第93話護衛依頼を頼まれます!

「商隊の護衛、ですか」

「ああ、王都まで行くなら頼みたい」


俺達は朝早く、もうちょっとしたら出るつもりで、準備をしていた所にヤカナさんが訪ねてきて、そう頼んできた。


「えっと、みんな、どうする?」


一応ここはみんなの意向を聞いておこう。


「どっちでもいいぞ。お前の好きなほうで」

「あたしもお兄ちゃんについていくよ!」

『私はもとよりタロウについていくだけだぞ』


あ、決定権が俺に渡された。

ここで有りがたいのは、俺がどう判断しようと不満を後で言わない、本当に「俺の好きなようにしていい」なのがとても有りがたい。

さて、そうなると個人的には受けてあげたい。わざわざ俺に言って来たって事は受ける人が少なかったんだろう。

でもその前に詳細を聞かなきゃ。


「俺達だけですか?」

「いや、途中の街まではバダラとレヴァーナもついていく。だがあいつらは途中の町までで終わりだ。その後は、お前たちだけか、そこで雇った組合員と一緒になるだろうな。日程は街での待機も含め、全部で10日予定だ。

嫌なら構わないが、向こうさんも組合が信用出来て腕も立って都合のつくやつってことで、話を持ってきた。お前さん達が王都に行く予定ってのを聞いてたからな」

「はあ、二人は途中の街ですか」

「ああ、あいつらはそこまでは行く気は無い。一応先方にはあいつらより腕が立つので、その後の護衛を雇わなくて済むという話をしてる。次の町で急いで護衛探すよりは足元見られないから安上がりで向こうも歓迎してる」


ほむ、なるほど?

その商隊は王都まで行きたいけど、行くには護衛がいる。でも、護衛も途中の町までならいいよという人間しかおらず、その街で雇わないといけない。

急ぎで雇うと足元を見られるから、王都まで行ける人間が居るなら少しでも安く済むからそれがいいと。

そういうことですか。

まあ、別にいいかな?急いでるわけでもないし、ゆっくりでいいってこの前二人も言ってたし。


「良いですよ。報酬はもう決まってるんですか?」

「助かる。額は王都まで行ってくれるならそこそこの額を用意してある。少なくとも1月は余裕で暮らせる額だ」


それは助かる。今までずっとイナイに世話になってるから、自分の事は自分で払えないとね。


「今日すぐですか?」

「ああ、もう少ししたら出る。実はもともと引き受けてたやつが行けなくなってな。本当に助かる」


なるほどね、代理を探してたのか。それで王都に行く予定の俺達だったわけだ。


「じゃあ、すぐ用意して出ます」

「ああ、商隊はもう門にいるが、バダラとレヴァーナは組合で待ってるから、いったん組合に行ってくれ。受注手続きはこっちでやっておくから、終了の手続きは王都で大丈夫だ。ああ、3人とも護衛という事で行くから安心しろ。流石にそちらのお嬢さんは無理だが」


イナイを見て申し訳なさそうに言う。


「当然でしょう。私は組合員ではありませんので。私の事はお気になさらず」

「すまん。では頼む。朝から失礼した」


そういってヤカナさんはドアを閉めて行く。


「さて、ならとっとと行くか」

「そうだね。もう用意は済んでるし」

「護衛かー、魔物とかかな!」

『とりあえず守ればいいんだな!』

「魔物より、獣より、おそらく野盗の類の警戒だろうな」

「そう、なんだ」

「街道をいくだろうからな。森や山を突っ切るんじゃなければ、はぐれに数匹出くわすだけだ。そこまで人数はいらんよ。まあ、まれに危ないのも出るからいるに越したことはないがな」


なるほどね。街道はあんまり危なくないのね。







「お、来たな」

「ハクちゃーん、みんな、もうちょっとだけよろしくねー!」


バダラさんとレヴァーナさんが俺達を見つけて声をかけてくる。

レヴァーナさんにハクが一番最初に呼ばれるのは最近のデフォルトである。


「んー、今日の格好も可愛いわねー。スカート多くて可愛いけど、パンツ姿も凛々しくていいわね」

『そうか?私はどっちも好きだぞ』

「ほら、良いからとっとと行くぞ」

「あ~まって~、抱かせて~」


長くなりそうと判断したバダラさんがレヴァーナさんの首根っこをつかんで引きずっていく。あの人ホントハク好きだな。






「貴方達が、護衛、ですか?」


商隊に合流すると真っ先に言われたことがこれである。すごく不信そう。


「ああ、そうだ」


バダラさんが答えるが、ものすごく納得いかない顔だ。

この人が代表かな?商人っていうがたいじゃない。めっちゃいかつい。顔だけは笑顔が似合いそうな顔だけど、体つきは格闘技でもやってんのかって体だ。


「いや、その、支部長からは腕の立つ方と聞いていたのですが・・・」

「俺達じゃ不満か?」

「ああ、いえ、あなた方二人は良く知っておりますので、何も不満は。ですが後ろの方々は・・・」


うん、わかる。俺達見た目はどう見ても子供4人組だもんね。不安だよね。


「問題ない。こいつらは俺達より腕が立つ。聞いてるだろ?」

「そ、そうなんですか・・・分かりました、では行きましょうか」


全く納得していない表情で応え、出発する。うん、まあ、そうよね。わかってたけどそうなるよね。





次の街までの道中は本当に平和だった。獣がちょと出てきたぐらいで、本当に何もなかった。

あえて言うなら、イナイは護衛ではないので、お金をちょっと払って馬車でのんびりしていたぐらいであろうか。

歩くって言ってたけど、イナイは別に護衛じゃないしね。俺とシガルでお金出して乗っけてもらった。

俺達が出したので渋々馬車に乗るイナイという図になった。


そういえばナチュラルに馬車って思ってるけど、引いてるの馬っぽい何かである。でも俺はめんどいから馬と認識している。牙はえてるけど馬。馬です。肉も食うけど馬です。

というか、最初の頃の翻訳での認識が馬である。なのでもう馬以外思えない。

だって、猫っぽい何かとか、犬っぽい何かとか、牛っぽい何かとかいろいろ居るんだもん。

似てるものはもうそれでいいや。覚えるのも数多過ぎてめんどい。そのせいで固有名詞出てきたときさっぱり分からんこと多いけど。

日本でだって、正直大雑把な種類しか覚えてないもん。似てたら一緒一緒。


途中の野宿も、ミルカさんやリンさんと何度か樹海の中で寝泊まりして帰ったこともあるので、慣れたものだ。

シガルはちょっとなれない様子だったのと、ハクが人型維持したまま寝ないといけない事に苦労したぐらいであろうか。

交代で起きて警戒てのもいい経験だろう。とはいえ、寝るメンツは馬車の中で寝ているので、屋根があり、風よけもある。

まあ、雨が降らなかったので、それは気にしなくてもよかったけど、地面に寝るよりは良いだろう。

俺は地面も慣れてるけど。いやー、いまさらながら本当に色んな事やらされてるな。その辺の獣狩って、適当にさばいて食うとかもやったっけ?

リンさんはとにかく内臓以外を掻っ捌いて焼くだけだったなぁ・・・・。


そんなこんなで次の街。ソッホルトホーソという町に着いた。言いにくい。

ここで二日待機して、次は王都に向かうそうだ。道中村もいくつかそばにあったらしいが、街道を突っ切ってこの街に来ているので、寄っていない。

なので観光第2の街はこことなる。


ちなみにイナイは入る前に別行動で入っている。ハクはもちろん組合証で入ってもらった。


「では、二日後に、またよろしくお願いします」

「はい、では」


そういって商隊の人達と別れる。未だに信用は得られていない感じがする。何よりハクがものすごく警戒されているのが分かった。

こればっかりはしょうがないのかな、悲しいけど。


「それじゃあ、俺達は一泊してかえっかね」

「そうねー。ああー、今回だけは王都まで行っても良かったかなー!」


そういってハクを抱えるレヴァーナさん。ハクは貰った干し肉をまぐまぐ食べている。お前ホント餌付けされてるね。


「この後何もないならそれでもよかったけど、今回は帰らないとダメだからな」

「そうなのよね・・・ううー・・」


そうか、この二人、用事があるからここまでなのか。


「こんどこそじゃあね、ハクちゃん。いつかまた会いましょうね」

「じゃあな」

『またなー!』

「また、いつか」

「またねー!」


俺達は本当にサヨナラの挨拶をして別れる。

とはいえこの街で一泊するらしいから、もしかしたら明日も会うかもしれないが。


「そういえば、ハク、大丈夫なの?」

『何がだ?』

「いや、土地はなれるの怖いとか何とか言ってなかった?」

『飛べば半日かからないぞ、ここ』


そうでした、あなた竜ですもんね。成竜に変化できるんですもんね。人間の徒歩スピードなんか大した距離じゃないですよね


「まだお昼頃だし、何か食べて、散策しようか」

「さんせー」

「その前に宿だ。先に探すぞ」

「あ、はい」

『やっと元の姿に戻れるな』


イナイの言う通り、まず宿を探して、それからごはんとなった。宿はすでにヤカナさんからいくつか教えてもらっていたので、そこに行く。

さて、どこがいいかなー?

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