第381話少しだけまったりです!
「あー、肩こったー。ホント、ああいう集まり向いて無いんすよねぇ」
俺達の部屋近くまで来て、首をごきごき鳴らしながら聞き慣れた口調に戻るトレドナ。
どうやらもう、さっきまでの王子様する気は無いらしい。
「殿下?」
「堅い事言うなよ。流石にもう大丈夫だろう」
伸びをするトレドナに、咎めるように声をかけるフェビエマさん。だが、トレドナは意に介さない。
さっきまで背筋を伸ばし、シャキッと王子様していたのが嘘のように見える。
いや、背筋は伸びてるんだけど、態度というか、雰囲気というか。
「向こうに戻る時はちゃんと戻す」
「はぁ、お願いしますよ」
トレドナが譲る気が無い事に、ため息を付きつつ容認するフェビエマさん。
お目付け役も大変だ。
「ホント、雰囲気がまるで違うよな、お前」
「親父にも言われましたね。表面取り繕うのだけは上手いなと」
「・・・それ、褒められてんの?」
「多分褒められてないすね」
笑いながらあっけらかんというトレドナ。良いのかそれで。
まあ、親父さんと仲は良さそうだったし、それで良いのかね。
仲のいい親父、か。ちょっとだけ、羨ましい。
「手間かけさして悪かったな。助かった」
「いやいや、気にしないで下さい。好きでやってることっすから」
「だとしても、礼は言っとくべきだろ。あんがとな」
「はは、どういたしましてっす」
礼を言うと、物凄く嬉しそうにするトレドナ。もはや何も言うまい。
「じゃあ、また後でな」
「はい、また」
「では、失礼いたします、タロウ様」
部屋の前で手を振って、トレドナを見送る。
フェビエマさんは頭を下げてから、トレドナの後ろをついて行った。
あの人相変わらず隙が無いなー。
「さて、じゃあ夜までのんびりしてますか」
「そうだね」
『寝る』
部屋に入ると、ハクは即竜に戻ってベッドに乗っかり、寝息を立て始める。
まあ、さっき立って寝そうだったからな。途中で寝なくて良かった。
「くあー、つっかれた」
仲間内でテーブルを囲んでたとはいえ、それなりに気を張っていた。
最近慣れ始めたとはいえ、着慣れない服着て、場違いな気のする空間にずっといるのはやっぱ疲れる。
「あはは、流石に気疲れするよね。殿下がいてくれてよかった」
「ほんとだよ。あれで色んな人が来てたら、もっと疲れる」
真面目にトレドナには感謝だ。それにしてもクエルはその上でこっちに来たんだよな。
個人的に知り合いとはいえ、良い度胸してる。
トレドナと何か気が合ったみたいだからよかったけどさ。
ハクじゃないけど、上着を脱いでベッドに転がる。
するとシガルがその横にダイブして来た。
ふとクロトを見ると、じっとこっちを見ていた。
「クロトもおいでー」
「・・・うん」
クロトも呼んであげると、嬉しそうにこっちに来た。俺を挟んでシガルとクロトが転がる形だ。
シガルは俺の肩に頭を乗せ、クロトは俺の服を掴んでいる。これ、寝返り出来ないな。
「えへへ」
嬉しそうに笑うシガルの声が、何となく気分が良い。
あー、なんか眠たくなってきた。ちょっと寝ようかな・・・。
「おーい、起きろー」
「うえっ?」
耳元で聞こえた声に、変な声を出して目を覚ます。寝ぼけながら声の主を見ると、イナイがすぐ傍に居た。
あの後すぐ寝入ったのか俺。
「あー・・・お帰りイナイ」
「ただいま。つっても結構前から帰ってるぞ」
「あー、そうなのか、ごめん」
「いいよ、慣れない事で疲れたんだろ」
イナイはそのまま離れて椅子に座る。クロトも傍にいた、先に起きたっていうより、寝てないのかもしれないな。
ふと肩の重みに気が付き、そちらに顔を向ける。シガルはまだ寝ていた。
シガルも起きない時は全然起きないからなぁ。
「シガル、起きてー」
シガルを軽く揺らして起こす。するとむくっと起き上がるが、目がどう見ても寝てる。
俺もとりあえず上体起こそう。
「・・・おはよう」
シガルはおはようと言っているけど、起きてるのか微妙な感じだな。
「ん、おはよう」
「・・・んー」
挨拶を返すと、俺の胸に顔をぐりぐりと押し付けるシガル。うん、寝てますわこれ。
「寝てるなぁ」
「おきてるー・・・おきてるよー・・・」
「うん、そうね、起きてるね。ごめんごめん」
頭を撫でながら、寝起きのシガルさんを宥める。すぱっと起きる時は起きるんだけどな、シガルも。
「もうそろそろ移動?」
移動の時間だから起こされたなら、シガル抱えて行くしかないかな。
「いや、まだ少し時間は有る。急ぐ必要はねえよ」
「そっか、良かった」
それならシガルの目が覚めるまで待てるかな。
「そういえば、イナイは仕事終わったの?」
「おう、もう後は任せてきた。この後はずっと一緒だ」
「そっか、良かった」
飛行船以降は一緒に居られるのか。最近別行動が多かったから、一緒に居られるのは素直に嬉しい。
まあ、一日俺のせいで別行動だったけど。
「ん~ん~~~」
とりあえず俺の胸の中で頭をぐりぐりしてるシガルさんを起こさねばな。
・・・起きるかな。
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