第169話受付の女の子が用事があるそうです!
「シガル、やりたい事有ったら言ってくれていいんだよ?」
今日も付き合わせてしまったシガルの事が気になり、シガルやりたい事が無いのかに聞いてみる。
「え、うん、やりたいことしてるよ?」
『してるぞ!』
うん、ハクは知ってる。つーか今日だってやりたい放題だったろ。
「そうなの?なんか最近特に俺が付き合わせてばかりな気がして」
「私一緒に居るのが楽しいから、やりたいことしてるよ?」
「うーん、それならいいんだけど」
なんか、我慢させてないかなぁ。それが心配なんだけどな。
「一つ言うなら」
「ん、なに?」
お、やっぱあるのか。何だい、出来る限りは聞くよ。
「今度は置いて行かないでくれると嬉しいかな」
「すみませんでしたぁ!」
ニコニコ笑顔で言うシガルに、即土下座をするのであった。
「そ、そんな大げさに謝らないでよ」
「いや、ごめん。ホントごめん」
こればっかりは申し訳ないですまない。一歩間違えばシガルは犠牲者になっていた。
ごめんなさいって謝れるだけ有りがたい。
「んー、困ったなぁ。私別に怒ってないよ?」
「ありがとう、シガル。でもなんか俺に出来る事無いかな?」
「んー?あ、じゃあ、ちょっとベッドに寝転んで」
「ベッドに?」
「うん。うつ伏せでね」
「わかった」
シガルの言う通り、ベッドにうつ伏せになる。
するとシガルは俺の背中にまたがり、何かを確かめるようにぺたぺたと背中に触れる。
「シ、シガル?」
「んーと、ちょっと待ってね。今確認してるから」
「え、あ、うん」
「・・・このへんかな?」
シガルは一通り俺の体をぺたぺた触った後、腰のあたりの筋肉を動かすように揉みながら、ある一点に親指を潜らせるように指圧する。
俺はその気持ちよさに体に力が入らなくなっていくのを感じた。
「ふへぇ・・あう・・な、なに・・これ・・」
「えへへー」
いや、えへへ―じゃなくて。なにこれ、すげー気持ちいい。
イナイに体ほぐすようなのはやってもらった事が有るし、あれも気持ちいけど、これは種類が違う。
俺マッサージとか、整体とか行った事無いけど、ああいうのってこんな気持ちいのか。
「う・・くあ・・シガル」
「どう?気持ちいいでしょ」
「あ・・はあ・・どこでこんな・・」
「私もいろいろ勉強してるんだよ?」
勉強って。どこでこんなの学んだのだろうか。
いやまあ四六時中一緒に居るわけじゃないから、どこかでこういうの調べたのかもしれないけど。
シガルは腰から徐々に上に上がっていく。揉み方は同じように筋肉を動かしつつ、また力の入らなくなる場所を指圧して揉み解す。
やばい、これヤバい。癖になりそうなぐらい気持ち良い。
力抜ける上に変な声が出る。ハクが不思議そうに首を傾げてらっしゃる。
シガルがしたい事有ったらとか、俺に出来る事が有ったらって事だったんだが。俺が気持ちよくなってて良いんだろうか。
あ、でもこれもしたい事なのか?ああ、気持ちよくて頭回らない。
「あ、かあぁ・・ぐぅ・・・」
「あ、痛かった?」
「い、いや、気持ちいいよ」
「ん、よかった」
さて、これ物凄く気持ちい。気持ちいんだけど、ドアの向こうで誰かが全く動かないのが気になる。
んー、何してんだろ。
「シガル、少し待ってもらっていい?」
「ん、なあに?」
「誰か来てる」
「ん、分かった」
ドアの前に居る誰かが微動だにしないのが気になって、こっそりと魔術で様子を探る。
あれ、この子受付の子じゃないか。
・・なんでしゃがみこんでドア開けようとしてるのかしら。
俺はドアの目の前まで行って、同じぐらいの目線になるようにしゃがむ。シガルも付いて来て後ろに乗っかっている。
ドアがゆっくりと開き、彼女と目が合う。
「何か用ですか?」
「あ、受付のお姉ちゃん」
「え、うわぁ!」
彼女は俺と目が合うと、驚いて後ろに倒れる。
とっさに手を引いて、抱きとめてしまう。
「危ないですよ。頭打ったら、軽くでも何が有るか分かりません」
「は、はい。ごめんなさい」
彼女はわたわたと俺から離れて謝る。
「えーと、それで何か御用ですか?」
「あ、その、ですね、支部長がタロウさんに用が有るので、呼びに言ってきてほしいと言われまして」
「支部長が?なんだろう」
用が有るならカグルエさんとやった時に言ってくれれば、後でちゃんと行ったのに。
まあ、それは良いとして、もう一個聞いておこう。
「所でなんでそっと扉開けようとしてたんですか?」
「あ、あの、その、それはですね、えっと」
そう聞くと、わたわたと手を動かして、顔を真っ赤にして言葉を詰まらせる。
「タロウさんの声で勘違いしました?」
「あ、う、そ、その」
シガルの発言に、彼女はさらに真っ赤になって、シガルを見る。
勘違い?どういうことだろう。
「興味が有るのは分かりますけど、のぞき見はどうかと思いますよ?」
「そ、その、ごめんなさい」
うん?俺がされてたマッサージに興味が有って覗こうとしてたのかな?
「まあ、いいですよ。ちょっと興味が有っただけでしょうし」
覗かれた所で俺がちょっと変な声出してた程度だ。
・・・いや、冷静に考えると恥ずかしいな。
「うう・・・すみません」
俺の発言に、顔を赤くしたまま俯き、謝る彼女。
なんか苛めてるみたいになってきた。
「ま、まあ、あんまり気にしないでください」
「・・・ありがとうございます」
彼女はうつむいたまま、礼を言って、少し間をあけるとこちらを向き、もう一度頭を下げる。
「支部長の用事とは別に、個人的にあなたには謝らないとと思っていました。以前は失礼な事をしてしまい、申し訳ありませんでした」
ん?なんかあったっけ?
むしろ彼女には、さっきの覗き以外は俺が申し訳ない事をした覚えしかないが。
「なんかありましたっけ?」
「え?」
何言ってんのこの人って顔された。
「いや、俺謝られるような事何もないですよ?」
「え、でも、その」
「クスクス。大丈夫ですよ。タロウさんはこういう人なんです」
シガルが俺達のやり取りをみて、くすくす笑いながら彼女に告げる。
こういう人って、どういう人ですかね。
「じゃあ、いこっか、タロウさん」
「ん、うん。ハクはどうする?」
『ついて行くぞ!』
「りょーかい。じゃあ、今から行きます。組合で良いんですよね?」
「え、あ、はい」
俺達が行くという旨を伝えると、彼女は気の抜けた返事で答える。
なんかポカーンとしてらっしゃる。俺何か変な事言ったかなぁ?
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