第477話念の為話しました!

「どう思う?」

「あたしは確定だと思うよ」

「うーん、話を聞いた限りじゃそうっポイが、人族とは違うからなぁ。何か他に意図がある可能性も無くはねえと思うが」


何の話かというと、先日のビャビャさんの事だ。

話そうかどうしようか悩んだけど、今後ややこしい事にならないように話しておいた。

シガルは前の宴会の時に何か訝し気な感じだったし。


結論としてはシガルは俺と同意見だが、イナイは判断するには早いと思っているみたいだ。

確かに生物としての在り方自体が違うっポイし、同じ感性で考えるのも良くないのかな。


「でも他に目的って、何が有るの?」


シガルは確定だと思っているからこその疑問を口にする。


「そうだな、例えば生物の体液を摂取するのが好きな種族とかも居てな。そういう連中は好みの味や臭いの生き物を見つけると、上手く飼いならして定期的に摂取するってのがある」


あ、そういう種族も居るんだ。

それは栄養源なのか、おやつ的な物なのかどっちなんだろ。


「となるとビャビャさんは、タロウさんを食べる為に近づいてるって事?」

「今のは例えの一つだよ。そういう種族的な何かしらの可能性も存在するってこった」


ビャビャさんに食べられるのか。

男の触手プレイって、何それ想像したくない。

いや、そういうのが好きな人も居るのかな。少なくとも俺は見たくない。


「とはいえ向こうが明確に行動を起こすまでは、お前は気にしねえで良いと思うぜ。お前自身は特に何かしらの感情を持ってるわけじゃねえんだろ?」

「まあ、今の所何も無いね。シガルの時みたいにストレートに告白されたわけでも、イナイみたいに一大決心して告白されたわけでもないし」


初めて会った時や、告白された時の彼女たちの様子を懐かしく思い出しながら、ビャビャさんに対する気持ちを口にする。

そもそも会話自体この前の宴会が初めてだし、こっちとしては声の可愛い女性だったんだという驚きのイメージしかない。


「ただもし本当にお前に惚れたって事なら・・・理由は遺跡の時だろうな」

「多分そうだよね。むしろそれ以外タロウさんに惚れる理由が見つからないよね。見た目も全然違うんだし」


種族的な美的感覚がどうなのかは知らないけど、好意を持たれた可能性のある事柄って言えば、遺跡で彼女達を助けた事しか無いだろうな。

遺跡に入る時も彼女からは一度も話しかけられていない。


「たださっき言った通り、それを理由に近づいてきたって可能性も無いわけじゃねえ。ま、どっちにしろお前の気持ち次第だけどな」

「そう、だね。タロウさんの気持ち次第だよね・・・」


イナイはあくまでビャビャさんの事は彼女が動くまでは放置の方向か。

シガルが少し、不満そうに感じるのは気のせいではない筈。


「俺は別にビャビャさんに特別な感情を持ちようが無いしなぁ。だって会話自体数回しかしてないのに。というか、女性だって知ったのがこの間の宴会でだよ。無理無理」

「だろうな。とはいえ一応気を付けとけ」

「そうだよ、あの人はちょっと気を付けた方が良いと思うよ」


俺の言葉に予想通りという表情で応えるイナイだが、シガルは真剣な顔で迫って来る。

最近あまりしなくなった、両手をぐっと握る動作をしながら、力強く注意を促してくる。


「シガルはなんでそんなに警戒してんだ?」

「だって、お姉ちゃん、あの人の行動見てたら警戒するなっていう方が無理だよ。あの人絶対自分の利点解ってやってるもん」

「あー、表情の解らなさと、あの声か。でも女なら大半そんなもんだろ」

「うー、それでもそういう駆け引きしてくる相手にタロウさんはあげない。それなら今のポヘタの王女様の方が何倍も良いよ」


知らない所で引き合いに出される王女様に合掌。

でもシガルさん、そうは言うけど俺はどうしてもあの子には恋愛感情的な物浮かばないのよ。

というか、今の俺には二人以外を恋愛対象に見ようという気が起きない。


俺の心を揺さぶる様な、思いっきり踏み込んでくるような女性でなければ、女性としての興味は一切起きない。

そもそも彼女達が、俺の懐に全力で飛び込んできた彼女たちが居るのに、俺の居場所を作ってくれた彼女達が居るのに、それ以上を俺から求める筈が無い。


「まあ、彼女と二人の間で問題がもし起こったら面倒だなって思ったから、一応話しておいただけだから。俺から彼女に接触するような事はないよ」


おそらく彼女から何かしらの接触は有る様な予感はするが、俺から行く気は無い。

もしギーナさんに誰かしらを付けられる事があっても、別の人を頼もう。

個人的にはニョンさんが一番やりやすいんだよなぁ。穏やかで話しやすくて、なおかつ不思議と頼りになる雰囲気がある。


「彼女も立場のある人間だし、ギーナの古くからの部下なんだ。そうそうめったなことはしないだろうよ。勿論、お前が何かしなけりゃな?」

「しないよ」


ニヤッと笑うイナイに、少し拗ねたように返す。

前に女遊び誘われた時だって、連れ去られたけど何もしなかったじゃないですか。

その変わり別のトラブルが有ったけど。


「んー・・・」


シガルが何か唸りながら考えこんでる。

こういう時のシガルって、少し怖い。彼女は熱くなると少し過激な所がある。

俺も人の事は言えないが、一気に攻撃的な面が表に出るので少し心配だ。


「あたし、明日ちょっと出かけて来るね」

「構わねえが、あぶねえ事はすんなよ?」

「大丈夫、ハクにはついてきて貰うから。ハク、良いよね?」

『うん、いいよー。アロネスについて回るのも満足したし』


そういえばハクはここ数日、アロネスさんについて回ってたんだったな。

あいつが見て面白い物なんてあるのかな。


「じゃあ明日はクロトも一緒に三人でのんびりするとっすか」

「・・・あ、僕ちょっとやりたい事―――」

「駄目だ。明日は付いて来い」

「・・・はい」


珍しい。クロトがやりたい事があるとはっきりイナイに言うのも珍しければ、それを有無を言わさずイナイが却下するのも珍しい。

イナイの事だから多分何か意味があるんだろうけど。


「お前もだぞ、タロウ」

「あー、えっと、うん」


んー、少しでも訓練して、どうにか現状変えたいんだけど。

まあいいか、一日ぐらい。

最近ハクにイナイ取られてたから、昼間にゆっくり二人でって無かったし。

いや、クロトも居るから三人だけど。


「グレットもお願いして良い?」

「あいよ、任せとけ」


シガルも珍しいな、こういう時はグレットとハクを連れて出ていく事が多いのに。

こんな感じで翌日の予定が決まった。

つーカミルカさん連絡来ねえけど、ほんと何時になったら来るんだ。

一応ギーナさんやイナイからは月単位で考えてるから焦らなくて良いって言われてるけど、やっぱどうしても焦る。


どうにかならないかなぁ。

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