第95話コネの力を見せつけます!
俺はのした連中をハクにお願いして引きずってもらいながら組合へ行く。
場所が分からないのでお姉さんにお願いする。そういえば名前聞いてないや。
「あの、すみません。お名前聞いてもいいですか?俺はタロウって言います」
「タロウ君か。私はフェレネという」
「フェレネさんですね、よろしくお願いします」
「ええ、所で私も一つ聞いていいかしら?」
「はい、なんですか?」
「あの、男たちを引きずってる子・・亜人、よね?見た事ない種族だけど・・・後、言葉が・・言葉、なのよね?」
ハクが気になっていたか。まあ当然か。
「竜人族っていう種族で、かなり遠いところから来たらしいです。竜と一緒に生きていたので竜の言葉しかしゃべれないらしいんです」
「そ、そうなの。そんな亜人もいるのね」
しょうがないとはいえ『亜人』というカテゴリーは人の口から出てくる。俺も偶に言ってしまうから、人の事は言えないのだけど、なるべく言いたくないし、聞きたくない。
前はそうでもなかったけど、この間の出来事で『亜人』という単語が好きになれない。
「すみません、個人的なことで申し訳ないんですが、彼女を『亜人』と言うのはやめていただけませんか?」
「え?あ、うん・・・わかったわ・・」
お姉さんは微妙な顔をしたが、了承してくれた。この人も『亜人』というものに何か思う所がある人なのだろうか。
それならば仕方ないのかもしれないが・・。
「貴様ら覚悟はできているのだろうな。組合員の争いは処罰が下るものだぞ」
それは知ってる。けど俺達に言うのはおかしくはなかろうか?しかも個室とかじゃなく、普通にほかの組合員も聞いているところでだ。
「お前たちは、自分の階級に合わない仕事をしていると指摘されたことに激高し、こいつらを殴り飛ばした。そういったことをする組合員に組合証を持たれるのは困るな。組合証没収の上再登録できないように本部に申請しておく」
「いやー、いきなりそいつが殴ってきてさぁ、俺達ほとほと困り果てたぜ、なあ!」
「いやいや、ほんとホント」
無表情で俺達に処分を与えようとする現地組合支部長と、それに追従する男ども。
なるほど、グルか、道理で素直に従うと思った。まあ正直この程度は予想してたけど。
よく周りを見ると、いやそうな顔や、下を向いている人が多い。なるほどな。
「な、そんな馬鹿な!仕事に関しては何も問題なくやっていた上に、先に剣を抜いたのはあいつらだ!」
「証拠はあるのか?お前たち組員以外が見ていた証拠は?ああ、依頼主もだめだぞ、脅されている可能性がある」
「そんな!?」
フェレネさんが噛みつくも、あっさりいなされる。
待ち合わせの場所にも理由があったか。これはもしかすると、あの代表も知ってるのかな?
フェレネさんは知らないっぽい。よその人なのかもしれない。
「そうですか、ああそうそう、俺こういうもの持ってるんですよ」
そういって2枚の手紙を出す。一つはヤカナさんにもらった物。一つはベレマナさんにもらった物だ。
「む、なんだ・・これは・・!?」
支部長の表情が変わったことに、男たちも訝しむ。
「す、少し待っていろ!」
そういって奥の部屋へ行く支部長。
「なんだぁ?」
「さあ?」
男たちは何が起こったんだろう?と首をかしげている。実のところ俺も中に何が書いてあるのか見ていないので、これがどう働くかわからなかったりする。
うん、確認しておくんだった。
正直どうにもならなかったら必殺イナイ先生お願いします!を使おうかなというせこい考えしています。
しばらくすると支部長が青い顔をして戻ってきた。こころなし震えている気がする。
「タ、タロウ様とは、あなたの事ですよね?」
「ええ」
組合証出して確認する前に処分を言いだしたので、この男は俺の名前すら知らなかった。
ていうか、様ってなんすか?
「そ、そちらにいらっしゃるのがハク様ですか?」
『そうだが?』
「そ、そうですか。ということは」
そういってちらりとイナイを見る。イナイが支部長に目を向けるとバットこっちに目線を戻す。
ああ、手紙の内容、わかっちゃった。
「も、申し訳ありません、こ、この男たちは厳重に処分しておくので、ど、どうかこのことはご内密に」
支部長の言葉に男たちは驚愕の表情を向ける。口をパクパクさせていて滑稽だ。
いつもと違うのであろう雰囲気に周りの人たちもガン見している。
「・・・・どの事ですか?」
「ひ、人が悪い、お分かりなのでしょう?」
「ええ、そうですね、支部長が三下とグルになって不正を行っていたことですよね」
わざと大きな声で言う。皆が聞いているここで、皆が聞こえるように。
見ると、受付のお姉さんまでガッツポーズをしている。どこまでやってんだこのオッサン。
「こ、ここでは何なので、奥の部屋で」
「ここでいいです」
「で、ですがここでは言いにくい事も」
「有りません。全部ここで話しましょう」
引かない。こういう分かりやすい外道に引くような人間になる気は無い。もちろん正面から行ったら無理な場合は引くけど、この場合は押さなきゃだめだ。
「ねえ、受付さん、ちょっと聞きたいことあるんですがいいですか?」
「はい、なんでしょう!」
すげーいい笑顔といい声。
「もし組合員が不正を行っていたり、そのせいで他の組合員がいわれのない処罰を受けていた場合どうなるんでしょうか?」
「不正の内容によりますが、あまり酷い場合は組合証の剥奪。及び再登録不可に加え、犯罪者としての処分を受けることになるでしょう」
受付の人がそこまで言うってことは、そういう事と考えていいのかなこれは。
「も、もちろん、この男たちのやった事はすべて調べて、他の組合員にも間違いがなかったか調べますので・・・」
その支部長の言葉を聞いて、手を取り合って喜んでいる人がいる。泣いている人もいる。
組合に登録し、組合で仕事をしている人たちにとって、処分はやはり辛いものなのだろう。それがいわれのない処分ならたまったものではないだろう。
「ねえ、受付さん、もしその不正に支部長がかかわっていた場合どうなるんでしょうか?」
「・・・・少なくとも最低でも首にはなるでしょう。国としても犯罪ですから」
あれ、ちょっと言葉が濁った。なんでだ?
「そしてその不正をただせなかった職員も同じく国から何かしらの処分は下るでしょう」
ギリっと奥歯をかみしめるような、そんな音が聞こえた気がした。
なるほど、最初のほうは知らないうちに不正に手を貸して、告発すら出来ないレベルまで不正をしていたと。
そのせいでほかの職員も何も言えない状態だったのかな?
俺がその思考にいたったことに気が付いたのか、支部長は明らかにほっとした顔をした。むかつくなこいつ。
思わず俺は睨みつける。
「ひっ、ほ、本当にこの男たちの処分はしておきますので、ど、どうか、お許しを・・・!」
「あんだと!?話が違うだろ!黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがっ」
「黙れ!」
支部長はそういって男を殴り飛ばす。あら、意外と強いじゃないの。もしかしたら支部長はそこそこ腕が立たないとなれないのかな?
「ど、どうかお許しください」
地面に頭をこすりつけて謝罪する支部長。その姿に同情なんて浮かばない。こいつとその男のせいで何人の人間が苦しんだかわからないのだから。
だから俺は、イナイには悪いけど一つ決意をする。
「わかった、じゃあ取り合えず、そいつらの処分と、そいつのせいで迷惑をこうむった組合員や依頼者にはちゃんと対応しろよ」
「は、はい」
「後、手紙返せ」
「は、はい!すみません!」
俺は男から手紙を取り返したら、受付の人にこそっと言いに行く。
「あの男だけが処分が行くように何とかするので、少しの間耐えてて下さい」
「・・・!」
こくんと頷く受付さん。俺の素性など聞かずに信用してくれたようだ。
「俺はこの街にまた戻ってくる予定がある。その時に似た様なことになってたら、わかってんな?」
「は、はい、もちろん!」
「じゃ、行きましょうか?」
「あ、ああ・・・」
何が起こったのかわからないフェレネさんを連れて組合所を出る。あ、しまった商人のおっさんがグルなのか聞くの忘れた。
・・まあいいや、有る事無い事言って釘刺しとこ。
その前にイナイに謝らないといけなことができた。俺はイナイがものすごく嫌がっていることを王都でしないといけない。
「イナイ、ごめん、俺」
「いいよ、気にするな。お前のそういうところ、好きだよ」
「・・・イナイ」
言う前にすべてお見通しと言われてしまった。この人ホント男前だ。
俺はイナイが前に嫌がっていた、王への謁見をしに行こうと思っている。
そこでこの男への処分と、この男だけへの処分をお願いしようと思っている。
それには――。
「ハク、お願いがあるんだ」
『ん、なんだ?』
「王都で俺と一緒に王への謁見についてきてほしい」
『ん?なんかよくわかないけど、いいぞ?』
「ごめん、ありがとう、ハク」
竜の、竜神の同行も必要だ。この国の守護者。竜のいう事は無視できないだろう。
そうだ、手紙の内容、一応読んでみよう。
・・・・うん、事実しか書いてない。けど事実がとんでもない。
ベレマナさん。イナイの素性と、ハクの事もしっかり書いてある。何故か俺がその二人を従えてるってなってるけど。あと見逃せない一文として、王が重要視してるって書いてる。
それに比べれば、組合のほうはまだマイルドだった。素手で斧砕けるとか、ナマラさんより強いとか、異常種を単独で倒したとか、そんな、俺がやった事が事細かに書いて・・・うん、マイルドじゃないわ。
何なの、なんでこんなに事細かに俺がやった事書いてるの?
ていうか、ナマラさんより強いっていうのは、あの人が勝手に言ってるだけだからね?
見てしまってからなんだけど、これ俺が見ない前提で書いてるよね。でも封が空いてるし仕方ない仕方ない。
そう思いながらきれいに戻す。うん、キレイキレイ。
「まあ、大丈夫か?」
「いいのかなぁ・・?」
イナイとシガルがその行動を見て疑問を持っていたが、気にしないことにした。
さーて、商人のおっさんはどうしてくれようかね!
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