第395話シガルさんが強すぎます!

「そのうち事情は聞かねーとな」

「まあ、流石にそこはやっとかないと駄目だよなー」

「あの時のクロト君、明らかにおかしかったもんね」


クロトが寝たのを確認して、俺達は今後の事を話すことにした。

今のクロトはもう落ち着いていると思う。寝る前も安心した顔でイナイの手を握っていた。

あれなら、もう大丈夫だとは思う。


「ハクから何か聞いてねーのか?」

「いや、暴れた事しか聞いてない」

「服がボロボロだったよね・・・」


3人でちらっとハクを見る。幸せそうに寝息を立てているハクをみて、おそらく何も期待できないんじゃないかなと思ってしまった。

でも、明らかに見つけた時のクロトは、逃げ出す前の雰囲気とは違ってた。

間違いなく、ハクが何か作用してる。


「ハクとクロトだしなー。大方クロトが怯えてるのが何か気に食わなかったとか、そんな話じゃねーの?」

「ありそう」

「うーん・・・うーん・・・ハク、ごめん、庇ってあげられない・・・」


イナイの言葉に同意する俺と、否定できないシガル。

ハクは別に馬鹿じゃないし、そこまで喧嘩っ早い訳でもない。相手が嫌だっていえばやらないし、むしろ会話は通じるタイプだ。

ただ強い奴とやるのが好きなせいで、喧嘩っ早く見えるけど。


ただ、クロトに関しては、ダメなんだよな。だからイナイの言葉は十分あり得る。


「ただ、ハクのおかげでクロトが戻ったのは間違いない。帰ってきた時の態度が、明らかに違った」


そうだよなぁ。俺が見つけた時も逃げるような様子はなかったもん。


「だねー。ちょっとだけ悔しいな」

「あはは、負けちゃったねお父さん」


ぼやく俺に、シガルが揶揄うように言う。

真っ先に出てったのに、結局見つけられなかった。それどころか全部ハクに持ってかれたもんな。

なんか悔しいわ。


「むー」

「あはは、かわいー」

「ぷっ」


ちょっと悔しそうにしていたら、シガルに可愛いと言われてしまった。イナイさんも何も笑わなくてもいいじゃないですか。

だいたい可愛いのはあんたらだ。


「クロトが話してくれるかは解んねーが、明日聞いてみよう。帰ってきたって事は、その事にも多少のケリを付けたって事だろうしな」


若干笑いながら言うの止めて頂けませんかイナイさん。

ともあれ、クロトの事はとりあえず、明日か。


「クロト君、話してくれるかな」

「さあな、そればっかしはクロトしだいだろ」

「そうだね・・・」


クロトを見ながら、イナイの言葉に頷く。シガルの言う通り、話してくれない可能性もある。

けど何となく、話してくれる気がする。


「じゃあ今日は、あたしはクロト君と寝るから、お姉ちゃんはタロウさんと寝てね」

「は?」


シガルが唐突に何か言いだしたぞ。イナイは目を点にして変な声を出した。

驚く俺達を気にせず、シガルは続ける。


「今日のクロト君ほったらかしで寝れないでしょ?」

「いや、それとあたしらとどういう意味が」

「お姉ちゃんたち、背中押さないとあんまりしないでしょ」


何をしないとは流石に言わなかった。確かにイナイとは何か切っ掛けが無いとあんまりしないけどさぁ。

シガルさん、なんでそっち方面そんなに大っぴらなの?


「い、いや、シガル、お前だって回数は似たようなもんだろ」

「私最近そうでもないよ?」


シガルの言葉に、『えっ』と言っている顔で俺を見るイナイ。俺は目を背けるわけにもいかず、その目を受け止める。きっと何とも言えない表情をしているだろう。

だって、シガルさんあんまり積極的すぎるんですもん。この子、何処のエロゲのヒロインですかっていう程積極的なんですもん。


「お姉ちゃんの道具を使えば、同じ部屋でも平気でしょ?」

「いや、平気って、あの、えっとさぁ」


シガルの言葉に、イナイがしどろもどろになっている。こういうイナイは珍しくて可愛い。

それが顔に出てたのか睨まれた。めっちゃ怖い。


「反論は許しません。お姉ちゃんはタロウさんと寝るのです」

「は、はい」


びしっと指をイナイに付きつけていうシガルに、気圧されながらイナイは頷いた。

何だろうこの光景。俺に関わる事なんだけど、こう、なんだろね。

後そこに俺の意見が反映されない辺り、俺の家庭内地位が良く解る。はっはっは。


「じゃあお休みー」


シガルは手をひらひらさせて、クロトの横に転がった。

有無を言わさぬシガルさん、マジ強い。


「い、いくか?」

「う、うん」


イナイは二人きりだと、最初は相変わらず照れたようになる。なんかこっちも照れるんだよな。

シガルと三人だと、シガルに思いっきり流されるからな、俺達。つーかシガルさんのスタミナが半端なさすぎるんだよ。







既に深夜だった事もあり、翌日俺とイナイが起きたのは昼頃だった。

寝る前に朝日が見えてた気がするけど、気にしたら負けだと思った。

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