第449話ついてく理由です!
「アロネス、あたしらがいつも飲んでる茶で構わねーよな?」
「何でも良いぞー」
「あ、お姉ちゃん手伝うよ」
「おう」
あの後言うと言った物のやはり言いにくそうにしたアロネスさんを見て、イナイがとりあえず一度部屋に戻って話そうと提案した。
こそっとイナイが言ってきたけど、移動の時間で心の整理をつけさせようというつもりらしい。
アロネスさんがあそこまで言い渋るって相当な事だと思うと、俺としてはとても不安なんだよなぁ。
この人の全力ってちゃんと見た事無いけど、イナイ達に並ぶ一人だし強いのは間違いない。
そんな人が護衛って時点で、とんでもない所に行くのか、もしくはアロネスさんの体調が何か悪いのかどちらかとしか思えない。
「アロネスさん、本当に体調は問題無いんですよね」
「ああ、何にも問題ねえよ。健康そのものだ。だいたい俺は薬師だぞ?」
「そりゃそうですけど・・・」
片眉を上げながらそんな反論をされても、さっきの言動の理由を教えて貰えないと心配は消えない。
そんな俺の視線に気が付いたのか、少し困ったような表情を向けてきた。
「・・・イナイが戻ってきたらちゃんと話すよ。時間もくれたしな」
天井を仰ぎながら静かに口にするアロネスさん。
そうか、さっきのイナイの行動は言わなくても通じているのか。
やっぱり付き合い長いと意思疎通が良いなぁ。
・・・ちょっと嫉妬心とか芽生えて無いですよ?
「そういやハク、今更だが大丈夫なのか?」
唐突に、アロネスさんはハクに向かって要領の得ない質問を投げる。
ハクも何の事かと首を傾げた。
「ああ、いや、前に言ってたろ。竜は山からあまり遠くまでは離れられないって」
『私は大丈夫だぞ。こんな物に負けるつもりは無いからな』
「やっぱ完全に平気ってわけじゃねえのか」
『そうだな。でも山に戻りたいと思う程じゃない。この程度どうということはないよ』
俺もその辺少し気にはなっていたんだよな。
ハクが何も言いださないし、普段通りだから言わない様にしてたけど。
因みに今のハクさんは子竜モードです。
そういえばハクって100歳でこのサイズだけど、何年ぐらいで成竜になるのかね?
「入ったぞー。ハク用に別の分も有るけど、どうする?」
『同じの飲む!』
「あいよ」
どうやらお茶が入ったらしく、ポットとカップをトレーに載せて持ってきた。
後ろにはシガルがお茶菓子を抱えている。
ハクに聞いた理由は、ハクが苦手なお茶だからだろう。
全員分にカップをいきわたらせてから自分の分を入れ、席に座るイナイ。
「で、もう良いか?」
イナイは座るなり一口お茶を飲むと、端的に口にした。
視線は言わずもがな、アロネスさんに向いている。
「ああ、悪いな。時間貰って」
「別に構わねえよ」
苦笑しながら言うアロネスさんに、特になんてことは無いなと返すイナイ。
こういう時、二人の関係が良く見えるよなぁ。
「そうだな、まずは今回の仕事は、タロウがどういう仕事を受けたのかをイナイに聞いていたから、ブルベに俺から頼みに行ったんだ」
「お前が頼みに行ったのか。ブルベの指示じゃ無いんだな?」
「ああ。俺がどうしても誰かについて来てほしかったんだ」
「何でタロウなんだ?」
「理由は二つ。まず一つはイナイがいるという事」
ああ、やっぱり俺じゃなくて本命はイナイか。
そりゃそうよな。護衛してくれつってんのに、自分より弱い相手連れてかねーよな。
「さっき言ってた理由は、もしかして本気か」
「ああ、本気の話だ。そして今そんな事を頼める人間はイナイしかいないんだ。リンは暫く王妃様やってねーと駄目だし、同じく暫くミルカはリンの護衛の仕事が多い。どれだけ強くても立場的な物が有るからな。
ロウもブルベが行かねーなら国内から離れる気なんて一切ねーし、セルはなんだかんだ王族だからつれてくのは色々と面倒だ。セル自身に現地で仕事が有るなら別だがな。
脳筋はつれてっても邪魔なだけだし、グルドはもうどっかいったしな。選択肢が無い」
「・・・なるほどな、それであたし、か」
アロネスさんの言葉を聞いて、納得した様に呟くイナイ。
一口お茶を飲むと、ため息を吐いてまた口を開く。
「んで、もう一つの理由はなんだ?」
「それはタロウが理由だな。イナイとタロウ二人がいるならかなり好都合なんだよ」
「俺とイナイですか?」
「ああ。俺が行かなきゃいけない所には、二人がいると心強い。何よりタロウが居れば色々と手伝いも頼めるしな」
あ、なるほど、俺は戦力は戦力でも、助手としての戦力っすか。
いやまあ、別に構わないけど。
てことは資源探しとか、薬剤探しとか、そういう事になるのかな?
「・・・おい、アロネス、お前もしかして」
ん、イナイが物凄いジト目でアロネスさんを見ている。
声音がものすごい呆れが入った声音なんだけど、どうしたんだろ。
「あー、やっぱイナイは気が付いたか」
「お前、この為に先延ばしにしてたのか」
「いや、イナイから頼まれてた事も有ったしさ。ほら、仲間の頼みは優先するべきだろ?」
「お前に頼んだ事は、もうとっくに終わってた筈だけどな」
「本業を暫く離れなきゃいけねーから、その準備も有ったしさ?」
「へー、ふーん」
慌てて言い訳の様に喋るアロネスさんと、呆れたように話半分に流しているイナイ。
イナイは何か知ってるみたいだな。アロネスさんが元々やる筈だった仕事とかの話なのかな?
「あのー、結局何しに行くんですか?」
とりあえず行く理由というか、なんで俺とイナイがいるのかは解ったけど、その内容をまだ聞いて無い。
「・・・リガラット共和国に技術支援」
アロネスさんは一瞬言葉に詰まった様子を見せるが、観念したようにそう口にする。
リガラットって、ギーナさんの国だよね?
「え、リガラットってギーナさんの国じゃ。何で護衛なんか?」
「いや、その、な」
また口にするのを躊躇うアロネスを見て、深くため息を吐いてからイナイが驚く内容を口にした。
「こいつはギーナが怖いんだよ」
「うっ。ああそうだよ、あいつが怖いから付いて来てほしいんだよ」
・・・・・・・は?
え、ギーナさんが怖い? え、何言ってんのこの人。
「え、ちょ、え? アロネスさん大丈夫ですか?」
「らしくねえ事ぐらい解ってるよ! でもダメなんだよ! ほんとあいつ怖いんだって!
全力で戦力全面展開したのになす術なく壊滅させられたんだぞ!? 精霊も義体も罠も何にも通用しやがらなかった! あんな奴に一人で近づきたくねえ!」
俺が意味が解らないと疑問を投げると、まくしたてる様にアロネスさんが叫んだ。
言い切った後にはぁーはぁーと肩で息をする様は、今まで見た事無い彼の姿だ。
俺とシガル、ハクもその様子に驚いている。イナイは動じた様子無くお茶を口にする。
クロト君は最初から最後まで微動だにしてません。
「はぁー・・・そういう訳で、とりあえずついて来てほしかったんだよ。一応表面上誤魔化せっけど、怖いもんは怖いんだよ」
「それでイナイですか」
「タロウもギーナの友人だって聞いてるからな。少しでも意識を他に向けさせて、俺から遠ざけようと思ってた」
「なるほど」
頭をぼりぼりかきながら、恥ずかしそうに言うアロネスさんの姿を見て納得した。
つまりは、ギーナさんが怖いという事を言いたくなかったと。
でもイナイの様子から察するに、イナイは知ってたんだろうな。
「別に顔見て、逃げ出すほど怖いってわけじゃねえけどな。けど、相対すると解るんだよ。恐怖が奥底に植え付けられてんのが。手が震えて来るんだよ。そうなると仕事になんねーんだよ」
「ちょっと意外です。アロネスさんそういう事とは無縁だと思ってました」
「俺もこうなるまではそう思ってたよ」
深くため息を付くアロネスさん。
リンさんやセルエスさんが怖いとは、また違う意味の怖いなんだろうな。
「そういう訳で、お前らに俺の護衛という形で頼みたい。一応お前らが頼まれた仕事の範疇だしな。あの国はいまだ未開の地が有るみたいだし、そこの探索も含まれてる」
「了解です。すぐに出発ですか?」
「いや、まだもう少し準備はするから、三日後に頼む」
「わかりました」
三日後か。
荷物の準備は既に終わってるし、出発まではのんびり過ごすかね。
しかし、アロネスさんがこんなに怖がるのは本当に意外だった。珍しい物見たなぁ・・・。
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