第288話まったり食事です!
「めっちゃ美味そうに食うなお前」
皿に入れたステーキを、一口噛み切るたびになんか美味そうに上を向きながら食うグレット。
まあ、美味しいならよかった。今後も焼いた方が良いのかね。
いつだったか、犬猫のご飯レシピをネットで見た記憶があるが、似たような物作ってみるか?
・・・こいつらたべちゃまずい物ってあんのかな。あとでイナイに聞いてみよう。その辺はアロネスさんの方が詳しそうだけど。
「おーい、眺めてないでお前もこっち来いよ」
「あ、うん」
イナイ達は既に食卓に着いている。別に先に食べてても良かったんだけど、グレットの肉を焼くまで待ってくれていた。
『もう食べていい?』
「ああ、ごめんごめん、どうぞ」
俺も席に着き、ハクにどうぞ食べてと促す。
「じゃあ、『いただきます』」
俺は習慣から、手を合わせて日本語で頂きますと言って食べ始める。
こっちの言葉で言ってもいいんだけど、どうしても、忘れたくない。さっきの事もあってか、感傷的になってるな。
「タロウ、この村にはしばらくいるつもりか?」
「うーん、どうしよう。数日滞在はしたいなとは思うけど」
「そうか、分かった」
イナイは滞在の期間の確認を取ると、自分も食事を始める。そう言えばこの世界神話とかあるけど、宗教とかほとんど見た事ないな。
あ、そういえばポヘタは有ったな。
『ん、何?』
「いや、ごめん、なんでもない」
どう見ても神様とは思えない勢いで食事をしているハクさん。竜神とは一体何だったのかって感じよね。
初めて会った時からそうだけど、本当に良く食うよなこいつ。
俺も最初の頃より砕けてるな。色々有ったもんなぁ。
「タロウさん、料理の腕は上がってるよね。なんか、段々種類が増えてってるような」
「そう?」
「・・・香辛料、数が増えてる」
クロトが香辛料の事を口にする。香辛料は確かに。樹海に居た頃から色々使ってはいたけど、ポヘタにも色々あったので、無駄に増え続けている。
使わないともったいないからね。使うのも楽しいし。
「ああ、色々有って楽しくてさ。とりあえず使ってみたくて。そうなると合う料理考える必要があるし」
「お前料理人もやれそうだよな」
「イナイに言ってもらえると嬉しいな」
俺はイナイの料理の方が美味しいと思ってるからなぁ。料理はしなかったわけじゃないけど、ここまで本格的にはしなかったからね。
イナイに教えられてからがっつりやるようになったし。
「うう、美味しい」
シガルが若干悔しそうなのは見ないふりをしておく。シガルの料理も美味しいけどな。
なんか、クロトも良く食うな。いや、むっちゃ食うわけじゃないんだけど、体格のわりに食ってる。
なんか、黒をあまり使わないようになった辺りから食事量増えてる気がする。
「クロト、美味しい?」
「・・・うん、美味しい」
クロトは満足そうに頷きながら応える。お世辞言ってる感じじゃないと思う。
最初の頃はクロトの舌が違う可能性も考えてたんだけど、あんまり差は無くて良かったよなぁ。
「明日はあたしが作るかな」
「あ、あのお姉ちゃん」
イナイが明日の食事担当を申し出ると、シガルが恐る恐ると声をかける。
「ああ、良いぜ」
「あ、ありがとう」
イナイはその言葉に内容を聞かずに許可を出す。多分、料理手伝うというか、教えて貰うんだろう。
シガルは別に料理が下手なわけでも、出来ないわけでもない。単純にイナイが上手すぎるだけなんだ。
でもシガルはそれに納得がいかないようで、時々教えて貰ってるみたいだ。俺はそこをねだられた事は殆どない。何故だ。
つーか、この年の子が当たり前に大型の獣解体できる時点ですげえと思うんだけどな。
ふと、俺はグレットに目をやる。グレットは既に肉を食い終わり、毛づくろいをしていた。
視線に気が付き、ちょっと首を傾げる。元の世界でもそうだったけど、わんことか猫とか、なんでああいう動作するんだろう。
あいつも、ちょっと運命が違ってたら、食卓に上ってた可能性がるんだよな。その辺一応割り切っちゃいるけど、考え出すとちょっと辛い。
たった数日で、すでに愛着わいちゃってるなぁ。
「タロウさん、食べないの?」
シガルが少し心配そうに聞いてくる。手が完全に止まっていた。おそらく先ほどの事も有ったし、殊更心配をかけてしまったんだろう。
「たべるたべる。ちょっと考え事しちゃってね」
「大丈夫?」
「うん、大丈夫。ありがと」
本当にただ考え事をしていただけなので、問題はない。
自画自賛だが、美味くできたと思う食事を食べる。今回はちゃんと量はまともです。
「さて、食後の運動でもしにいこうかな」
「あたしもいくー!」
『いくぞ!』
シガルとハクが付いて来るそうです。ハクさんちょっと抑えめでお願いしますね、ここ畑多いから。
お前が暴れて畑ぐっちゃぐちゃとか、しゃれにならん。
「はいはい、いってらっしゃい。あたしはちょっとやる事が有るから」
「どっか行くの?」
「いや、外には行かねえ」
イナイは何か用があるのか。何するんだろうか、もし手伝える用事なら手伝うんだが。
「手伝いはいる?」
「いや、要らねえ。ちょっと国との連絡を取るだけだ」
ああ、そっか。それじゃ要らないな。
「そっか、分かった。じゃあ行ってくるね。クロトはどうする?」
「・・・うーん・・・・お母さんと居る」
クロトは少し悩んでから、イナイと一緒にいる事を選択した。順調になついてるよなー、ほんと。
なんかさ、みんなついてくる理由は俺だったのかもしれないけど、俺より仲いい気がする。
特にシガルとイナイ。俺将来完全に尻に引かれる未来が見える気がするんだ。今もほとんどそうだけど。
さて、さっきのイナイの魔術を見て、少しだけそっち方面のやる気が出ちゃったので、竜の魔術の訓練をしよう。
もう少し、使える幅を増やしたい。勿論他の基礎訓練もするけど。
さって、とりあえずは走ってくるかね。迷子にならない程度に。
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