第341話樹海の家に帰還です!
「うーん、一年経ってないのに、すっごい久々に帰ってきた気分」
樹海の様子も、家の様子も、変わらない。
まあ、魔物が襲撃してくるでもない限り、変わりようも無いか。
「しっかし、完全に頭から抜けてた。そういや転移出来ねーんだった」
「あはは、俺も忘れてた」
転移で帰ってくる算段だったが、クロトが転移出来ない事を完全に忘れていた。
なので、途中までハクに、少し小さめの竜に成って貰って、国境地まで抱えて飛んでもらった。
サイズ変更自由とか、便利過ぎる。
多少騒ぎになったかもしれないけど、でかい竜が飛ぶよりはマシだろう。一応人里は避けて山間を通ったし。
そこからはがっつり成竜に成って樹海まで来た。王都までの移動は、途中までは飛んでいくが、人通りが目立つところからはグレットに乗っていく予定に変更された。
「ねえ、イナイ、この家って誰か様子見に来てくれてるの?」
「おう、頼んでるぞ。定期的に見て貰ってる。人の住まない家ってのは、あっという間にダメになっからな」
やっぱり誰かに管理をお願いしているようだ。
まあ、よく考えたら家の周りの草もちゃんと刈り取られてるし、そう考えるのが当然よね。
よく周りを見ると、何かしら使った後もあるし。俺の知ってる人かしら。
「ちょっと道具取ってくるだけだから、寛いどいてくれ」
イナイは俺達に伝えると、地下に行こうとする。工具類でも取りに行くのかな?
「へーい」
「はーい」
「・・・はーい」
俺とシガルとクロトはイナイの言葉に従い、座って待ってようとする。
グレットも解ったと言わんばかりにがふっと答えた。やっぱ俺以外の言葉解ってね?
大人しく、ソファの後ろに座ってるしさ。何で俺の言葉だけ、いまいち理解してくんねーの?
『なあなあ、見に行っていいか?』
ハクは何か興味が有るのか、イナイに付いて行こうとする。
まあ来るの初めてだし、ハクは知らない物に対しての興味は結構強いし、当然かもしれない。
「別にかまわねえけど、たいしたもんねえぞ」
『退屈だったら戻る』
言葉とは裏腹に、ハクは楽しそうにイナイの後ろをついて行く。邪魔しないと良いけど。
まあ、イナイが良いみたいだし、いっか。
「タロウさん、お茶でも飲む?」
「あ、うん、ハク居ないし、あのお茶飲もうか」
ポヘタで貰ったお茶を入れよう。あれ、俺達は好きなんだけど、ハクは苦手なんだよな。
でも、なんでか知らないけど、ちまちま飲んでるのは見かける。そして美味しくなさそうな顔して飲み干す。
あれは一体何やってんのかね。
立ち上がり、二人でお茶の用意をする。ふとクロトを見ると、グレットの正面に座って、じっと顔を見てる。グレットも目をそらさずにじっと見てるけど、何してんのかしら。
クロトは感知に引っかからないから、ちょくちょく目で探してしまう。どこいるのか分かんなくて不安なんだよなー。
まあ、唐突にどっか行くことはしないと思うけど。
そういえば動物ってじっと顔を見られるの嫌うけど、あいつそうでもないな。狂暴性も腹減ってる時ぐらいだったし。
まあ、それだけハクが怖かったって事かもしれないが。
まったりとお茶をして、結構な時間がたったが、二人が上がってくる気配がない。
イナイの口ぶりからすると、直ぐ上がってくると思ったんだけど。
「お姉ちゃん、遅いね」
「だね」
シガルも遅いと思ったらしい。ちょっと様子見に行ったほうがいいかな。
「ちょっと様子見て来る」
「あたしも行くよ」
「解った、クロトはどうする?」
「・・・行く」
「んじゃ、皆で・・・あ、グレットは待っててね」
流石にちょっと待っててもらおう
そう思って伝えたのだが、首を傾げられる。何でなんすか。偶に通じるだけに、普段の通じなさが良く解らない。
「ちょっと、待っててね」
シガルが撫でつつ言うと、素直に伏せの状態になるグレット。
何でなんすかグレットさん。
「何で俺の言葉だと駄目なの」
「あはは、なんでだろうね」
馬といい、グレットといい、俺、動物に好かれてないのかしら。
いやでも、グレットにはなんだかんだ懐かれてるとは思うんだ。餌をくれる係とか思われてたら泣けるけど。
寂しくなったお父さんかよ俺・・・。
「・・・とりあえず、行こうか」
何となく悲しくなったのを誤魔化しつつ、地下に向かう。
少し下に行くと、なんとなく楽し気な、ハクの鳴き声が聞こえてきた。何かしらの道具を使う音も聞こえる。
「なんか、楽しそうだね」
「そうだね。何やってるのかな?」
シガルにも楽しそうに聞こえたようだ。
不思議に思いつつ下に降りると、作業台の上にいろんな工具や、作った物が並べられて、ハクが楽しそうに弄り回していた。
『イナイ、これは?これはどうやって使うの?』
「こうやって、穴開けるんだよ」
イナイはハクに道具の使い方を聞かれ、端材らしきものを使って使い方を実践した後、ハクに渡してやらせている。
ハクは教えられたとおりに、楽しそうに道具を使う。すげえ楽しそう。
『おお、そんなに力要らなんだ!』
「いや、お前の力が強いから、あまり要らないように感じるだけだと思うぞ」
『そうなのか!あはははは!』
中々上に来なかった理由はこれだな。作業場に有る道具とか、倉庫に有った物とか、そういうのを見て何なのか気になったんだろう。
そしてハクの質問に答えて、説明をしていたと。なんか俺が教えられてた時思い出すな。
「楽しそうだね」
シガルは苦笑しながらそう口にする。ハクが楽しそうだ、ではないからだろう。
ハクだけの話では無く、説明しているイナイも楽しそうだ。あの人、俺の時もあんな感じだったしな。
多分、作業そのものとか、道具を使う事とか自体楽しいんだよな、イナイは。
だから、そこに何かを作るがプラスされると、もっと楽しいになる。
因みに、イナイさん、俺達が下りてくることに気が付いていないわけじゃない。あのイナイが気が付かないわけが無い。
降りてきた瞬間、こちらをちらっと見て、ちょっと申し訳なさそうな顔で、すまんと口が動いてたのは見えた。
「あー、ハク、そろそろ終わりにしようか」
『えー』
イナイが終わりを口にすると、あからさまに嫌そうな顔をするハク。
まあ、気持ちは分からなくはない。俺としてはイナイが急ぎじゃないなら、別に構わないんだけどな。
何となくシガルの方を向くと、視線に気が付いたシガルがこくんと頷いた。どうやら俺の思考は透けているようだ。
「イナイ」
「あ、ああ、すまんタロウ」
俺は困った顔をしているイナイに声をかける。基本的にはしっかりしているイナイだけど、こういう所はリンさん達と同類だなって思う。自分の好きな事に相対すると、他の事が頭から飛んでいく。
まあ、アロネスさんほどやりたい放題する訳じゃないけど。
「王都に行くのって、急ぎなの?」
「いや、伝えた通り、特に急ぎじゃない。まだあと数日余裕が有る。仕上げに居てほしいってだけだからな。式自体も後少し余裕あるからな」
「じゃあ、今日はここでゆっくりしようよ」
「あー、ああ、うん、すまん」
俺の意図をすぐに読み取ったイナイは、謝りつつ笑顔になる。申し訳なさそうにしてるより、そっちの方が俺も嬉しい。
『じゃあ、続き良いの?』
ハクがなんか可愛く首傾げてる。まあ、この中でハクより大きい人居ないんで、効果薄いんすけどね。
その前に男、俺だけだし。
ハクの身長はその気になれば自由自在なので、あんま関係ないけど。元のサイズより小さいのは無理って言ってたかな?
「あー、そうなるな」
イナイは素直な反応をするハクに苦笑しつつ応える。
今日はイナイ、こっから出てくるの遅くなりそうだなー。
「せっかくだし、シガルも見る?」
「うん!」
シガルも興味はあったようで、俺の言葉に元気よく頷く。
「なら俺、食事の用意してくるよ」
「あ、そうか、御免手伝う」
「いいよいいよ、やってくるから。グレットいつまでも放置も可哀そうだし」
あいつも、何時までも待て状態は可哀そうだろう。それに俺はここの道具はどこに何が有って、どんな物が有るのかは大体は知ってる。
興味が有るなら、シガルは見て触ると良いと思う。ここで数日過ごしてた頃は、まだ気を使ってて、作業場には来なかったからな。
「・・・お母さん、僕が手伝うから、大丈夫」
クロトがシガルと同じような気合の入れ方をして言うのを見て、口元がにやける。
この子、やっぱ基本的にはいい子だし可愛いよなー。
「そっか、じゃあお願いね」
「・・・ん」
シガルはクロトの頭を撫でて、にこやかに頼む。クロトは間違いなく嬉しそうな表情だ。今日は分かり易い。
「んじゃいこっか」
「・・・うん」
クロトと二人で上に戻り、クロトにはグレットの世話を頼んだ。なんか意思疎通がハク並みに出来てるっぽいから、適任だろう。
なんか俺だと、全く通じて無い訳じゃないんだけど、何言ってんだろうこの人って反応されるからな。
さーて、何作ろっかね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます