第399話アロネスさんもしたかったみたいです!

「では今日は、抜き打ちテストを行う!」


テンションが微妙に高そうなアロネスさんに、眠たい目で不満を隠さず見つめる。

だが一切を気にせず、彼は話を進める。

俺は昨日寝てないのにつれて来られたので、とても眠い。

話など半分も頭に入っていない。ていうか寝たい。


「お前が精霊石やら、精錬石やらを簡単に作れるのは解ってるが、細かい作業の分はちゃんとやらないと腕が鈍るからな」


俺が一切動かないのも気にせず、アロネスさんは機器を準備して行き、材料を並べていく。テンションの高さがイラッとする。

寝不足も相まって、普段とは違い、かなり不機嫌な自分が居るのを自覚する。

いつもならイラッとしない細かな事に、物凄いイラッとする。


「アロネスさん、俺、寝てないんですけど」

「うん、知ってる」


フツーに応えて来たよ。知ってる、この人こういう人だよ。


「俺、寝たいんですけど」

「終わったら寝て良いぞ?」


流石に怒って良いよね。これは流石に怒って良いよね。


「帰ります」


結局昨日は徹夜で研ぎまでやった。出来上がった物は見本として置いておきたいと言われたので、アルネさんに渡して部屋に戻った。

そしたら何故かアロネスさんが居て、説明無しで連れ去られた。

んで、今この状況だ。俺じゃなくても普通怒るだろ。


「まった、まった。眠って無くてイラついてるのは解るけど、俺明日には出ねえといけねーんだよ。今日しか時間無いんだよ」

「・・・あー、そういうの先に言って下さいよ」


この人、こういう説明抜いて喋り出すから、イナイに怒られるんだと思う。

本人の中で話が完結してるんだよ、基本的に。


「まあ、だから今日ってのは解りましたけど、何でアロネスさんまで」

「いや、なんかアルネもテストしたみたいだし、イナイも出先でしてたみたいだし。俺だけしてないってヤだなって」

「・・・やりたかっただけですか?」

「うん」


やっぱり帰って良いかな。今日はすげーイラッとする。

その気配を流石に察したのか、アロネスさんもテンションを下げた。


「真面目な話、ミルカの結婚式の時に渡した写しもちゃんと読んでるか確かめたい。お前には悪いと思うが、教えた以上その辺りやっておきたいんだよ」


ああ、あの時の写しか。あれは一応全部読み切った。

何度か読んだだけなので、ちゃんと理解しきれてはいないが、ある程度は頭に入ってる。

一部の材料に関しては、自分のやりたい事に使えそうだと思い、手に入る場所も調べた。


薬の類も、材料に成る物はメモを残している。学んだことは全部脳内に、なんてことは俺には無理だけど、ちゃんと記録として残してる。

その辺りは、流石に手を抜いてない。


ちゃんと学んでいたテストがしたいという話には、素直に応えたい。

この人にも色々とお世話になっている身だから。

というか、この人いなかったら、会話出来てないんだよ、俺。

文字の読み書きも同じくだ。


「はぁ・・・何すればいいんですか?」


とりあえず、今日は我慢だ。でも明日は一日寝る。誰が何と言おうと寝る。

誰もわが安眠を邪魔することは許さぬ。


「お、やる気になってくれたな」

「・・・お世話になってるので、仕方なくです」

「きょ、今日のタロウは何か怖いな」


眠くて色々感情が上手く動いて無いんですよ。些細な事がイラッとするんです。

ただそれを理性で抑えているから、余計に機嫌が悪そうに見えるのだろう。


「そうだな、まず、ここに並べた鉱石を、種類別に分けてくれるか?」


アロネスさんの言葉で、既にさっきの言葉を後悔した。

数が半端ない。少なくとも100個は有る。

これ、分けろってか。とりあえずって難易度じゃないぞ。


「・・・はい、一つ質問良いですか?」

「ん、いいぞ」

「空で分けるんですか?」

「そうじゃないとテストにならないだろ。100ぐらいなら楽勝だろ?」


そうだ、忘れてた。この人天才なんだった。

あ、ダメだ、抑えてたものがもう無理だわ。


「いくら何でも出来るわけないでしょうが!!」


流石の俺も、寝不足と理不尽が重なり、怒鳴ってしまったのだった。

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