第158話解らない事をちゃんと聞きます!
「ところで、この後何するのかな」
俺のその発言に、皆が一斉に俺の方を向く。
ガラバウはこいつ何言ってんだ?て顔だ。
ミルカさんは、まあ、タロウだし的な顔してる気がする。
シガルはなんか、あーって言ってる。顔は笑顔だけど。
ギーナさんは苦笑して目線をそらした。
兵士さんは笑顔だ。
ハクはお菓子を黙々と食べている。
あ、皆じゃなかった
「え、俺、何か変な事言った?」
「言ったね」
「言ったな」
ミルカさんとガラバウの声が重なる。
「まあ、タロウはしょうがない。こっちの常識とか、分からないし」
「え、なにそれ」
ミルカさんの言葉に、ギーナさんが食いつく。
「タロウは、この世界の人間じゃないんです」
「どういう事?」
「タロウは、次元の裂け目に落ちてこの世界に来たんです。だからタロウはこの世界の常識はあんまり分かってません」
ミルカさんの言葉にギーナさんとガラバウが驚く表情を見せる。
兵士さんは動じない。イナイと知り合いみたいだったし、聞いてるのかな?
「そっか・・・だからか、あの時私に動じず、尻尾が立派なんて言ったのは」
「あー、まあ、そうですかね。偏見とかは持ちようが無かったんですよね」
「なるほどなるほど」
ギーナさんが納得いったと頷く。
「でも、それじゃ大変だったでしょ」
「まあ、そうですけど、最初に会ったのがリンさん達だったので、助かりました」
「ああ、それで」
俺の言葉を聞き、ちらりとミルカさんを見るギーナさん。
「助けてもらってなかったら、今頃亜竜の腹の中です」
「懐かしいね。そんなに前の事じゃないのに、結構前に感じる」
「そうですねぇ」
当時の自分では、ここまで戦えるような人間になれるとは全く思えなかったな。
「それで、ミルカ・グラネスを紹介されて、技を磨いたと」
「いえ、えーと」
ギーナさんはどうやら俺の技術はミルカさん仕込みと思っているようだ。
でもどう返事するかな。ていうか言ってもいいのかな?
なんか、師匠たちの身分を知ると、気軽に言って良いのか悩むようになってきた。
「ん?違うの?さっき弟子って言ってなかった?」
「彼を鍛えたのは、ウームロウとグルドウル以外の全ての者です」
俺がなんて答えようと思っていると、ミルカさんが代わりに答える。
別に普通に言って良かったのか。
「・・・8英雄のうち6人が彼を鍛えたって事?」
「ええ」
「そう、という事は彼の全力の魔術行使はセルエス・ウムルの教えか・・・なるほど、ねぇ。なんか納得」
納得されてしまった。けど今回の俺は魔術行使は碌にしてない気がするけど。
「街を焼いたときは、なんであんなに弱めにしたの?」
「え、かなり精一杯でしたが」
「んー?でも、亜竜を一掃した時に魔術使ったんだよね?あの魔力ならもっと威力だせそうだけど」
魔術?ああ、そうか、多分ギーナさんは勘違いしている。
ギーナさんは大きい魔力を感じて来たって言ってたしな。あれは俺単独の力じゃない。
「多分、これを使った時の事ですよね」
俺はそう言って、技工剣を取り出す。
「魔道技工剣・・・私に会った時に持ってた剣か。もしかしてそれ、イナイ・ステルの?」
「ええ、イナイの制作物です。俺はこれで魔物を一掃しました」
「そう。でもそれをちゃんと使えるのよね」
「ええ、まあ」
「・・・面白いね、君。本当に面白い」
ギーナさんは心底楽しそうな笑顔で俺を見る。
「おい、タロウ」
「ん、なんだ?」
唐突にガラバウが呼ぶ。何だ一体。
「あの花は、その剣の仕掛けか」
「まあ、そうだな」
「花?」
ガラバウに答えると、ギーナさんがまた疑問の顔になる。
「この剣の攻撃の一つに、残滓が花のように見える物が有るんです」
「へえ、凝ってるねぇ。武骨な見た目とは大違いだ」
武骨、か。確かに。中央の杭と、ついている逆螺旋の刃。それもそこそこデカい。
起動してなくてもそのまま突けばかなり危ない。しかも今は刃が閉じているから、余計に切り裂く物には見えない。
「えーと、それで、これから何が有るのかなんですけど・・・」
話がどんどんずれて行ってるので、修正していく。
「あ、そうだね、ごめんごめん」
ギーナさんが苦笑しながら謝る。尻尾が何かピコピコ動いてる。
「ようは民衆への勝利報告だよ。私達はその場に居てほしいって事」
「勝利報告?」
「そ。あの魔物は私達にとっては他愛もない魔物だけど、普通の人にとってはかなりの脅威だからね。
それに向かった王女様の勝利報告だよ」
勝利報告。ふむ。でもなんでそこにミルカさんとギーナさんが要るんだろう。
「あの、ギーナ様、俺は余裕で倒せるほど強くないですからね?」
「わ、私も無理」
ガラバウとシガルが、他愛もないという部分に反論。
「あ、そうなんだ、ごめん」
ギーナさんは二人とも亜竜を余裕で倒せると思っていたらしく、ぽりぽりと頬をかきながら謝る。
そこで、奥の扉が開く。王女様自身が扉を開き、こちらを見ていた。
「皆さま、準備が出来ました」
そこの言葉に、皆動き出す。俺以外。
俺はきょろきょろした後、シガルに腕を引かれる。
「いこう、タロウさん」
「え、あ、うん」
まだ今一状況を理解しきれてないままシガルに手を引かれ、扉の向こうに、さらに有る扉を騎士達が開く。
すると、凄まじい音が聞こえてくる。
人の声だ。たくさんの人の声が、響いている。
扉の先に出ると、バルコニーのようになっている。ていうかバルコニーか。
王女様はしっかりとした足取りで進み、手すりぎりぎりで止まる。
すると声がさらに大きくなる。歓声だ。ものすごい歓声が響く。
俺達は王女様の少し後ろに立っている。凄い光景だ。かなり高い位置にいるから、人がアリのようだ。
密集してるから尚の事凄い。
王女様は眼下を見たままじっとしている。
さて、どういう勝利報告するんだろ。
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