第175話ブルベさんと初めてちゃんと会います!

城に着いたら、迎えに待っていた騎士に馬の事を伝え、案内を受けて城に入る。

まあ、こっちもたまたま確認したい事あったし、ちょうどいいかも知れない。

呼び出されたってコトは王女様もいると思うし。


しばらく騎士に案内されるがままに付いていくと、とある部屋の前で止まる。あれ、ここ前に王様に王女様との縁談の話された部屋じゃね?

騎士がノックをし、俺たちが来た事を伝えると、部屋から入れという声が聞こえる。


それに応じ、騎士がドアを開けると、俺たちに入るように促してきたので、先に入る。

中ではこの国の王様と王女様の対面に、ウッブルネさんとブルベさんが座っていた。


てことは、あれから飛び降りた誰かのうち2人はこの人たちか。

10人位いたから、他にも居るんだろうけど。


「来たか、タロウ君」


ブルベさんは俺を見てそう言葉を発した。

なんか、以前会話した時とイメージが違う。あの時はニコニコした優しそうな人ってイメージだったけど、今はきりっとしてて、格好も豪華で、まさしく王さまって感じだ。格好いい。


「あの、俺はどなたに呼ばれたのでしょう」


てっきり王女様が呼んだのだとばかり思っていたが、最初に声を発したのはブルベさんだ。


「少年、失礼であろう。王の御前ぞ。シガルが率先してやっておる事をお前が出来ずどうする」


ウッブルネさんが俺に向かって言う。横を見ると、シガルは跪いて頭を下げていた。

あ、そうだよな、王様だものね。その辺の感覚が今だに馴染めない。

とりあえず急いで膝を付こうとすると、ブルベさんが口を開く。


「構わない。彼の身分はわが国が保証しているとはいえ、彼は正確に国に属しているわけではない。彼の身の上を考えれば私に頭を下げぬも詮無き事だ。

そちらの少女も立つが良い。此度はこちらが用有って呼び出した事。わが国の王城でも、祭事でもない、個人的な用だ。汝らが頭を下げる必要は無い」

「はっ」

「はい、お言葉有りがたく」


ブルベさんの言葉にウッブルネさんは短く答える。それと同時にすっとシガルが立ち上がる。

ハクはその間首を傾げていた。

それを確認すると、ブルベさんはポヘタ王に向き直る。


「ポヘタ王、少々席を立ちたい。よろしいか」

「は、畏まりました」


ブルベさんの言葉に王様は頭を下げる。ふむ?ここに俺たちが来るまでに何か話してたみたいね。

まあ、そっちはいいや、とりあえず何で呼ばれたのか知りたいな。


「では、タロウ君、少しついてきてくれるか?」

「あ、はい」


ブルベさんは立ち上がり俺について来いというので、素直に頷く。


「あの、もしよろしければ私も付いていって構いませんか?」


王女様が明らかに俺に向かって言う。いや、そこはブルベさんに言いましょうよ。


「・・・ふむ」


ブルベさんはそんな王女と俺を見る。


「そうだな、構わない。来るといい。ではポヘタ王、また後で」

「はっ」


すげえな、あれだけ偉そうだった王様が萎縮して見える。やっぱこの人本当にウムルの王様なんだなぁ。

ん、あれ、腰についてるの・・・日本刀っぽい。鞘がそういう形なだけかな?

でも、日本刀の鞘っぽい形だ。


「タロウ君?」

「あ、すみません」


ブルベさんの刀に気を取られてボーっとしてた。謝ってすぐに後を追う。


『なあ、なんか前と雰囲気が違わないか?』


道中ハクが不思議そうにブルベさんに向かっていう。

ああ、そういえばハクはブルベさんに身分証もらってるんだっけ。


「これも勤めだ。私としては堅苦しいことこの上ないが、立場が許してくれん。私は民の命を預かる王として振舞わねばならん。彼らや君達の前以外ではな」


たぶん彼らっていうのは、アロネスさんとか、リンさんのことかな。


『ふーん、大変なんだな』

「ああ、本当にまいる。隣の彼が怖くてな」

『お前が怖いのか。凄いな』

「・・・陛下、お戯れが過ぎます」


雰囲気も声の張りも変わらないが、どこか気軽そうにハクと話すブルベさんを、ウッブルネさんが咎める。

ブルベさんは「ね?」という感じで軽く肩をすくめる。

王様より怖いってどういう事なの。


「ところで何の御用なんですか?」


とりあえず呼ばれた理由を聞いてみる。


「なに、たいした事ではない。イナイを君に返すためだ。しばらく君から借りていたから、こちらも礼儀としてイナイの所に連れて行こうとしたまで。

本来ならばこちらから出向くべきだが、出来ぬゆえ呼び出させてもらった。すまんな」


ああ、イナイ何か頼まれて仕事してたのか。てことはやっぱあの飛行船イナイの作品か。

魔術ってとんでもねえなぁ。短期間であんな巨大な物作るなんて。


「陛下、お聞きしてもよろしいでしょうか」

「構わん」


そこで王女様が言葉を発す。


「わが国に乗られてきたあの空飛ぶ船。あれはイナイ様の造られた物ですか?」

「そうだ。彼女が一人で設計し、

「一人で・・ですか?」

「ああ、一人でだ。私も驚くしか無かったよ・・・」


うっそだろ、あんな巨大なもん一人で作ったのかよ。


「イナイ様の魔術の技量のなせる業・・・・でしょうか」

「いや、今回は」

「陛下」

「・・すまん、ロウ。口が滑った」


ん、なんだろ、何か今変なこと言ったのかな?

話の途中でウッブルネさんがブルベさんの言葉を遮った。


「すまんな、詳しくは言えん」

「いえ、あのような物、製作過程は国家機密で当然でしょう。お気になされず」


国家機密とな。まあ、空飛ぶ乗り物が無かったらそうなるのかな?

俺は一応現代知識があるので、イナイからもらった知識と技術で飛行船の小さい物なら作れる自信はある。

硬式飛行船は無理です。そんなしっかりしたもの無理。


その後は会話も無く、ただ付いていく。

とある部屋で止まり、ウッブルネさんがドアをノックする。


『どうぞ』


イナイの声がして、ウッブルネさんがドアを開けると、イナイにそっくりな女性が立っていた。

でもイナイじゃない。だって彼女、俺より身長が高い。

この人、誰だろう。イナイの親戚とかかな?

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