第295話内乱終結の報告ですか?
「む?」
世界各国に放っている諜報員の報告書の中に、気になる物を見つけた。つい最近内乱に決着がついた国の情報だ。
諜報員の目算でも、自分の予想でも、そろそろ決着がつくとは思っていた。
だが、その決着のつき方が、予想とは違った。予想では順当に反乱軍が勝利し、王国は反乱軍にとってかわられるだろうと思っていた。
だが、結果は違った。その国の王子、そしてその部下の手によって、最後の最後で全てをひっくり返されたとある。
「これは、直ぐに陛下に伝えた方が良いな」
入ってきた情報の精査を途中で止め、席を立つ。
陛下の執務室へ向かい、警護している騎士達に挨拶しつつ、執務室の扉を叩く。
「入れ」
短く、陛下の声が聞こえ、言葉に従い室内へ入り、扉を閉めるとほぼ同時に防音をつけ、跪く。
「どうした、キャラグラ」
「はっ、至急お耳に入れたい情報が有り、ご報告に参りました」
陛下の言葉に答え、書類を差し出すために立ち上がり、手渡した後、再度跪く。
陛下はそれを気にせず、書類を見つめる。
「なるほど」
「如何されますか?」
恐らく、その国の存在は危険だ。だが現状は何もしてない。である以上陛下はきっと過度な干渉はされないだろう。
だが、だがだ。もしその国の王が野心持つ男ならば、周辺国は危険な事は間違いない。あの国の周囲には我が国との友好国が数ある。
「兵力はあまりない国が傍に有ったな」
「はっ、農業国家である国と、鉱石資源で賄っている国が有ります」
共にウムルと契約している街も有り、そして国としても友好を結んでいる国でもある。
であれば、あの国を気にするのは、陛下ならば必然か。
「・・・それとなく、人員を送れるか?」
「はっ、可能です」
陛下もやはり、かの国を危険と判断されたようだ。何も起こらねば問題は無し。だが、起こった時の為の人員を派遣する。
ただ、大々的に兵を送るわけにはいかない。それは、明らかにかの国を警戒しているという意思表示になるし、争う気ならばこちらはやる気だと言っているようにも感じさせてしまう。
「では、キャラグラ、頼む。最悪私たちの内誰かが向かおう」
「はっ、その場合元々関わりのあるネーレス様とセルエス殿下がよろしいかと」
「そうだな、妹には私からも言っておく。アロネスはお前に任せる」
「仰せのままに」
深々と頭を下げ、陛下の言葉に了解の言葉を述べる。やはり、過度な接触や、刺激を与えるのは避けるものの、兵の派遣はするか。
大方予想通りだ。本当に陛下は優しいお方だ。この国の危険性を想えば、先に頭を抑えに行ってもおかしくないというのに。
ただし、その優しさの中に、陛下は確固たる意志を見せている。我が国に手を出せば、そして友好国に手を出せば、その剣を一切の容赦なく振るうと。
8英雄を出すというのはそういう意味だ。心の底から信頼する彼らを使う。それはすなわち、陛下が本気で警戒し、来るならば容赦なしないという意思でもある。
「では、直ぐにでも手配します」
「任せる」
「はっ、失礼いたします」
防音を切り、頭を下げたまま、部屋を出る。
「さあて、忙しいな。まずはヘルゾさんにどれだけ予算が出せるか聞きに行かねば」
あの人は今日は休暇だったので、申し訳ないとは思うが緊急事態だ。重ねて言うが、申し訳ないと思っている。が、流石に事態が事態だ、せめて話だけでも聞いてもらおう。
自宅に居ると良いが・・・。
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