決めていた事、覚悟と苦痛。
第603話遺跡の仕事事情の変化です!
「タロウ、ブルベから指示が来たぞ」
「お、とうとう遺跡関連の仕事?」
結構な期間のんびりしていたので、いつまでのこの状態なのかと少し不安だった。
別に不安になる必要なんてないのは解っているんだけど、待機期間が長いと忘れ去られているのではなどと思ってしまって・・・。
勿論いろいろ理由が有ってこの期間があったんだろうけどさ。
「お仕事の話なら、あたし達外した方が良い?」
『いいー?』
「いや、居てくれて構わねえよ。シガルに隠すような事じゃない」
遺跡破壊の話はシガルも知っているし、ある意味シガルもハクも関係者だ。
今更隠すような事は少ないだろう。
当然クロトは当人なので動かない。というか俺の膝の上に居る。
今日はフリルが可愛いですねクロト君。ちょっとぐらい嫌がっても良いのよ。
「とりあえず国内は後回しで、友好国にある遺跡を先に処理しに行く事になる」
「あ、国内後回しなんだ」
「国内の監視なり対策なりは、出来る範囲では確実にやってるからな。他国には細々口出せねぇし、ウムルから頻繁に人を出すわけにも行かねえ。という訳で先に潰しておきたい」
成程ねぇ。でも、対策万全だとしても他国を優先するのが何となくブルベさんらしい。
とはいえ、対策の甘い所を先に潰した方が周り回って自分達も安全だし、安心だからという理由もきっと在ると思うけど。
「壊す順番は、ウムルから遠い順に壊して行く事になった。理由は解るよな?」
「あー、近ければ近い程、何か有った時の対処がとりやすいから、かな」
「ま、そういう事だ」
流石にそこまでお馬鹿じゃないつもりなのだが、色々前科があるので反論しにくい。
でもこれでも最近はマシになって来たと思いたい。
「ただ、その前に二つ程、優先で行って貰いたい遺跡があるがな」
「優先・・・んー、もしかして、遺跡見つけたけどまだ中を調べてないパターンとか?」
俺の問いに、イナイはコクンと頷いた。
成程、遺跡に入って魔人を倒して欲しいって事か
確かに魔人を倒していないなら、そっち優先して欲しいだろうな。
「もしかするとその二つが終わった後も、更に頼む可能性が出て来る」
「え、どういう事?」
「最近遺跡が見つかる頻度が増えてる。今まで捜しても見つからなかったような場所にいきなり現れたりな。それでもリガラットの一件が起きるまではそこまで問題無かったんだが・・・」
「あー、中に入っての対処が出来なくなったので困っている、と」
「そういう事だ。ただ今までを考えれば多いってだけで、無茶苦茶大量に出て来てるわけじゃねえのが救いだがな」
遺跡の機能が発動すれば、イナイ達でも死ぬ可能性が有る。
そうなったらウムルの損失は計り知れないものになるだろう。
どうしても慎重にならざるを得ない。
でも対処出来るのが俺だけって危険だと思うんだけどな。
「あれって耐える事自体は浸透仙術じゃなくても一応出来るし、気功仙術を専門に使う部隊を頑張って作った方が良いんじゃないかな」
「お前な、気軽に言ってくれるが、気功仙術はあたしが死ぬ恐怖を感じる技だぞ。さらに恐怖抑えて使っても一瞬でぶっ倒れる。そんな技使える部隊簡単に作れるかよ」
うーん、ミルカさんにボコボコにされながら必死で覚えた身としては、習得だけを考えるとそんなに難しいものかなと思っちゃう。
勿論使いこなすのは大変だけど、使える程度なら頑張ればどうにかなると思う。
俺だって最初の頃は、ちょっと使うだけで体が痙攣とかしてたし。
もしかして何か使えるようになり易い条件とか有るのかな。
俺が偶々それをクリアーしてただけなんだろうか。
ミルカさんと俺とガラバウの共通点・・・解らん。
俺とミルカさんだけなら有るんだけど、ガラバウが加わるとさっぱり解らん。
浸透仙術に関しては条件にあたりがついてはいるけど。
「でも未処理の遺跡が新たに見つかった割に、指示が遅かったね」
「つい最近ほぼ同時期に見つかったんだよ。お前を動かす為にこっちで色々やってる途中の報告だったから、予定が狂いまくってんだ。せめて発見場所が国内なら問題無かったんだがな」
「あー・・・そうなんだ、お疲れ様です」
「疲れてんのはあたしよりも、ブルベと現場の連中だけどな」
今度ブルベさんに何か差し入れでも持って行こう。
ていうか、俺自身もその現場の人達と、その内ちゃんと自分で対応しないと。
結婚の挨拶の時に顔を合わせた人の中に居たのは解ってんだけど、名前と顔が一致しない。
あの数一致させるの・・・何年かかるかな・・・。
「ミルカが元気ならとりあえず魔人を倒すだけはして貰えたんだが」
「妊婦さんに無茶はお願いできないねぇ」
「もう大分腹もでかくなってるしな」
「んじゃまあ、師匠が安心して子供を産める様にひと頑張りしますかね」
ある意味これも恩返しになるのかな。そうだと少し嬉しい。
色々与えて貰ったお返しを、意外な形で返せるようになった事は幸いだ。
頑張って期待に応えていきたい。
「ただ・・・タロウ、魔人は、見た目は普通の人間だ。そこは覚悟しておけよ」
「ん、解ってる。迷わないし躊躇しない。それに、人を手にかけるのは今回が初めてじゃない」
「・・・そうか。強くなったな、お前」
心配するイナイに大丈夫だと答えると、彼女は少し寂しそうに笑った。
安心させたくて言ったのだけど、何か間違えちゃっただろうか。
「ところでお姉ちゃん、それってあたし達も付いてって良いの?」
「むしろ対外的にはあたしにタロウが付いて来るって形だから、全然問題無いぞ」
「あ、そうなんだ。そういう体なのね」
「お前を秘密裏に動かす方向でも構やしねーが、それだと制限が増える。なら使える物は最大限に利用しねーとな。幸いあたしは領地を持たねえ上に技工士だ。理由はいくらでも作れる」
そっか、隠密行動をしないで良いっていう利点があるのか。
確かにイナイにくっついて行けば、注目されるのはイナイがメインで俺はおまけだもんな。
「それにお前とあたしが正式に婚姻を結んだ事も各国にそこそこ知れてるから、変なちょっかいを出してくる奴も滅多に居ねえだろ。むしろ以前と違って自国に引き抜けない面倒臭い相手と思われてるかもな」
「あ、それ助かる。つまり俺は目立たないで済むって事だよね」
「目立ちはするに決まってんだろ。あたしの旦那になったんだぞ、おまえ」
あ、はい、すみません。そうですよね、英雄の旦那ですもんね。
嫁さん目立ってたら必然的に、傍に居ればどうしても目につきますよね。
「そういう意味ではシガル達も同じで、少し迷惑かける事になる。変な事してくる奴が確実に居ないとは言い切れねぇし、逆にそのせいで手を出してくる奴も居るだろうしな」
「あたしは全然構わないよ」
「・・・僕も、気にしない」
『私も気にしないぞ!』
うん、ハクさん、言ったら悪いかなと思うから言わないけど、今回の事は部外者なのよ。
いやまあ、シガルにべったりだから関係者とは思われるだろうけどさ。
今回のこれは家族としての話なので、ハクとの関係とはまた違う話だ。
「それにお姉ちゃんと一緒に居て目立つのは今更だもん」
「あ、確かにそれは言えてる」
「・・・くっそ、何も言い返せねぇ」
悔しそうに項垂れるイナイを見て、シガルと二人で笑い合う。
そんな俺達を見てイナイも苦笑し、軽く溜め息を吐いて佇まいを直した。
「出発は五日後だ。宜しく頼むぜ、タロウ」
「ういっす、頼まれました」
さて、初の魔人戦か。
・・・ま、なんとかなるだろう。
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