった以上解決には速度が要る。王女の回復以上の時間は取れない。
相手が混乱している内に対処をしないと、王女を攫った犯人にされかねないと。
そんな無茶なと思ったけど、ありえない事ではないとポルブルさんまで言い出した。
となると俺にはもう何も言えず、ただ指示に従わざるを得ない。
まあ最終的に王女への打診も断られる可能性も有る、とも言われたけどさ。
つまり俺は最悪に備えた待機で、いつ終わるかも分らないときたもんだ。
「リンさんに鍛えられてて良かったと思うな、こういう時は・・・」
野営やらなにやらとリンさんに叩き込まれたので、その辺りは割とどうとでもなる。
火が使えないのだけが難点かな。とはいえそれもさっきの調査でクリアしたも同然だけど。
勝手知ったるなんとやらという調子で調理をする事も不可能じゃない。
出来る事なら何事も無く時間が過ぎてくれることが一番なんだけどな。
「アロネスさん辺りなら、とっとと自滅してくれたら話が早い、とか言い出しそうだけど」
実際それが一番話が早くはあるから困る。遺跡から魔人が出て兵士達は全滅。
その後魔人がそれ以上暴れない様に、俺が出て魔人を討伐。
生き残った兵士にその証言をさせて、俺の正当性を認めて貰うと。
「・・・ホント今回、色々回りくどいよなぁ・・・アロネスさんじゃないけど面倒くさい」
とはいえ勝手に動いて一緒に怒られるのは嫌なので、私は素直に従うのです。
リンさんに殴られるのは御免だ。イナイに殴られるのとは話が違う。
「墓参りには行きますからね・・・アロネスさん・・・!」
まだ生きているけれど、彼の居る方向に向かって手を合わせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます