第108話二人の覚悟に答えます!

疲れた。只今疲れを癒さんとベッドに転がっております。

城の一室を使わしていただいております。ふわふわベッドが心地いいです。

気になるのはバカでかいベッドが一つだけという事であろうか。またこのパターンか。


あの後、正直話の流れが自分にはさっぱりな上、国同士の大きな話し合いになってたのだが、何故か俺もその場に駆り出された。

シガルとハクも同席していた。だが俺達は一切言葉を発していない。だって口を挟むところが無かったんだもん。


ただ疑問はある。俺は何故かこの国にとって、重要な人間になってしまっているそうだ。わけがわからん。本気でわけがわからん。

余りにわけがわからな過ぎて、案内されて入ったこの部屋のベッドに転がりながら説明を求めた。


「この国の守り神は何だ?」

「竜だよね?」


まだ守ってくれるのか定かではないけど。少なくともハクは、彼らを守る気が無いように見える。

ハクはさっき、老に少し話をしてくると真面目な顔で出て行って、ここには居ない。

因みに出て行く際に、城の庭で成竜形態になり、飛び去って行ったので街は少し騒ぎになったらしい。

それを見ていた貴族たちは、なぜか俺の方を向いて恐怖していた。なんでだ。


「ならそれを従えるお前は何だ?」

「・・・従えてるわけじゃないんだけどな」

「ハクの態度はどう見ても従えてるのと同じだよ。あいつは自分にとって不本意でも、お前の言葉なら従うぞ」


ならこの間みたいに暴れたい暴れたいと駄々こねたのはどう説明するのでしょう。あれ結構大変だったぞ。


「まあ、お前がどう思っていようと、今やあいつらの認識は、お前かアロネスが一番重要人物になったんだよ」

「アロネスさんも?」

「ハクはなんつった?お前とアロネスが竜を倒したと言っただろう。ハクの言った事を聞いた奴らは、お前の言葉がこの国の存続に直結すると思ってるよ」

「え、なんで」

「ハクは言っただろう。お前にとって竜は障害にならないと。そしてその上でお前に手も貸すと。ならお前の機嫌を損ねることは、竜の襲撃を意味する。

今まで攻めてきた連中を、何の問題もなく撃退していた竜の大きな力が、自国に向くと認識したんだよ」


ああ、つまり、俺が竜を使って国を攻める可能性があると。なるほどなるほど。しねえよ。バカじゃないのか。


「するわけないでしょうが」

「あたしはそう思うよ。けどお前を知らない連中が、ぽっと出てきた竜より強い男の良心なんか、信じられるか?

恐怖のほうが勝つね。間違いない。王は知っていたが、信じてなかったみたいだ。ハク自身が言うまで、勝ったことは疑ってたみてーだな」


そうなのか。まあ、それは別にどうでもいいけど。それよりもこの事で俺有名になってしまうのかな?


「ねえ、今回の事って、国に知れ渡るの?」

「国中の貴族には知れ渡るな。国の政策が大幅に変わるからな。反発も強いだろうが、今までバカやってたツケだ。反発する奴らも、反発する『力』が無い。逃げだすか、従うか、どちらしかないな。

結局のところ、しばらくはウムルの意向という事になるからな。それに逆らうという事はウムルに逆らうという事だ。金がどれだけあった所でどうにもならねえよ。

平民にはウムルと友好を結び、ウムルを手本とし、より良い国を目指そうとしているとか何とかいう話が広まるんだろ」


なるほど、直接思いっきり影響のある貴族には深く内容が知れ渡るけど、一般人にはそこまででもないのか。


「なら俺の名前が知れ渡ることはあまり無いんだね?」

「一般人にはな。ただこれでお前の名は完全に他国にも知れ渡る。貴族や王、自由労働組合の支部長、商会や、商業組合の代表なんかは、お前の名前だけは最低でも知ることになるだろうな。

珍しい名前だから覚えもよさそうだし」


げっ、今日ほどこの名前を恨めしいと思ったことは無いぞ。

・・・でももう開き直るしかないのかな。あんまり有名にはなりたくないけど、知られてる方が面倒を回避できそうだし。


「凄いね!お兄ちゃん!一夜で有名人だ!」

「有名になりたいわけじゃないんだけどなぁ・・・」

「あたしと一緒にいる限り諦めろ。そのかわり国の仕事に関わらせるつもりは無い。今回みたいに同席して貰うのがせいぜいだ」

「それは助かる。政なんて俺には全くわからないからね」

「・・・そうでもないと思うけどな」

「そう?」

「少なくとも、あたしが説明したことを飲み込める時点で、ある程度やれると思うぞ。あとは経験だ」

「なるべくならやりたくは無いかな。人の命を背負うのと一緒でしょ、この世界の領主は」

「それが分かってるなら出来るよ」


だとしてもご勘弁願いたい。好きに生きるにはある程度の力がいるけど、力があると好きに生きられなくなってくる。

どの世界でも一緒だなぁ。あとは他者を思いやるか思いやらないか、そこ次第だな。

まあ、有名になってしまうのは諦めよう。でも国に誘われるとかは全力でお断りしよう。俺は手の届く範囲以上の人間を守るような器量は無い。


「さて、今日は疲れたし、寝るか?」

「イナイのほうが疲れてるでしょ」

「まあ、な」

「今日はゆっくり寝ようか」

「シガルはどうする?」

「あたしも疲れた・・・ドレスも脱ぎたい・・・」


シガルはドレスを着ているせいか、今座っている椅子の背もたれにすら寄りかからない。本当は椅子に座るのも怖い様だ。

俺はもう気にしてもしょうがないと開き直っている。でなければベッドに倒れこんでなどいない。


「あはは、すまんすまん。もう着替えようか」

「うん・・・」

「あ、おれも普段着に着替えたい」

「おうよ」


そう言ってまたクローゼットを出すイナイ。もはや見てる側の気分としては青いあいつを彷彿とさせる。

イナイに出された服を着て、明日着る用の服も出しておく。明日のは今日のより比較的ラフな感じだ。

因みに着替えは見てません。いつも通り後ろ向いてようとする前にイナイが着替え始めて焦った。


「やっと解放された・・・」

「お疲れシガル」

「あの場でも一言も発してないのに疲れたよ・・・」

「あはは、俺もあんまり言葉は発してないけど疲れた。お互い向いてないね、こういうの」

「あたしも別に、疲れないわけじゃないんだが?」


少し口をとがらせて言うイナイ。ちょっと珍しい。思わずじっと見てしまった。


「な、なんだよ」

「いや、そういう表情珍しいなって思って」

「・・・お前には自分に素直になる事にしたんだよ」

「・・・そっか」


この間の事が少なからず影響があるのかなと思う。そう思うと愛おしくて思わず抱きしめてしまう。

するとイナイは当たり前のように手を回し抱きしめてきた。今までと違い、すごい自然に。

その変化にシガルが少し驚いていたが、その後の表情はとても嬉しそうだった。


「ねえ、お姉ちゃん、もしかして」

「・・・うん、もう平気だと思う。変に考えるのもやめたよ」

「そっか、良かった」


なんだろう、またこの二人は何か相談していたのだろうか。

二人の会話に首をひねっていると、シガルが近づいて来て、イナイが離れる。

二人は顔を見合わせると、服を脱ぎ始めた。


「え、ちょ、なに!?」


あまりに突然の脱衣に俺は狼狽える。狼狽えてるうちに二人は衣服を下着以外脱ぎ、俺に近づいてくる。

俺は思わず後ろに下がり、ベッドに当たり腰を落としてしまう。

そんな俺に構わず二人は近づいて来て、各々俺の上着の脱がして押し倒し、手を這わせ、キスをしてくる。

頬に、首に、胸に、唇に。俺は状況把握が全くできずにパニックになっている。


「なあ、タロウ、まだお前は覚悟が決まらないか?お前が嫌ならしない」


そう言ってうるんだ瞳で見つめてくるイナイ。


「お兄ちゃん・・・」


俺を呼び、それ以上言葉を発さずに体を摺り寄せてくるシガル。


「え、あ、そ、その」


俺はせまられているという事実は理解できるものの、その状況に頭が処理しきれず、狼狽える。

狼狽えているとシガルが俺の手を取って胸に当ててくる。それ自体に慌てたものの、そこでやっと少し落ち着きを取り戻した。

心拍数がとんでもない。手も震えている。国境の街の時も、今も、パッと見シガルはそこそこ余裕そうに見えた。

けど違うんだ。この子も緊張してるし、勇気を出してるんだ。けどその顔は俺に向けてにっこり笑っている。

そのままイナイに目をやる。イナイも似たような感じだ。今イナイは俺の上にかぶさってるような状態だ。胸に添えられた手はシガルと同じように震えている。


これを自分がまだ覚悟をしてなかったからと、止めるのか?

違うだろう。俺はイナイと共にあろうと決めた。イナイの両親の前でも誓った。

シガルは最初に会った時からずっと慕ってくれている。旅に出て、前より良く話すようになっても変わらない。

むしろ前より積極的になってきたぐらいだ。

俺に付き合ってくれている二人が。我儘に付き合っていてくれている、この二人が勇気を出している。俺に受け入れてほしいと。


俺は二人を抱きしめる。


「ごめん、ヘタレで。待たせてごめん。そっちから勇気を出させるような真似させて、ごめん」


抱きしめながら謝る。そうだ、受け入れよう。この二人を全力で愛そう。俺を愛してくれる二人に。俺ができる限りを返そう。

子供ができたときは流石にウムルに戻って仕事を探そうかな。流石にそこまで自分勝手は出来ない。

イナイには、やろうと思えばどこだって生きていけると言われたんだ。その時は二人のために全力で頑張ろう。


俺はその覚悟も決めて、二人にキスをする。唇を重ねている方は甘い吐息を吐きながらキスを受け入れ、その間片方は俺の首や胸にキスをする。

なんていうか、二人とも緊張してるのは分かるんだけど、行為自体は凄い自然だ。腹に上目づかいでキスをされたときはドキッとした。


「ねえ、タロウさん、触って・・・」


シガルはいつものように呼ばず、名前で呼び、俺の手を取りその手を自分の下腹部に添える。


「あ、あたしも・・」


イナイも同じように反対の手を取る。

ぶっちゃけてしまうと、童貞の俺にはかなり難易度高い状況である。でも二人の反応を見つつ手を動かす。

最初こそくすぐったそうだったが、段々と甘い声になる。それだけで頭に血が上って倒れそう。

ついさっき覚悟を決めたはずではあるが、あまりにも童貞には刺激が強すぎる。


「タロウ・・苦しそうだな・・」

「そうだね・・」


しばらくして、唐突に二人が言った言葉を、最初は理解できなかったが、目線を見て理解できた。

頭はいまだに少しついていけてないが、体はがっつり状況について行ってるようだ。

二人がかりで下を脱がされる。下着も一緒に。二人もそれと同時に下着を脱ぐ。

二人は目の前に有る物に息をのむ。


「・・・お、大きいね」

「・・・あ、ああ」


いや、普通だと思います。あなた達が小さいせいでそう見えるんだと思います。

ていうか、まじまじ見ないでください。すごく恥ずかしいです。


「あ、あたしが先で、いいんだよな?」

「えと、うん、どうぞ」


二人は事前にどちらが先かを相談していたようだ。こうなった以上口に出して突っ込まないけど、なんでそういう相談してるの?


「タ、タロウ。優しくとか、気にしなくていいからな?」


そう言ってイナイは転がる。そういわれて優しくしないわけがない。童貞で余裕もあまりないが、相手の事を考えない行為はしたくない。

シガルにも同じ事だ。俺はこの後ゆっくりと夜遅くまで二人の相手をし、部屋には二人の甘い声が響いていた。

早めに寝る予定だったが、結局寝たのは深夜になってからになった。


そして童貞だった俺は、こういった行為は下手をすると訓練より疲労すると知ったのであった。

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