第377話移動します!
俺達は一番最後なので、ノンビリ移動。騎士さん、兵士さん、誘導お疲れ様です。
ホールに移動する際、4つ分ぐらいに人の集団が分かれていくのを探知で感じる。
「あれ、人分けるんだね」
「たりめーだろ。あの人数一か所に置いとけるかよ。城散策したんなら、人集められるのが一か所じゃねえの知ってんだろ」
ああ、なるほど、場所分けてるのか。
ん、てことはそれ、ブルベさん達は4か所廻らなきゃいけないって事か。
・・・マジでリンさん大丈夫かな。俺が心配しても仕方ないんだけどさ。
「移動はしない方が良い感じ?」
「いや、一応問題ねえ。ただブルベ達が来てる時に離れなきゃいい」
「了解」
要は、王族さんたちの挨拶とかの邪魔しないよう、気を付ければいいって事だろうな。
ブルベさん達が来るって事は、そういう事だろうし。
「あたしはちょっとやる事有るから、少し抜ける」
「ん、仕事?」
「そんなとこだ。じゃあ、あとでな」
そう言うと、手を振りながら誘導方向とは別方向に歩き出すイナイ。
「あいあい、行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃい、お姉ちゃん」
「・・・いってらっしゃい」
『あとでなー』
俺達はそれを見送ってから、また誘導されている方へ歩みを進める。
とりあえず、人が一番少ない所に入って、あんまり目立たないように端っこの方にでもいよう。
なんて思っていたのに、ハクさんが早々に中央にずんずんと歩いて行かれました。
間違いなく、中央にある食い物しか目に入ってないな、あれ。
「ほっとくわけにはいかないよなぁ」
「あはは、そだね」
「・・・あいつ」
俺は若干メンドクサイという思いを吐き出し、シガルは苦笑しながら応える。
クロト君は声音が不愉快そうです。表情変わって無いけど。
あ、ハクさんがっつき始めた。
「いくかぁ・・・」
「あ、あはは」
頭をかきながらハクの下へ歩みを進める。あれほっといたら何するか解らんしなぁ。
シガルも流石に困った笑いになってる。だって周囲、貴族と王族しか居ねーんだもん。
しかもその周囲からがっつり注目の的になってるし。
多分、貴族、王族の人達はテーブルから動いてないな。
従者の人に取りに行かせてる感じだ。あとはウムルの従者さん達にか。
そういえば、兵士の人と話す機会はそこそこあったのに、城の掃除とかの雑務やってる従者さん達と話す機会は殆どなかったなぁ。
皆忙しそうだったし、邪魔になるかと思って話しかけられなかった。
「ハク、一人で行くなよ」
『ん、部屋からは出てないぞ?』
「いや、うん、あー、そう」
ハクの中では、部屋から出て行ってない、つまり一人で行ってないだそうです。
なんだそれ。
「とりあえず、欲しいの有ったら誰かに頼んで、テーブルに座っておこう」
『面倒くさい』
「・・・そう」
いかん、負けそう。というか、この状態のハクに勝てる気がしない。
どうしたもんかなぁ。めっちゃ注目の的になってるの辛いなぁ。
明らかに視線が刺さってんだけど。
「ハク、こういう所では自分で取りに行くと、従者さん達の邪魔にもなっちゃうから、テーブルに行こ?」
『そっか、わかった』
シガルさん勝利。ハクさん本当にシガルさんのいう事なら素直に聞きますね。
もういいや。とりあえずハクが大人しくなったならそれでいいや。
なるべく端の方に在るテーブルに座って存在を消そう。
ハクを連れてテーブルに向かい、ついでに途中で適当に食べ物持って来て貰うように頼む。
席に着いて一息つこうとするが、やはり視線が痛い。
ガン見されてるわけじゃないが、チラチラ見られている。何故だ。
「なんかすごい見られてるなぁ」
「さっきのハクの勢い凄かったからね」
『そうか?』
ハクさん、自覚してください。
ただでさえ君、目立つんだから。
「・・・少しは大人しくできないのかお前は」
『あ?』
ハクの態度にクロトが機嫌悪くなっている。これはまずい。こんなところで暴れられたらシャレにならんぞ。
「こーら、こんな所で喧嘩しない!」
だが俺が何かを言う前に、シガルが二人を叱る。
「・・・はい」
『・・・ごめん』
「よろしい」
わーい、もう俺いらないんじゃないかな!
ちくしょう、何も悔しくなんて無いんだからね!
そんな事をしていると、従者さんが飲み物と食べ物を持って来てくれた。
お礼を言って、軽く飲み物を口に含む。あれ、これ酒じゃね。
「シガル、これ、酒だけど、大丈夫?」
「ん、大丈夫だと思う」
シガルは特に気にした様子もなく、普通に飲んでいる。ハクも同様だ。
クロトはまだ手を付けていないが、クロトのまで酒じゃないよな。
俺達が渡されたものと色は違うけど、心配だ。
「クロト、御免、これちょっと飲んでいい?」
「・・・うん」
クロトに許可を取って、一口飲んでみる。
あ、これ普通にお茶だわ。良かった、流石にクロトの分まで酒は置かなかったのか。
何となくクロトは酒平気な気がするけど、子供に酒はちょっとね。
それを言い出すと、本来はシガルもどうかと思うけど、普通に出された以上、シガルは飲んでいいんだろう。シガル自身も普通に飲んでるし。
俺は・・・大丈夫かな。若干不安なのでちびちびいっとこ。後でお茶も貰おう。
しばらくここで大人しくしておこう。まだあとで飛行船にもいかないといけないんだし。
逃げ場のないここであんまり目立ちたくはない。って思ってるのになぁ。なんでこっち来るかなぁ。
俺はすたすたと一切の迷いなく歩いて来るトレドナに目を向ける。フェビエマさんも一緒だ。
トレドナは俺達の傍で立ち止まり、綺麗な礼をした。
「タロウ様、お邪魔させて頂いてもよろしいですか?」
「・・・どしたの、トレドナ」
トレドナが気持ち悪い。なんか凄く貴族しながら俺に向かってしゃべってる。
そんな俺の言葉に、トレドナは苦笑で応える。
「流石にこちらの兵や騎士だけが居るような場では有りませんので。タロウ様には申し訳ありませんが、お許しください」
片手にグラスを持ちながら、背筋を伸ばし、にこやかな笑顔を向けるトレドナ。
なんか、鳥肌立ってきた。すげー気持ち悪い。
「気持ち悪いけど、我慢しなきゃダメかな」
「出来れば、お願い致します」
フェビエマさんにお願いされてしまった。しょうがない、我慢しよう。
俺が頷くとトレドナは席に座り、フェビエマさんはその後ろに立つ。
『お前もブルベも大変だな』
「そう言って頂けるとありがたいな。私としても好んで振る舞っているわけでは無い・・・今何と言った?」
『ん、お前も大変だなって』
「いや、その後だ。ブルベと言わなかったか?」
『言ったぞ?』
ハクの言葉に、壊れた人形のように首を回して俺に顔を向けるトレドナ。
笑顔をキープしているが、若干引きつってる。
「ど、どいう事でしょうか?私の記憶が確かなら、ウムル国王陛下の名にそっくりな気がするのですが」
「だってハクの身分証、ブルベさんが作ったやつだもん。知ってるよ」
「・・・なんだか、頭が痛くなってきました」
笑顔なんだけど、なんか目が死んでる。ハクがブルベさんと知り合いで、何か不都合が有るのかしら。
「念のため言っておくが、この場で、少なくとも式中はその呼び方は止めておけ。面倒になるぞ。タロウ様も、お気を付けください」
『ん、ブルベって呼んじゃだめなのか?』
「ウムルは大きな力を持っているからな。もし国王陛下に近しい者だと知られてみろ。大分面倒だぞ。一般人ならともかく、ここに居るのは王侯貴族だ。何をしてくるか解らん」
『ふ-ん』
真剣な声音でトレドナが言うが、ハクは物凄く適当な感じの返しだ。
でも、流石にここは俺も言っておこう。真面目に面倒になる前に。
「ハク」
『ん?』
「シガルが変な奴に狙われる可能性が有るから、今だけは、国王陛下って呼ぼうな」
『解った』
おし、シガルさんで釣る作戦成功。すげえむなしい勝利だけど、勝ちは勝ちだ。
とりあえずハクはこれで良し。シガルさんが苦笑してるけどしーらない。
ただ、視線が来るのは変わらない。何故だ。というか、増えた気がする。
「・・・なあ、トレドナ」
「はい、なんですか?」
「お前、注目集めてね?」
「いえ、むしろタロウ様が注目されてるのだと思いますよ?」
は、俺?なんで俺?
俺何もしてないよ?
「お忘れですか?先日の魔術戦」
「・・・あー、あれかぁ」
そうか、あれ見てた人結構いたんだっけ。ハク追いかけて、多くの人目に止まって、その後からは俺見てたのか。
あー、そりゃ視線消えんわ。
「貴方に話しかける機会を窺っているのかと。私が席から離れれば、おそらく何人かは来るでしょうね」
「お前、もしかしてそれが解ってて来たの?」
「勿論です。貴方の役に立てるならと。私がここに来る時にも、動こうとしていた者が居ましたので、真っ直ぐにお邪魔致しました」
やべえ、俺の何がこいつをそこまで働かせるの。全然わかんねぇ。
俺ただの凡人だよ?
いや、物凄く有りがたいけどさ。さっき気持ち悪いとか言ってごめんなさい。
「ただ申し訳ありませんが、しばらくすれば父がここに来ると思います。それだけはご容赦を」
「あ、ああ、別に構わないけど」
変なの近づけないようにしてくれてる礼としては十分だ。ていうか、十分すぎる。
俺が応えると、嬉しそうな顔をするトレドナ。なんだかなー。
まあいいか。とりあえずこいつの親父さんに失礼をしないようにだけ気を付けよっと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます