第445話一応仕上がりました!
「・・・お前さぁ」
呆れた声音で、ため息交じりな言葉を俺に投げかけるイナイ。
シガルはその隣で心配そうにしている。
クロトも少し不安そうな顔だ。ハクは欠伸して寝転がってるけど。
「あ、あはは」
イナイさんが呆れてる理由は単純明快。
切り札に成り得る魔術の内容を聞いたからだ。
そして私、魔術を使った反動で倒れ、ベッドに転がっております。
いつかの再現の様に体が上手く動きませぬ。そして体中痛いでござる。
でも前に寝込んだ時ほどの痛みも脱力感も無いから、あそこまで重傷じゃないけどね。
「原因は解ってんのか?」
「それは勿論。それに一日安静にしてれば多分問題ないよ」
今この状態になっている原因は解ってる。
この体が負荷に耐えられなかったっていう、単純明快な理由だ。
「なら良いが、あんま心配させんなよ」
「出先でそうならないために、安全なところで確かめときたくてさ」
2乗強化の訓練を始めてからもうひと月たった。
イナイはどうやらもう外装製作は終わったらしく、城に戻っている。
シガルもハクとの訓練を終えたらしく、毎日訓練はしているが最初の頃の様な疲れ切った状態で帰ってくる事は無くなった。
そんな中、俺はやっと切り札になる魔術を使用できる段階まで持っていけている状態だった。
このまま使えずに出るのは危険だと思い、リスクは承知の上で魔術を使用。
結果がご覧のありさまだ。
一応使用自体は出来たんだけど、反動でぶっ倒れた。
「兵士さんが発見してくれて良かったね。もし偶々見に来てくれなかったらタロウさんいつまであそこで倒れてたのかわかんないよ?」
「あー、発見者兵士さんだったのか。気が付いたらベッドの上だったから、イナイかシガルが見つけてくれたのかと思ってた」
切り札の魔術の実験をした時、物の数十秒で使用限界を感じ、魔術を切って全ての制御を手放し地面に崩れ落ちた。
何より参ったのは、仙術の制御は自分の意思で手放したわけじゃ無くて制御できなかった事だ。
倒れる事に抵抗できず、そのまま意識を失った。
多分その後しばらくして発見されたんだろう。あんまり人のいない所でやってたから見つけられたのは幸運だ。
「使いこなせそうなのか?」
そう聞いて来るイナイは真剣な表情になっていた。
さっきまでの呆れを含んだ心配な表情ではなく、真面目な顔。
多分、出発できるのかと聞かれているんだろう。
起きた時にどんな魔術を使おうとしたのかを伝えているからこその問い。
けど、使ったからこそ解る。あの魔術を反動無しで使うのは、おそらく無理だ。
「・・・この反動無くすのは無理だと思う。だから本当に最後の最後の切り札かな」
「良いんだな?」
「うん、前に見せた物は使えるようにはなったし、これは本当にどうしようもなくなった時にしか使わないつもりだから。もう、いけるよ」
最後の最後の本当の切り札。
後の事を考えない、本当に一瞬で勝負を決めるための切り札。
多分これを使ってもリンさん達には勝てないと思うけど、殆どの相手は下せる筈だ。
むしろこれ使って勝てなければ、もはや俺にはどうしようもない。そんな魔術だ。
この反動は、享受するしか無い。
「解った、じゃあもう出発できる予定で話は詰めとくからな」
「あーい。決まったら教えてね」
「おう」
・・・正直、使いこなせてるなんて口が裂けても言えない物だけど、使えるようにはなった。
後は使いどころさえ間違えなければ、問題ない。
「・・・出る前に、あの人にだけは見せておかないとな」
あの人には、あの人にだけは、今の俺を見せてから出ないとな。
イナイには呆れられそうだけど、やっとかないといけない。
また倒れるだろうから、一日なくなるつもりでいないとな。
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