第440話出発までのそれぞれの行動です!

「そう言えばお前ら、未開地探索の話受けんのか? あたしに伝えろって言われてただろ」


皆で夕食をしながら雑談をしていると、イナイが思い出したように以前ブルベさんに言われたことを言い出した。

やっぱりイナイは事前に連絡を受けてたのか。


「一応俺は受けようかなとは思ってる」

「あたしはタロウさんが受けるなら一緒に行くよ」

『私はシガルについてくよ』

「・・・僕はお父さんとお母さん達について行くだけ」


以前これに関しては相談はしたので、そのままの結論をイナイに伝える。

結論を伝える前にバルフさんとの一戦をやって、さらに暫く寝込んでいたので話しそびれていた。


「そうか、なら後で伝えておく」


ああやっぱりそういう事かな。

てことはもしかしたら、ブルベさんがイナイと話したいって言ってた事は、この事だったんじゃないだろうか。


「ただちょっと、出来れば出発はあと10日・・・いや7日で良いから待ってほしいかな」

「ん、どうしてだ?」

「新しい強化魔術の反動の正確な確認と、限度の確認。あと、もう一つ試したい事が有るから」

「・・・成程、しばらく動けなくなった場合も込み、か。解った任せとけ」

「ごめんね、ありがとう」


ブルベさんが提案してくれた事自体いい条件なのに、さらに甘える事言ってるから怒られるかと思ったけど、素直に許してくれたな。

道中で無茶されて倒れられるより良いと思ったのかもしれない。


「タロウさん、新しい強化魔術ってなに? また何か違う魔術見つけたの?」


実験時に居なかったシガルが、不思議そうに聞いて来る。

彼女は元々魔術が専門だし、気になるのは当然だろうな。


「ちょっと新しい使い方を試してね。上手く行ったんだけど、実戦レベルじゃなくてさ。ちょっとぐらいは使えるようにしておきたいんだ」

「それ、あたしにも使える?」

「・・・あー、いや、出来るかもしれないけど、今は無理かなぁ」

「なんで? やっぱり魔術の形態自体が違うの?」


仙術使えないと、多分無理だと思う。

シガルは魔術の技量はけして低くないけど、イナイに無理な制御が出来るとは思えない。


「まあ、気になるなら明日見せてあげるから」

「うん、約束だよ?」


ちょっと不満そうにしながらも、俺の言葉に頷くシガル。

シガルには説明するよりも、多分見せた方が早い。

彼女も俺と同じものが見えてるんだし、仙術が使えないと明らかにおかしいって事は気が付いてくれるだろう。


『・・・シガルは今より強い強化魔術使いたいのか?』

「うーん、強化だけじゃなくて、もうちょっと魔術自体上手くなりたいかな?」

『・・・じゃあ明日タロウの魔術見せて貰ったら私に付き合わないか?』

「え、うん、別に良いいけど、どうしたの?」

『今のシガルに必要な物を教えてあげる』

「?」


ハクにしては珍しく言葉を濁すな。シガルに今必要な物って何だろ。

まあ、別に良いか。シガルに教えるって事は、そのうち見れるだろうし。

俺は俺で2乗強化を使えるようにしないと話にならない。


何より、その更に先を考えている魔術を使えるようになるためには、使いこなせないとその魔術は使う事すらできない。

もっと技量が上がれば使わなくても済むかもしれない。けど、今の俺には習得しないといけない魔術だ。

俺はまだ研鑽が足りてない。なら身体能力で勝れないと勝てない相手は沢山出てくるはずだ。


「まあ、それぞれやる事が有るみたいだし、暫くは此処に居られるようにしておく。あたしも作業途中放棄してるからな」

「そう言えば何してたの?」

「あー、新しい外装をちょっとな。一部の連中には伝えてるけど、いざという時しか使う気のない物だから内緒だぜ?」

「・・・前に見たのより強いやつって事?」

「そうだな」


あのー、前の外装ですらどうあがいても何も通用しないと思うのに、それより強いのとか何それ怖い。

つーかそれ、もしかしてリンさんに勝てちゃうんじゃね?

前の外装で引き分けてたわけだし。


「そこも含めて後で色々と相談しておく。それに向こうの都合も有るから、出発自体はそもそも日程不明と思っておいた方が良い。まあ少なくとも2か月以内だろうがな」

「あいあい、了解」

「はーい」

『解ったー』

「・・・はーい」


2か月か。まあ最長で2か月って事だろうから、そこまで長くは居られないだろう。とりあえずイナイの外装が出来上がるまで、かな。

先ずはそれまでに2乗強化を使いこなす事と、反動をどうにか抑える術を見つけるか、せめて反動を少なくする事。

まあ最悪反動はどうにか出来なくても仙術で動ける程度なら良いかな。


そして最終的には、目的の魔術を使えるようにしておく事。

これは外せない。これが使えるか否かで、今とは全く違う切り札になる。

これは本当の切り札だ。

本当に切るしかない時にしか使えない代わりに、切れば相手は対応できない奴が殆どだろう。

ただし、今はその案だけで使えないわけだけど。


さて、何処まで実用可能に近づけられるかな・・・。

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