第227話まずは女学院です!

まずは女学院から話をしに行こうとイナイが言ったので、まずはそっちに向かう。

女学院が先な理由はわからないけど、とりあえずイナイ先生の言葉に従いました。


学校に近づくにつれ、家の並びが明らかにお高そうな感じがな物が多くなっていく。

人はあまり見かけないが、たまに見かける人間も、服装から明らかに貴族してますって感じの服装だ。

向こうも俺達のことが気になるらしく、わかりやすいぐらいこちらを見てくる人が多かった。


女学院に着くと、門の前で警備をしているらしき男に止められる。


「お前たち、ここになに・・、こ、これは、一体このようなところに、何用でしょうか」


俺たちを見た瞬間こそ、見下した感じで俺たちを止めたが、俺たちの顔を確認した途端、その態度を崩す。

どうやら俺達のうち誰かは知らないが、だれかのことは知っているようだ。


「こちらの合同授業の護衛に関しての打ち合わせに参りました。お取次お願いできますか?」


イナイが背筋を伸ばし、凛とした雰囲気で言う。

だが男はそんなイナイに眉を寄せて、不可解な顔を見せる。


「タロウ様の従者なのかね?だがそういった要件の場合、君のような幼い従者が出しゃばるべきことではないぞ?」


げ、やべえ。この人イナイ知らないのか。いやまあ、あの時居なかったけど。

恐る恐るイナイを見ると、表情が抜け落ちている。

やべえ、ヘタに怒っているより、こっちのほうが何考えてるかわからなくてこええ。


「あ、あの、彼女は俺の従者とかじゃなくて、ウムルの大貴族なんですけど・・・」

「は、え?か、からかっていますか?」

「いや、えっと」


俺は内心ビビリながらイナイを見る。イナイは表情を変えずに身分証を取り出し、警備の人に見せる。


「こ、これは、そ、その、まさか、あなたがあの、技工士の、そんなばかな」


名前を確認し、目の前にいる少女が何者なのかを認識すると、認識しているはずなのに認められないと、意味がわからないという感じで上手く対応できないでいる。


「自身の見た目についての認識は正確に把握していますが、そこまでの態度をされますと、少々気に障りますね」

「も、申し訳ありません!」


貴族相手に、それも他国の大貴族相手にとる態度ではないという事に、いま認識が至ったらしく、頭を必死に下げる。


「す、すぐに取次ぎますので、少々おまちください」


男はそう言うと、門のそばにある小さな小屋の扉を開け、中に何かを語ると、そのまま、校舎らしき方へ走っていった。


「彼は、よくあれでこの国で首が繋がっていましたね」

「確かに、そうだね。この国短気な貴族多いもんね・・・」


あの騎士たちといい、俺たちを襲う計画をした貴族といい、人の命を奪うことをなんとも思っていない。

そんな中で彼が生きていられたのは奇跡か、彼自身も位が高いのか。

でも位が高い人間が学校の門の警備なんてしないか。


「こっちの学校って、小さいね」


シガルが女学院の校舎を見てそう洩らす。女学院は、2階建ての学校で。そこまで小さくはないが、大きくもない。

現代社会の学校を見慣れている身としては、古い学校の校舎を見ているような気分になるサイズではある。

そういえばシガルは、ウムルの学校に通ってたんだっけ。そこはどれぐらい大きいんだろう。


「生徒が貴族しかいないから生徒数が少ないんだろう。訓練用の広い土地も必要じゃないしな」

「そっか、訓練とかないんだ、この学校」


イナイの言葉に、シガルが納得する。シガルの通っていた学校は、座学だけじゃなくて、魔術の実技訓練のある学校だったらしいし、人数も大違いだろう。

貴族のみの学校とか、そんなに沢山生徒がいるとは思えない。

多分この学校って、花嫁修業的な学校なんじゃないのかね。もしくは、他の貴族と結婚させるための場所として機能してるのかもしれない。


『なんだか、きつい匂いがたくさんしてるな、この建物』

「香水かな」

「学校自体に何か撒いてる可能性も有るな」


俺とイナイで、ハクの疑問に答える。ハクは竜だし鼻に来るのかな。


「まあ、あの頃の年頃の子供は、色々やりたがるからな。香水の可能性の方が高いが」


門前で雑談しながら待っていると、なんだか校舎のほうが騒がしくなってきた。

ふと目を向けると、教室という教室から、女生徒がこちらを見ている。

皆こちらの様子を伺いながら、楽しそうに会話している。


「門前にじっと立ってりゃ、誰か気がつくわな」

「ああ、そっか、イナイに気がついたのか」

「バカ、お前だよ。お前の事知ってる奴がいたんだろ。あたしは貴族の当主どもならともかく、その子供には顔わかんねえよ」


ああ、そっか、そりゃそうか。警備の人も、イナイの顔知らなかったもんね。

ウムルでも、名前しか知らない人もいたもんな。


「お、戻ってきたぞ」


イナイの言葉に校舎の入口の方を見ると、さっきの男が走ってくる。


「タ、タロウ様、ステル様、ご案内いたします。どうぞ」

「では、よろしくお願いします」


彼が戻ってきて言う言葉に、イナイが応え、彼の案内についていく。

校舎に入り、廊下を抜けて職員の部屋らしき所に通される。道中ずっと様子を伺う生徒たちの声が騒がしかった。


なんか、思ったより小さいとか、可愛いとか、そんな言葉が多く聞こえた。

俺ではなく、シガルの事だと思う。もしくはクロトだと思う。思うったら思う。絶対俺のことではない。


「タロウ様、ようこそお越し下さいました。私は当学院の統括責任者を努めさせて頂いております。どうぞ、皆様おかけください」


部屋に入り、出迎えてくれた人は、笑い皺が深く刻まれた女性だった。その顔から穏やかな印象を受ける。

しかし、統括責任者か。一番偉い人ってことかな。


「此度の護衛、これ以上心強い方はおりません。感謝いたします」


ニッコリと笑いながら、お礼を述べる女性。


「いえ、未熟者ですが、やれる限り頑張らせて頂きます」


やるといった以上はしっかり頑張る。が、俺もそこまで頼りになる人間ではないので、色々と期待されすぎても困る。

ある程度生徒の手綱は握っていて頂きたい。


「ステル様も、お会いできて光栄です」


イナイはその言葉に軽く頭を下げると、口を開く。


「では、早速打ち合わせを」

「は、はい、。こちらが予定表になります」

「拝見します」


イナイは早速と予定表を受け取り、俺もそれを見る。

シガルとハクも横から覗いている。クロトだけは、どこか明後日を見て、ぽやっとしている。


内容的には、朝、騎士学校の生徒たちと合流し、街を出て、森の手前で騎士たちに守れられながら、騎士候補の活躍を間近で見るという感じだった。


「なるほど、特に問題はなさそうですね。こちらは女学院ですし、当然といえば当然ですか」

「ただやはり、予想外の行動を取る生徒が居ないわけではないので・・・」

「ええ、そちらに関しては、こちらも目を光らせておきます。ですので、できる限り集団から離れる行動さえ謹んでもらえれば」

「それは重々に。今回は特にあなたがおられますので」

「なるほど、全て指示されているのですね」

「はい、本当にあなたが来てくださるとは思っていませんでした」


んー、イナイは視察なんだし、普段通りの彼女たち見たほうがいいんじゃないの?

なんかよくわからんな。

しかし来ると思ってなかったとか、大胆なことはっきり言うなこの人。


「では、こちらは持ち帰らせて頂いても?」

「はい、結構です」

「では、この足で騎士学校にも訪ねようと思います。あちらの行動しだいで、またこちらに伺います。では、失礼します」

「はい。よろしくお願いします」


イナイはすくっと立ち上がり、部屋を出ていこうとする。行動が早すぎね?

俺は慌てて立ち上がり、イナイについていく。シガルも同様だ。ハクとクロトは特に気にした風ではない。

この二人案外気が合うんじゃないのか。

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