第465話探索開始です!
翌朝にギーナさんから配下との顔合わせは家でやると告げられ、朝食をとったら少しの間のんびり待つことになった。
昨日のうちに連絡は入れてるそうで、準備が出来たら家に来るらしい。
なので、昨日と変わらず精霊さん達は各々自由に過ごしている。
因みに一部の精霊さんは部屋で寝ずに庭で寝ていた。
いや、正確には寝て無いな。夜を外で過ごしたが正しいか。
単純に精霊さん達は寝る必要が無いので、わざと寝ようと思わない限り睡眠はしないらしい。
土精霊さんとか木精霊さんとかは家の中より外の方が良いらしく、他の精霊さんもじっとしてられない人は外に出ていた。
本精霊さんなんかは窓辺に座ってずっと本を読んでたけど。
あの人の持ってる本、昨日と表紙が変わってる気がするんだけど気のせいかな。
そんな中、水精霊さんは魔術のかかった縄に拘束されて庭に転がっていた。
見た瞬間「なんだこのふざけた魔力量」って思う程の魔術で驚いた。
それは単に彼女を縛っているだけじゃなくて、縄を媒体に解り易く「動けなくなる」という魔術をかけている感じだったので、精霊として不定形になって逃げる事も出来なかったそうだ。
何故そんな事になっているのかを聞くと、ギーナさんにやられたと彼女は言った。
実は光精霊さんと水精霊さんはアロネスさんのベッドに潜り込んで、叩き出された後俺の方に来て、今度はイナイとシガルに威嚇されて出て行った。
それで光精霊さんは諦めて他の精霊さんの所に行ったみたいだけど、水精霊さんはギーナさんの所にまで行ったそうだ。
つまりギーナさんの寝込みを襲って返り討ちにあって、しかも消滅寸前の状態で縛られて庭に投げ捨てられたという事でした。
流石にアロネスさんが「お前本当に馬鹿じゃねえの?」って言ってた。
それでも水精霊さんは諦めてないっぽかったので、あの人本当にやばいと思う。
チーム分けで一緒にならない様に、ギーナさんに頼んでおこう。
その後さして待たずにこの家に誰かがやって来たのを感じた。多分この人達がギーナさんの配下だろう。
そして予想通りその人達は使用人さんに案内され、皆が集まっている客間に入ってギーナさんに頭を下げた。膝ついたりはしないんだな。
ギーナさんと同じような尻尾を持つ女性を先頭に、羊っぽい人と虫っぽい人、街の入り口で見たリザードマンみたいな人や、土の精霊さんの様に岩か土の様な肌の人が立っている。
触手が絡まって人型取ってる様な人もいる。全身がぶにっとしてる感じで、目や口は普通に他の人と似た様な位置にあるっぽく、口回りには小さな触手がうごめいてる。
男女の区別はつかないな・・・。
逆に人族にしか見えない人も居るな。もしかしたら人族なのかもしれないけど。
ギーナさんは彼女達に笑顔で手を振って、それを確認した彼女達は皆こちらに振り向いた。
こちらっていうか、イナイとアロネスさんにかな。ちらっと俺も見られたけど。
そして彼女たちは皆一斉に、膝をついて頭を下げた。
あれ、ギーナさんには軽く頭下げただけなのに、二人には膝をつくんだ。
「皆を代表してご挨拶を申し上げさせて頂きます。
私はリガラット共和国盟主補佐、レイファルナと申します。私共は戦闘では皆様の足手まといになると思いますが、よろしくお願い致します」
ありゃ、補佐さんが一緒に来るんだ。補佐だから来るのは普通なのかな?
いや、残って盟主の代わりに他の仕事もするよな、補佐だったら。
遺跡がらみだから、それを話して大丈夫な面子をって事なのかね。
「王国式の礼で挨拶をして下さった貴方達の気遣いに尊敬と感謝を。どうぞお立ち下さい」
イナイは優しく笑い、彼女達が立ち上がったのを見てゆっくりと頭を下げた。
成程、自国の盟主には自国の挨拶を、他国の人間には敬意を払ってその国の挨拶をって事か。
アロネスさんも今日ばかりはふざけた様子はなく、イケメンぶりを発揮して静かに頭を下げる。
この人こういう時はかっこいいから狡い。
勿論俺とシガルも頭を下げ、クロトも真似をして頭を下げる。
精霊さん達は物精霊の人達は軽く頭を下げてるけど、自然精霊さん達は特に頭を下げる様子は無かった。
「さて、一応ここに集まっている人間は皆遺跡の事は知っているし、洩らさないと断言できる人間だけしかいないから気軽に行きましょ。遺跡が在った事だけなら洩らしても問題無いけどね」
皆が挨拶を済ませたのを確認すると、ギーナさんが予定通りチーム分けを始める。
俺はクロトと火精霊さん、さっき紹介されたレイファルナさんの4人で動く事になった。
他も基本4人チームで、ウムル3人にリガラット1人という感じのチーム分けになっている。
グレットは自動的にシガルチームです。一人分とはカウントされてないよ。
シガルはハクと本精霊さん、そして触手さんの4人の組み合わせだった。
別行動はちょっと不安だけど、アロネスさんが言うには本精霊さんはかなり強いらしいので大丈夫かな。
単独の方が広い範囲を調べられはするけど、何か有った時の為の4人チームだそうだ。
トラブルはいつ起こるか解らないし、起こったときに一人は危険だからと。
まあ、そりゃ当然よね。ちゃんとした国のお仕事だし、安全第一よね。
ただし、アロネスさんのいるチームにはギーナさんが加わるそうで5人チームです。
どうやら前日の時点でイナイと打ち合わせて決定になっていたらしく、アロネスさんの意志は完全に無視されました。
一緒に行く精霊さんを間に挟んで歩いている様は、とても情けなかったです。はい。
山までは皆でわざと目立つように一緒に向かい、道中この面子が調査員なんだという事をアピールしつつ、街の人に笑顔で手を振って歩くギーナさん。
大人(っぽく見える)人達は半ば拝むようにギーナさんに頭を下げて挨拶をし、子供達は笑顔で手を振っている。
「大人気ですね」
「あはは、私としては子供達ぐらいの気安さが一番良いんだけどね」
どうやらギーナさん的には、英雄扱いは余りお好みじゃないみたいだ。
話したら解るけど、この人普通に明るいお姉さんだからなぁ。
あんまりかたっ苦しいのは好きじゃ無いんだろうな。
そしてそのまま街を出て、山の麓で事前に決めたチームに分かれて散開し、周囲をきょろきょろ見ながら歩いて回る。
ただクロトが普通に歩くと時間がかかるので、肩車をしています。
ほのかに楽しそうな気配を感じるのは気のせいでは無い気がする。
そんな俺達を見てレイファルナさんはクスリと優しい笑顔で笑い、和やかな笑顔のまま周囲を警戒しつつ探索をしていた。
火精霊さんは劇の話をしていた時の表情や雰囲気は一切なく、何処か冷たさを感じる程静かな表情で周囲を見ている。火なのに冷たそうだ。
その後ちまちま休憩を挟みつつ昼まで探索を続けるが、特にめぼしいものは見つからなかったので、一旦本格的に休憩にして昼食にする事にした。
火精霊さんは食べなくても平気らしいけど、何となく一人だけ食べていないのは気になったので声をかけてみようかね。
「精霊って食事をとれないわけじゃ無いんですよね?」
『バーナウブエールが菓子をバリボリ食べてたでしょ。私も食べれるわよ』
「じゃあ、良ければ一緒に食べませんか?」
『誘ってくれるならご一緒するけど、それじゃ貴方達の分が減るわよ?』
「ええ、一緒に食べましょう」
彼女は俺の誘いに静かな目のまま口元だけで笑い、俺達と一緒に食事をとった。
ただ食べ始める前は変わらず静かな美人さんだったんだけど、食べ始めると破顔して、髪も時々燃えるようにうごめいていた。
美味しそうに「ん~」と言いながら目を瞑って手をバタバタ動かす様は、何というか可愛らしかった。
『御馳走様。美味しかったわ。ありがとう』
食べ終わるとまたクールな表情に戻り、また口元だけで笑顔を作ってそう言った。
この人面白いな。
レイファルナさんも楽しそうにクスクスと笑っていたので、和やかな昼食だった。
クロト君は俺の膝の上でどこか満足そうにしています。
未だにそんな気がするレベルでしか解らないけど、満足そうです。
昼食を終えて探索を再開しようとしたところで、アロネスさんから腕輪に連絡が入った。
どうやら遺跡が見つかったらしい。
『とりあえず全員集合な。ただ、まだ日も高いし焦ってこなくて良いからな』
「解りました。でもなるべく早めに向かいます」
通話を聞いていた他の面子も俺の言葉に否は無かった様で、急ぎ過ぎない程度に走っていく事になった。
そこで判ったけどレイファルナさんめっちゃ速い。俺の2重強化に余裕でついて来る。
戦闘で役に立たないとか大嘘じゃないですか。
火精霊さんも当たり前のようについて来てる。というか、彼女空飛んでる。
風精霊さんと光精霊さんだけが飛べるのかと思ってたら、精霊は基本飛べるそうです。
騙された。いや、騙したわけじゃないだろうけど。
さて、遺跡に危険が無いと良いけど、どうなるかね。
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