第473話久々に釣りに行きます!

先日の訓練後、とりあえずミルカさんに連絡を取った。

するとミルカさんには、顔を合わせて話したい事があるから少しだけ待ってくれと言われた。

わざわざこっちに来るつもりらしい。


その旨をイナイやギーナさんに伝えた所、暫くこの街で訓練しつつのんびり過ごす事になった。

アロネスさんの護衛は一応今もやってる事になっているが、仕事は有ってないような状況だ。

イナイが既に国元に連絡を入れていて、今回の事は護衛の仕事を隠れ蓑に遺跡を回る形らしい。


よってアロネスさんには一応誰か一人護衛について行くことも有るけど、基本的にはこの国の護衛を付ける事になった。

ただし、あの人に対しては護衛という名の監視役だけど。

ギーナさんが堂々と「アロネスの監視役どうしよっか」と言ったので間違いない。


アロネスさん的には、なるべくギーナさんと関わらないで済むならそれも良し、という事で特に問題ない様だ。

というか、それなら俺達も別に来なくてよかったんじゃ。

結果として来てよかった事にはなるけど、実際は要らなかったよね?


そんなわけで今はアロネスさんも俺達も、別々の宿で過ごしている。

俺達が泊っている宿は、大衆浴場の有るかなり大きな宿だ。


大きい理由はこの宿が豪華とかではなく、経営者本人に有る。

巨獣族って呼ばれてる普通の人の3倍ぐらい大きい人が経営しているから、その人サイズに作られているせいだ。

店主は猪みたいな顔のおじさんで、息子さんが俺と同じぐらいの大きさで5歳だそうだ。

ただ父親の店主さんは完全に猪顔なのに対し、息子さんは表情の解るほんのり猪顔で、鼻も少し短い。子供だからなのかな?


店主さんはこの街が街になるよりもっと前に開拓に従事したそうで、そんな体に合う宿を作る事が出来たらしい。

ただしその土地確保のために、利便性は少し悪そうな町の端の方では有るのだけど。

でもお客さんは多い。店主の様に比較的体の大きい種族の人たちが好んで利用している様だ。


ただ最初は宿では無かったそうなのだけど、色々あって宿になったそうだ。

その辺の話は、おじさんが他のお客さんに呼ばれたので出来なかった。


因みに自分達で見つけたわけではなく、ギーナさんに紹介された宿です。

何やら店主と顔見知りらしい感じだった。

ギーナさん的にも居場所が解ってる方が良いと思うので、素直に紹介されたところに泊まってるわけです。


そんな感じで時間も余っているので訓練もやっているのだけど、相変わらず遺跡で使った技は使えない。

状況の問題かと思い、イナイに適当に追い詰めて貰っても無理だった。

クロトも何か色々やってるみたいなんだけど、上手くいってないみたい。


それを見ていたハクが、嬉々として「私も!」と挑んできたのは参った。

一応人型限定でやったけど、やっぱり最近竜形態になるより人型の方が強くね?

山でやった時より今の方が戦いにくい。技を身に付けてるせいで躱されるし避けられない。

最近は竜の状態でやってないから実際は成竜になったほうが強いのかもしれないけど、それでも初めてやった時より今の人型形態の方が強い。


そして成果はゼロでした。どんだけ追い詰められても使えなかった。

魔術の方は相変わらず集中すると感覚変わるんだけどなぁ。


そんなこんなで数日うだうだやっていると、ある日羊の人が尋ねて来た。

何の用かと首を傾げていると、釣りに誘いに来たそうだ。


「タロウ君が釣り好きだってシガルちゃんに聞いてさ~、俺の周り付き合ってくれる人いないから良かったらと思って~」


という事らしい。いつの間にそんな話してたのシガルさん。

折角のお誘いだし、本当に久々の釣りなので即頷いてついて行く事にした。

現地の人について行った方が、釣りやすい所とか有ると思うし。


釣りに行くメンバーは俺とクロトとシガルになった。

ハクは何故かアロネスさんの仕事が気になったらしく、彼について行った。

イナイ先生が引率でついて行ってしまったので、彼女も居ません。

最初は俺もそっち行くつもりだったんだけど、釣りでうずうずしてる様を見て呆れたように「良いから釣りに行って来い」と言われました。

あ、グレット君はこっち側だよ。


「大きい子だねぇ~」


と、笑顔でグレットを撫でる羊の人の姿は、何だか見てるだけで周囲の空気が緩むようだった。

セルエスさんじゃ、こうはいかないな!

絶対本人には言えないけどな!


「じゃあ行こうか~」


家から持ってきたらしい複数の釣り竿と籠を背負い、のんびりと出発を促す羊の人。

街から少し離れた所に、釣りに向いた良い川が有るらしい。

なのでそこまではグレットに乗って移動する事になった。


移動の間に今更ながら羊の人に自己紹介をしてもらい、名前を教えて貰った。

本当に今更だけど、向こうは俺の名前知ってても俺は知らないんだよな。

彼の名前はニョンという名前で、羊の見た目で解りにくいけど、歳は50近いらしい。

めっちゃ年上だった。


「仲間の皆も気にしてないし、年とか気にしなくて良いよぉ~?」


と彼はいうが、やっぱこう最低限の礼儀は要るよね。

それに街を出る時の彼に対する住人の反応とか、街の警備の人達の反応を見る限り、結構偉い人な感じがするんだよな。

門番さん達は凄い緊張した感じで彼に対応してたし。

その事を聞いても「皆大げさなんだよねぇ~」と言われるだけで詳しい事は話してくれなかった。


まあ、ちょっと興味があって聞いただけなので、問い詰めるような事でも無いし別に良いや。

それよりも久々の釣りの方が楽しみだ。

テンション上がってシガルにクスクス笑われようと知った事かね。

本当に久々なんだもん。しょうがないじゃないか。


早く着かないかな。ほらグレット君頑張れ。

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