第472話仙術?の訓練です
遺跡の破壊を頼まれてから5日ほど経って、やっとまともに動けるようになった。
まだ痛みは残っているけど、少し痛いだけなので問題ない。
筋肉痛よりちょっと痛い位の感覚だ。
今日はとりあえず病み上がりの訓練という事で、軽ーく済ませるつもりで街の外に来ている。
街中でやらない理由は単純明快。
周囲に被害を出さないためだ。
イナイ達も一緒に来てるけど、彼女達は少し離れた所で訓練してる。
見える範囲には居るけど、俺の訓練の被害にあわないように離れて貰ってる。
「さて、やりますか」
とりあえず遺跡の破壊を引き受けた以上、破壊できる技術を使えないと意味が無い。
その為に遺跡で使った、周囲の生命力の再利用の訓練を始める。
これが使えないと、俺の力では話にならない。
「・・・うん、えーと」
始めたいんだ。始めようと思ってるんだ。
けどね、どうやったんだろう、あの時。
おかしいな、あの時は特に疑問にも思わず自然に出来たのに、やり方が解らない。
「もしかして、あれもクロトと繋がってたから出来たのか?」
ありえる。
おい、それじゃ俺は要らない子じゃないか。
いや、クロトが遺跡に入ると問題あるから俺自身も必要なんだろうけど。
「えっと、ちょっと落ち着け。あの時は周囲に有る物全てから力を引き抜いてたよな」
段々うろ覚えになっている遺跡での力の使い方を絞り出すように口に出し、周囲から手元に力を集めるイメージで仙術のコントロールをしてみようとする。
うん、自分の気功が手元に集まった。
何やってんだ俺。
「あれ、マジで使えないんじゃないのかこれ」
いや、クロトがミルカさんの事を言っていた以上、仙術なのは間違いないんだ。
だったら俺にも使える筈なんだ。実際使ってたんだし。
「物に触れてやってみるか」
その辺の木に手を触れて、木に流れる気功の流れを感じる。
うん、ちゃんと流れは見えるし解る。
ならこれをそのまま手元に持ってくれば・・・。
「あ」
俺が触れている所に異常に集中した気功が発生し、ただ消えていった。
そして同時についさっきまでちゃんと葉が沢山ついていた木がゆっくりと枯れ木となり、そのままボロボロになって崩れていった。
しかもその操作の為に、自分の力使って消耗してる。
「・・・ただ木が気功を死ぬまで使っただけで終わってしまった」
俺の手元に力が入ったわけでも、木から何かが放たれたわけでもなく、ただただ命を浪費して終わらせてしまった。
これ、皆を離しておいて正解だったかもしれない。
もしこれが人間相手だったら目も当てられない。
「もしかして、あの力って仙術じゃないのか?」
いやでもそれだったら俺が使えた理由が解らない。
あの力は間違いなく、俺が自分の意志で使ってコントロールしていた。
黒は自分で使ってる感覚は無かったけど、こっちは多分俺の使える物の筈だ。
ならなんで使えないんだろう。
やること自体は基本的に仙術と変わらない筈だ。
ただそれが、自分の中か周囲の力かってだけで。
仙術と似た力だけど仙術じゃないとか、そんなオチだろうか。
もし仙術の発展形だとしたら、基礎自体は使えるからクロトの記憶を元に一時的に使えたとかそんな話?
「ミルカさんに聞いてみた方が良いかな」
クロトはミルカさんが使えるっていう感じの事は言っていたからなぁ。
ただ気になるのは、使えるならなぜ教えて貰えなかったのかという事だ。
あの人の性格上、教える気が有るなら最初から教えてる気がする。
「仙術自体は変わらず使えるんだけどなぁ」
気功を軽く指に纏い、デコピンの要領で地面に向けて放つ。
遠く離れた小石がその衝撃で跳ね飛んで行った。
うん、ちゃんと使えてる。
「仙術は生命力を気功という力に変えて・・・あ」
そうか、気功自体は元々一定で体に流れてる。そしてその力にプラスしたり、強めたりするための糧が生命力なんだ。
既に別の力になってる物を吸い込んだ所で、自分の力には出来ないって事かな。
「なんか融通が利かないな」
結局元は同じ力なんだから使えても良いじゃないか。
まあ、愚痴を言っても使えるわけじゃないので、使える様に頭を捻らないといけない。
そもそもそういえばあの時『気功の力』じゃなくて『命の力そのもの』が見えていた気がする。
そう考えると、まず今見えてる物じゃダメなのかもしれない。
今の俺にはあの時見えていたのであろう、生命力自体は見えない。
これ、単純に仙術じゃない可能性が大きくなってきたな。
うーん、やっぱり一度ミルカさんに素直に聞いてみよう。
下手に一人で悶々としてるより、そっちの方が良い。
今回は出来ませんでした―じゃ、少し問題ある話だし。
イナイにミルカさんの都合が大丈夫か聞いてみて、腕輪で聞いてみよう。
そうと決まれば今日の訓練は普通に流すか。
クロトとの同調もなるべく早く出来る様になりたいけど、これはクロトが頑張らないと駄目みたいだし。
あの子も色々試してるみたいだし、こっちからせっつくのはちょっとね。
ただ一つ懸念があるとすれば、ミルカさんはこの技を教えてくれなかった事に理由が有るなら、聞いても教えてくれるか怪しいって事だなぁ。
まあ、今悩んでも仕方ない。断られたらその時は自力でどうにかしよう。
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