第85話組合でのもめ事を力ずくで解決します!

組合を出て裏手に回ると、訓練所というより、簡易決闘所と言ったほうが正解な気がする場所があった。

周囲にぐるりと観客席っぽくイスとテーブルが置いてあり、石で作られた舞台がある。

とはいえ観客席はコロッセオをのようなものではなく、木で作った簡単なテーブルと椅子が置いてあるだけなので、小さなライブ会場といったほうが近いかもしれない。


その舞台に今、二人の男女が立っている。

こう説明すると何やら今からダンスでも始まりそうだ。けどあの二人はお互いを睨みあっている。


「勝敗はどう決めるんですか?」

「そうだな、まいったと言ったら負けでどうだ」


ふむ、自分が負けを宣言したら負けか。止めに入る人間は?


「もし言えなくなったら?」

「そん時は、死ぬまでかもなぁ。なんせ敗北したと認めたかどうかわかんねぇからなぁ」


男はにやりと笑いながら言う。それでシガルが怖がると踏んだのだろう。

だがシガルも笑う。まるで肉食獣のような笑みで。


「いいんですね、それで」

「あ?」

「止める人間が居ないという事は、あなたが、あなた自身が私への敗北を認める言葉を口にしなければいけないという事ですよ?」

「・・・このガキ!」


男は一瞬何を言われたのかわからなかったようだが、すぐに言われた意味を理解した。

この小さな女の子に、自分が負けたと宣言する恥ずかしい行為をするんだぞと、挑発されたんだ。


「いいぜ、そういう気なら、脅しじゃ済まさねえ」

「あれ、脅しだったんですか?もうちょっと脅し方を勉強したほうがいいですよ?」

「このっ・・・!」


シガルさん、なんか怒りのあまりキャラ変わってません?


「なあ、タロウ、あの子あんな子だったの?」


あんまりにあんまりな様子にナマラさんがこそっと俺に聞いてくる。


「いえ、普段はちょっと活発なだけのいい子なんですけど・・・。よっぽどハクが貶されたのが腹に据えかねたみたいですね」

「友達思いのいい子じゃない」

「いや、レヴァーナ。あの変貌ぶりはちょっと・・・」

「こんな可愛い子を化け物扱いしたのよ。怒っていいわよ」


バダラさんが顔を顰めながら反論するが、レヴァーナさんはシガル支援な感じだ。ていうか、気が付いたらハクを後ろから抱きしめていた。


『私、可愛いのか?』

「ええ、とっても可愛いわよ」

『そうか、私可愛いのか』


なんて和やかな会話がなされてるが、もはやシガルはそんなの知ったこっちゃない状態である。

シガルー、ハクはめっちゃノンビリしてるよー。いいのー?

いや、あの発言は俺も腹が立ったけどね。


「おい、ナマラ」

「ん、どした支部長殿」

「その呼び方止めろ。あの子どうなんだ?」

「まあ、本気でやったらあいつじゃ話にならないだろうな」

「そうか、ならいい」


ん?何その会話。ならいい?どういうこと?シガルが勝ったほうがこの人たちにとってはいいことなの?

うーん?あいつ組合でも問題視されてるとかなのかな?

こちらが雑談してる間に男は剣を抜き構える。おいおい、ちょっと待てよ、木剣とかでやるんじゃないのかよ。


「おい、いくら何でもそれはないだろ!」


思わず俺が同じことを言おうとしていたら、バダラさんに先を越された。

なんかさっきから先越されてばっかりだな。


「なんですか、バダラさん。こいつが言ったんですよ?参ったと言えなかったら死ぬまでやるという事で構わないって。なら獲物がなんでも関係ないでしょう?」

「だからって・・・!」


シガルの実力を知っているバダラさんだが、それでもあれは強化準備をしてからだと知っている。

だからこそ、今のシガルはただの女の子。その女の子に本物の剣を抜く。その行為を咎めてしまうのは当然だろう。

だが確かに男の言い分も合ってはいる。シガルが言ったんだ。それでいいと。そしてそれ以外の確認はしていない。


「いいよ、それで」


シガルがもはや敬語すら使わず言い放つ。やばい、たぶんあれ完全に切れた感じがする。さっきのでも大分怒ってたけど、あれでも抑えてたみたいだ。


「恥も外聞も気にしないで来ればいい。それだけ敗北が苦しくなるんだから」

「いいぜ、もう許さねえ。殺す」


あ、言っちゃった。流石にやる前に明言しちゃだめだと思うんだ。横を見るとナマラさんとヤカナさんが睨んでいた。


「あいつ、組合証しばらく凍結だな」

「ちゃんと他の支部にも書類回しとけよ」

「当たり前だ」


あーあ。しーらね。凍結がどれだけきつい事かは分かんないけど、そこそこの処分だろうな。南無。


「抜けよ。それぐらい待ってやる」

「要らない」

「そうかよ!」


男はシガルの返事を聞くなり踏み込み剣を振る。

対するシガルは無手の上、構える前の無防備な仁王立ち。


とまあ、はたからはそう見えるだろう。だが違う。シガルは『あそこに立った時点』で既に戦闘態勢を取っている。

両の足は軽く内に向き、靴で分かりにくいがつま先だけで立ち、重心もそれに合わせて前後左右どちらにも動けるように。

腕もだらんと両手を下げているわけではなく、肩と肘が少し上がって、どの体勢からでも打撃が放てるようにしていた。

ならあれはもう構えだ。ミルカさんの全方位に対する構えと似たようなものだ。


シガルは迫りくる剣を当たるギリギリまで引き付け、躱し様に右ストレートを顎に入れる。

綺麗なカウンターで男は沈む。でもあの倒れ方はやばい。下は石だ。当たり所次第では死ぬかもしれない。

だが、シガルは倒れる男の襟首をつかみ転倒を防ぐ。そしてゆっくりと床に置き、そのまま男を見据えて動かなくなる。


あまりの一瞬の攻防に誰もが言葉をなくしていた。

いや正確にはこの状況が見えていた俺とハク以外はだけど。

シガルは相手を舐めていた訳じゃない。あの子は組合所で言い合いをしていた時からずっと相手の動きを観察してた。

その一挙一動を、タイミングを、呼吸を、文句なしの一撃を入れるための観察をしていた。その結果の一撃だ。


『あの程度の男がシガルに勝てるわけがないだろう』


ハクのその言葉で皆が再起動した


「と、とりあえず嬢ちゃんの勝ちだな」

「す、すげえな。強化しなくてもあんな動き出来るのかあの嬢ちゃん」

「よくやったわよシガルちゃん!」

「あの時よりは遅いな」


ナマラさん達の言葉も今のシガルは応えない。

だってシガルはまだ


「どうしたんだ?嬢ちゃん。もう終わったろ?」


動かないシガルに怪訝な顔をしつつヤカナさんが問う。


「終わってません。まだ敗北の宣言を聞いてません」


その言葉にざわつく。まさかこの少女がそんなことを言い出すとは思ってなかったんだろう。

でも俺は思ってた。絶対言うと思った。ハク?知らん!


「さっきの攻撃は意識を切るには十分でしたが、完全に断ち切る一撃じゃありません。すぐ目は覚めます」


いや、覚めるだろうけど、たぶん立てないと思うし、立ててもろくに動けんよ?

経験者が言うんだ、間違いない。うん、もちろん相手はミルカさんですが何か?

あ、イナイにも一回やられたっけ。あの時は完全に意識断ち切られたけど。


「だ、だが起き上がってもろくに戦えないだろう」

「でしょうね。けど彼が言ったんです。敗北を認めたほうが負けだと。ならその言葉は全うしてもらわないと困ります」


怒り心頭で振り切れてる今のシガルは、男の敗北を聞かないと収まらないようだ。

いや、一発殴って、少しだけ冷静に戻ってるっぽい?


「う・・あ・・?なん、で、あれ?」


男はシガルの見立て通り意識を回復した。だが状況が分からず混乱している。


「起きましたね。じゃ立ってください。続けますよ」

「あ・・え・・?」

「負けたと認めるまで戦ってもらいます。ああ別に立ってなくてもよかったんでしたっけ。ルールはそれだけでしたものね」


そういうとシガルはまだ混乱から回復していない男のみぞおちを蹴り、うめく男の後頭部に踵落としを入れる。容赦ねえー。全然冷静じゃないわあれ。


「げふ、がはっ・・・!」

「ほら、早く起きないとどんどん行きますよ。」


シガルは男が倒れそうになるたびに襟首をつかみ半立にさせると、容赦なく、急所と顔を殴りつけていく。

あれじゃ呼吸もろくにできないから、回復なんかする暇がない。

大昔のルールが甘い時代のボクシングのように、一回ダウンした後も立っている限り殴られるという様相だ。

ただし、立っているのではなく、立たされているのだが。


「おいおい、まじかよ。あの子こえーな」

「よっぽど怒ってたみたいね・・・・」


思わずそういう声が聞こえるのは仕方ないかもしれない。

男は段々と目も腫れてふさがり、原形を留めていない状態になってきている。

腕も足も青く晴れている。何よりたぶん呼吸がまともにできなくて、降参の言葉を言うより生きるために呼吸をするので精一杯だろう。


「あれはまずいな。あいつもう、9級以下でしか組合員としてはやっていけんかもな」


フーファさんが静かに言う。なぜなら男はもう、戦意などどこにも見えない。もはやただ殴られるだけの人型になっている。この戦いがトラウマになる可能性があるからだろう。

そんな状態の男に、シガルはまた一撃、みぞおちに拳を突き入れようとする。ちょっとやりすぎだ、シガル。


「おい、いい加減しろ!」


止めようと思ったら、あの男の仲間らしき男が叫んだ。

その声にシガルは拳を止める。

男は今まで無理やり立たされた動作がなくなったことで地面に倒れ伏す。


「いい加減にしろ?おかしなことを言いますね。この方がこのルールを言ったんですよ?」

「もう無抵抗だったろ!無理やり立たせやがって!」

「じゃあこの方の最初の一撃はどう言い訳するつもりですか?負けたと言えば負けというルールにも関わらす、最初から殺す気の一撃を放ってきた事は?

私はずっと無手で、致命の攻撃はしてません。本来止められるべきはどちらですか?いい加減にしろと言うなら、最初のあの時点で止めるべきでしょう。違いますか?」

「く、口の減らないガキだな!」


言い合っている間に倒れた男はやっとまともに呼吸ができるようになってきたようだ。


「ズビバゼン・・ズビバゼン・・ユドゥジデグダザイ・・・」


男はもう表情はわからないが、行動が完全におびえている。自業自得とはいえ、もうちょっと早く止めるべきだった。

ガタガタと怯えながら、男は謝罪の言葉を繰り返す。


「人を殺すと宣言しておきながら、自らがそれに近い目に合えば許しを請うんですか。人間の屑ですね。あなたのような人間が私の友達を貶す権利はありません。

いえ、今のあなたはもはや人間ですらありませんね。人としての誇りすらない、他者を殺し、自らの死は怯え逃げるその辺の動物や魔物と変わりません。亜人はどちらなのでしょうね?」


シガルは怯える男に冷たく言い放つ。気持ちはわかるが、それもやりすぎだと思う。

肉体的にぼこぼこにした上、精神的にも追い込んじゃダメだろ。


「シガル、その辺にするんだ」


硬い俺の言葉に、俺のほうを向くシガル。


「・・・でも」

「気持ちはわかる。でもやりすぎだ」

「・・・はい、ごめんなさい」


シガルはとぼとぼとこっちに歩いてくる。ちらっと上目遣いで俺を見た後、ハクのほうに歩いて行った。

少し悲しそうな顔で口を開く。


「ハク、ごめん。あなたのことなのに、あたしが変に怒っちゃって」

『ん?なんで謝る。私は嬉しいぞ。シガルが私の為にしたことだろう?』


にこやかなハクの言葉に、シガルは余計に悲しそうな顔をする。


『ど、どうしたシガル』

「・・・落ち着いたら、やりすぎたなって・・・お兄ちゃんにも怒られたし・・・」

「分かってるならいいよ。それにあいつについては半分は自業自得だ。相手次第じゃあれじゃ済まなかっただろうし。とはいえやりすぎなのは変わりないからね

ただ俺も止めに入るタイミングを逃したから、シガル一人が悪いわけじゃないよ」

「うん・・・」


俺達が反省をしていると。ハクが全く空気を読まずに舞台に上がっていく。


「ハク、なにしてんの?」

『え、次は私の番じゃないのか?』

「ハクがやったら誰も話にならないからやめよう?」


いや、割とまじめにやめよう?ハクの攻撃とか人が死ぬ予感がするよ?


『大丈夫だ。手加減は知ってる』

「全く安心できない。それにあの惨状を見て次にやるやつが出てくるとは思えないんだけど」


そう思ってたのに上がってくるバカがいたよ。

さっき絡んできた一人だ。槍を持って、目がめっちゃぎらっぎらしてる。


「亜人、仲間をこんなにしてくれたんだ。覚悟しろよ」

『それは自業自得だ。自らの力量もわきまえず格上に胸を借りるんじゃなくて、挑発したんだ。当然の結果だ』

「うるせえ、黙れ」

『人族は言葉を話し、その対話によって意思疎通を図る生物だ。一方的な感情を相手に押し付けるだけで、会話をしないならそれは思考放棄だ。それならシガルの言う通り野の獣と変わらないぞ』

「黙れつってんだよ!」


男は槍を構え、ハクは気怠そうな感じで男を見る。


『つまらない。さっきまで楽しかったけど、お前たちは本当に面白くないな』

「そうかよ、死ね」


男はその言葉とともに心臓付近めがけて槍で突く。ハクはその突きを右腕の袖をめくって腕で受ける。ぎぃんという音と共に槍は止められた。

槍はハクの腕を貫通するどころか、ハクの腕をぶれさせることすらできなかった。


「なっ!」

『この服は破きたくないし。この程度では楽しくも怖くもない。すぐ終わらせるぞ』


そういってハクは歌う。いや、魔術詠唱なんだけど、鳴き声が歌っているように聞こえるんだよな。

そんなに長くない詠唱の跡、衝撃波が走る。

男はまともにその衝撃を食らって白目をむいて気絶する。兜っぽいものかぶってるし、倒れても大丈夫だろ。


『まあ、こんなものだ。ちゃんと加減したぞ?』


言いながら舞台を降りてくるハク。シガルよりよっぽど優しいやり方だったね。確かに。


「うん、そうだね、大分優しかったね。俺の時もああだったらよかったなぁ」

『自分より強い相手に手加減なんてする意味がわからないぞ?』


あ、そうなんだ。ハクの中では俺はハクより強いのね。

ぶっちゃけ引き分けだと思ってんだけどな、あれ。


「おい、お前まさかお前だけ何せずに済むと思ってんじゃねえだろうな」


舞台の上に斧を持ったオッサンが立ってこっちに何か言ってるけど、無視で行こうとした。


「じゃあ、戻って何か面白そうな仕事探そうか」

「いや、あの、お兄ちゃん」

『タロウ、あれほっとくのか?』


いやだって、俺はもともと殴り合いに発展させる気はなかったもの。

口で言ってきたことには口で返すつもりだったのに、なぜかこんなことになったんだし。


「ここまでの惨状を見たうえで来るってことは、よっぽど実力があるか、よっぽどの馬鹿かどっちかだろうけど、あれは後者だ。

悪いけど、そんなの相手にはする気はないよ。ハクへの暴言は見逃せなかったけど、だからって、殴るのは話が違うと思うんだ」


とはいえ、これは俺の意見だ。それをシガルやハクに押し付けるつもりはない。

特にこういう輩が当たり前にいる土地なら、そんな甘いことは言ってられない所も有るだろう。


「タロウはやる気ないってよ、お前もやめとけ」

「うるせえ!ナマラさんの言葉でも従えねえな!そのクソガキどもは無事じゃ返さねえ!仲間がやられてんだぞ!」


仲間がやられた、ねえ。なぜ仲間意識があるなら、相手にもあると思えないのか。


「それはこちらも同じことでしょう。あなた方が俺たちの仲間を先にバカにしたんです。それに反論を出来ず、暴力に訴えようとしたのはそちらが先でしょう?

自身の行いを省みず、自らに降りかかったものだけを見て文句を言うんですね、あなた方全員。

本当に話にならない。それがまかり通るなら尚の事。亜人がどうかと言っていましたが、あなたたちのほうが亜人よりよっぽど危険ですよ」


今思っていること、さっき言いたかったことをぶちまける。亜人を悪しざまに言っておきながら、やってることは先の戦争の時にそのやりすぎた亜人たちがやった事と、こいつらのやり方は何の差異も無いと俺は思ってる。

自分の意見が、自分の気持ちが通らない。だから暴力という手段に出た。

そしてその結果自らの被害が大きければそれを恨むあたり、もっとたちが悪い。自らが原因だとわかってない辺り、性質が悪いを通り越してるかもしれない。


それに亜人たちは、最初の切っ掛けは自らの身分を、権利を、自由を取り戻すための戦いだ。

こいつらは違う。ただ自分の意見を押し通すためだけにやった。ならこいつらは蔑んでいる亜人以下だ。


「何か反論は?」

「るせえ!もう御託はいいんだよ!とっととかかってこい!」

「さっきの話を聞いてないんですか?やる気はないですよ。ハクも言ってましたが、会話ができない人しかいないですね、あなた達」

「馬鹿にしやがって・・・・!」

「だから、そういうのがおかしいんですよ。まず最初の原因を作ったのはあなた達で、これはその結果ですよ。

誰よりも人を馬鹿にしてるのはあなた達です。相手を見ていない。言葉を聞いていない。自らの都合のいい部分しか見ていない。人を害すっていう事の意味を理解して無い。

殺すってことは殺されるっていう事だってわかって言ってますか?」


わからないんだろうなこの人には、と思いながら言う。俺もさすがに腹が立ってるから優しくは言えない。

けどちゃんと会話はしているつもりだ。激昂せず、静かに、ちゃんと。


「うるせぇ!死ねぇ!!」


だが相手は想像以上の馬鹿だった。舞台から飛び降りて武器を振るって来る。

その攻撃にナマラさんがとっさに斧で防ごうとしているが、そこからじゃここには間に合わない。

しょうが、ないか。

俺は仙術で強化して、思いっきり斧を殴りつける。その衝撃で斧は粉砕する。

ちょっと強化しすぎた。そらすだけのつもりだったんだけどな。


「・・・・はぁ!?」

「武器がなくなりましたね。まだやります?」

「・・・・ひぃ!」


オッサンは呆然とした後、状況を理解し、ぺたんと腰が抜けたように落ちる。いや、実際抜けたのかな?


「やっぱりあなた達は人を馬鹿にしてますね。自らが行うことは良くて、自らに降りかかる事を考えていない。会話ができる生き物の取る行動ではないですね」

「な、なんなんだお前ら!」

「何なんだ?見てわかりませんか?人間ですよ。あなた方こそ何なんですか?こちらの言葉を理解出来ず襲ってきたという事は、魔物ですか?」

「ま、魔物だと!?」

「だってそうでしょう?さっきだって、俺はやる気がないと言っているのに襲ってきましたよね。ああ、盗賊や暴漢とかかもしれませんね?」


そういって俺はヤカナさんを見る。なんだかんだ俺も大概腹は立っている。この手の奴らにかける情けなど持っていない。

さすがにそこまで俺は優しくない。シガルを殺すと言った。その時点で俺の腹の中は煮えくり返っていたんだ。

冷静に見えるのは表面だけ。だから止めるのも遅くなった。


「お前は組合証剥奪の上、身柄を拘束、殺人未遂でしかるべき場所に出てもらう。そこの二人は無期限凍結だ。相手を殺害するつもりだっただろうが、相手が戦いを認めた事による優しい処置だと思え。

これは『決闘』じゃない。殺害行為が明確に確認できてる以上全員容赦はせんぞ」

「な、そんな!」

「俺はやめとけって言ったぞ」


ヤカナさんが処分を言い渡し、ナマラさんはそれを冷たい目であいつらに自業自得と言い放つ。


「抵抗すんなよ。流石に俺もちょっとキレてんだよ。お前みてえなのが組合にいるとは思わなかったわ」

「異論ある者はいるか?」


ナマラさんが本気で威圧している。怖いな。ヤカナさんも同じぐらいの威圧で周りに問う。あれ反論できる人いんの?あの二人めっちゃ怖いわ。

あー、しかしなんだ。結局力尽くで解決してしまった。悲しいな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る