第487話女性陣が来てる間の男性陣ですか?

 ※報告

キャラ紹介、リガラット国を更新しました。

結構なネタバレも入っていますので、いつも通りご注意の上閲覧を。

他と比べてスエリの身の上ぇ・・・。

宿の主人の奥さんはまだ本編で書いてないけど、近いうちに出ます。



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「なんで俺達が、あの馬鹿の尻拭いをしなくてはいけないのか」

「あはは~、まあまあ、こういう時に一緒になって頭を下げてあげるのが仲間ってものでしょ~」


ぶちぶちと文句を言いながら目的の場所へ歩き、その後ろを歩くニョンに宥められているスエリを眺めながら、コクコクと頷く。

スエリは真後ろでなければ見えるので、後ろに居る僕の動きも見えている。

今日はドッドが大事な事を報告をしなかったせいで、女性陣にボコボコにされていた。

久々に怒ったファルナを見た時は泣きそうだった。彼女は怒ると本当に怖い。


「不満は無いのか、フェロニヤ」


不満たらたらの声音でスエリは聞いて来るけど、僕は特に不満はない。フルフルと首を振ると、彼は舌打ちをしてずんずんと進む。

ドッドが怒られるのはいつもの事だし、僕が雑務をやるのもいつもの事だ。

ただ今回は事が事だから、不満より先に早く解決しなくちゃっていう気持ちの方が強い。


でも多分、ドッドが殴られた理由はそれだけじゃ無い。

普段もドローアが一発二発殴る事は珍しくないけど、今回は他二人が心底怒っていた。

特にビャビャの怒りようが尋常じゃ無かった。


普段はこの手の事では軽く手刀でも入れて、どこかに行く。

それが今回は思い切り怒った上に、物凄く喋った。

普段は皆が話しかけても必要な事以外は応えない彼女が、物凄く喋った。

今回は彼女達にとって、少なくともビャビャとファルナにとってよほどの理由が有ると解る。


「ニョン、問題無く済むと思うか?」

「ん~、彼の性格を考えると、半々かな~」

「・・・ボコボコにしたあいつ見せた方が効果がありそうか?」

「どうかなぁ~。あんまり関係ない気がするなぁ~」

「くそっ、バカのせいで本当に面倒くさい」


ぎちぎちと歯を鳴らしながら文句を続けるスエリ。今回ばかりは彼も本当に怒っているなぁ。

内容が内容だから仕方ないのかもしれないけど、あそこまで女性陣に怒られていたんだから、少しぐらい優しくしてあげれば良いのに。

明日はちょっと美味しい物でも作ってあげよう。美味しい肉の刺身も差し入れてあげれば喜ぶだろう。


「そういえばあのバカ、今回殴られてる間逃げなかったな」

「そりゃ~、今回はギーナ様が頭を抱えていたからね~」


ドッドは普段は怒られても、ある程度殴られるが流石に抵抗するか身を守る。

けど今回は一切の抵抗をせずにボコボコ殴られていた。

ギーナ様は腕を組んで、難しい顔をして悩んでいた。普段ならギーナ様もその辺で止めときなよって止める人だ。


「流石のあいつもギーナ様には弱いか」

「ギーナ様としては、タロウ君よりも、別の人間の反応に頭を抱えていたと思うけどね~」

「それは俺達も同じ事だろ」

「あはは~」


二人に同意する様にコクコクト頷く。

僕たちは皆、大なり小なりギーナ様に救われた人間だ。ギーナ様の為に集まった人間だ。

彼女に対して弱い人間しかいない。


僕は子供の頃から奴隷で、ギーナ様に世界を見せて貰うまでずっと奴隷だった。

だから広い世界を教えてくれた彼女の、彼らの力になりたくて出来る事は何でもやった。

彼らの身の回りの世話から、彼らの手の届かない雑務は出来る限り何でもやった。

彼らの隣に立って戦いたくて、体も鍛えた。


鍛え上げる前に戦争は終わっちゃったから並んで戦う事は無かったけど、それでも無駄になったとは思って無い。

いつか皆を守る為に、何百年先もリガラットを守る為に、ギーナ様の想いを次世代に繋ぐ為に、僕はこの力を持って国を守る。

僕は本当なら500年は生きるらしいし、きっとそれが出来る。

仲間達が皆先に死んじゃうのは、寂しいけど・・・。


「フェロニヤ~、何か変な事考えてるでしょ~。笑顔笑顔~」

「お前はいつでも笑顔過ぎるだろ」

「あはは~、楽しく生きた方が人生楽しいよ~」

「悪いがお前と違って、俺はそこまで成長できていないんだ」


考えても仕方ない未来の事で、暗い顔をしてしまったみたいだ。

他の表情はあまり表に出ないのに、暗い事を考えている時だけ顔に出てしまう。

だからってニョンみたいにいつも笑顔はどうかと思う。


「さて、いる、な」

「いるね~。多分こっちに気が付いてるね~」


とある一軒家の前で、進めていた足を止める。

今日はこの家に住む人物に話がある。


「でも出て来る気配は無いから、ノックするよ~」

「ああ、ここは任せる」

「任された~」


スエリの真剣な声にゆるく応え、玄関のドアをノックするニョン。

中にいる人物はその音に反応したというよりも、ニョンの動きに反応して玄関まで歩いて、扉を開けた。


「お~、あんた達か。何か有ったのか?」


扉から出てきたウムルの錬金術師のアロネスさんは、眠そうな顔で僕らを出迎えた。

おそらく、演技だ。


「朝早くからごめんね~、ちょっとお話があってね~」

「ふーん?」


最初から気が付いていただろうに、さも扉を開けてから気が付いたようにふるまう彼。

一切動じず話を続けるニョン。どっちも食えないなぁ。

そしてタロウさんに行われた事実を彼に伝え、ニョンが膝をついて頭を下げたので僕とスエリもそれに続く。


「客人であるアロネス様、イナイ様、そしてその護衛であり、重要人物でもあるタロウ殿に害を与えた事を、謝罪をさせて頂きに参りました」


ニョンが間延びをしていない、透き通るような声で謝罪をするが、アロネスさんは眠たそうな表情から一切動く様子がない。

汗が頬を伝う。彼はこれを理由に何かしらの無理難題を言う可能性があると、ギーナ様は言っていた。


「話は分かった。タロウの所には行ったのか? あとイナイの所」

「はい、それは勿論」

「ふーん、んで、俺のところにも、って事か」

「はい。後でこちらに本人もよこします。まずは早急に事実の報告をと」


淡々と事実を確認する彼の声音には、感情が感じられない。

何を考えているのかが解らない。中々怖い人物だ。

一緒に行動していた時の、イナイさんと一緒に居た時の彼とはかけ離れた空気を感じる。


「じゃあ、俺が何かしらの要求を突きつけるのも承知の上、ってのは理解してんな?」

「はい、出来うる限りの融通をきかせるつもりです。真っ先に我が国に手をさし伸ばしてくださった国に対し、誠意をお見せしなければ国としてはこれから立ち行きません」

「解った。そこまで言うなら、謝罪を受け入れる代わりの俺からの要求を伝える」


彼の冷たい声が通る。一体何を言われるのかと、ごくりと唾をのむのが自分で解った。

隣にいるスエリも、珍しくニョンも緊張している気がする。

いったい彼は、どんなことを要求してくるつもりだ。


「お前達はタロウがこの国にいる限り、最大限あいつをバックアップしろ」


だがその要求は、思っていた物とは明らかに予想外な物だった。

構えていたのがバカらしくなるぐらい、本当に予想外な要求。


「遺跡を破壊する間だけじゃない。あいつが今後もしこの国で生きて行こうとしたなら、あいつの後ろ盾になれ。お前達全員で全力であいつの力になれ。それが俺の要求だ」

「そ、そんな当然の事。彼は俺達にとって恩人だし、そんな事は頼まれるまでもないぞ」


キョトンとする僕達を見て、悪戯が成功したような表情で告げる彼に、スエリが思わず素で訊ねてしまう。

だが彼は笑みを崩さずにスエリの問いに答える。


「当然じゃねえよ。お前たちが身を投げ出してもあいつを守れつったんだ。お前らの事なんざ知った事か。あいつを、死ぬ気で守れ。そう言ってんだよ」

「アロネス様の要求を承知致しました。我等の身を持って、全力で彼を守る事を誓いましょう」

「おう、違えるなよ」

「ギーナ様に誓って、違えない事をお約束します」


動揺する僕らとは違い、粛々と進めていくニョン。こういう所は流石だなぁ。

僕は年だけは取っているけど、色々とダメダメだ。


「甘いね~」

「うっせ。タロウには言うなよ」

「あはは~、了解~」

「じゃあ俺はもうひと眠りするから。今日やっとゆっくり寝れるんだよ・・・」


一瞬で普段通りに戻ったニョンと、うっとおしそうに僕らを追い払って室内に戻ろうとする彼。

僕らはおとなしく退散し、未だ良く解らない気分に包まれていた。


「あの要求、彼はいったい何を考えていたんだ。タロウ君は仲間の命を救ってくれた恩人だ、あんな要求されずとも・・・」

「今後何が在ろうと、って事さ~。ウムルが現存する限り、リガラットと手を組んでいる限り、タロウ君がどうあろうと力を貸せって言われたんだよ~」

「それに何の意味がある」

「保険だよ~。僕達が本気で皆そう思ってるかは解らないじゃないか~。だから保険を掛けたのさ~」


ニョンのいう事は、理解できる。

人の思考をすべて把握なんて出来やしない。保険をかけるという事は間違っていない。

けど今回の事は、彼がそんな事を言う必要はない筈だ。彼は彼で別の事を要求すればよかった事だ。それが出来た筈だ。

それにもうこの話をしている時点で、彼に融通を聞かせる事は、当然の事だ。

それでもあえて、彼はタロウさんの身の安全を口にした。


「可愛がられてるね~、彼は~」


ニョンはニコニコしながら、微妙な気分の僕達を置いて先に進む。

ニョンぐらいになれば、僕たちも彼の言葉に納得できるのだろうか。

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