第66話町は少し騒ぎになってたようです!
「すごかったね」
「すごかったな」
「ちょっと怖かった・・・・」
俺たちはあのあとほかの竜たちとも会うことになり、歓迎を受けた。
数自体は20もいなかったのだが、なんせでかい。
老竜は一番でかいというのがそこでわかったが、他の竜も半端じゃなくでかく、小山がいくつもあるようなものだった。
そんなでかい竜が何体も密集して、人間3人のそばに来ている図を想像して欲しい。
シガルちゃんは最初の方こそビクビクしていたが、竜たちはなかなかフレンドリーで、シガルちゃんも少し緊張が解けたようだった。
とはいえ、機嫌を損ねたら死ぬな。と、頭の片隅にあった俺たち二人は、微妙な緊張感はあったのだが。
イナイ?ものっそい余裕に決まってんじゃないですか。
けどさすがに複数の竜に囲まれる経験はなかったらしく、そこには圧倒されていた。
『ごめんねシガル。訪ねてくる人間で、私たちを楽しませてくれる人間だったから、みんな話したかったんだと思うんだ』
「ううん、大丈夫だよ、ハク。ありがとう」
ハクが俺の頭の上でシガルちゃんに謝ると、にこやかに返すシガルちゃん。
この二人・・一人と一匹?いや、面倒だ。二人はなんか気が付いたら仲良くなってた。
ちなみに下りの最中です。あの断崖絶壁は流石にもう嫌だなぁと思っていたら、帰りは普通に緩やかな山道のところまで送ってあげようと言われたので甘えることにした。
なので今はのんびりてくてくと町に戻っている。
『今はどこに向かってるの?』
「一番近くの町だよ。流石に疲れたから宿で休みたい・・・・」
「そうだね、流石に疲れたね・・・・」
「2日ぐらいでだらしねぇなぁ。私たちは足があるからいいけど、旅するなら6,7日ほどまともな町に着けねえのもザラだぞ?」
いや、まって、単純に歩くのが疲れたわけでも、街につかないのが疲れたわけでもありません。
あの断崖絶壁と、竜との戦いで疲れたんです。
「お姉ちゃん・・さすがに普通の旅の行程で崖登りと竜に戦いを挑むのはないと思う・・・」
「・・・・そうか、すまん」
シガルちゃんに突っ込まれ、さすがにバツが悪かったのかあたまをポリポリかきながら謝るイナイ。
『宿か!人間の沢山入る家だな!初めて入る!』
「・・・・そういえば竜入れてくれるのかな?」
「竜神を邪険にはしねーだろ」
「大丈夫かなぁ」
「まあ、もし無理なら無理で考えがある。大丈夫かどうかは分からんが、街中歩くならともかく、宿に泊まるぐらいの間は大丈夫だろ」
ふむ?イナイにはなにか考えがあるようだ。
まあ、でも宿に泊まるのは旅の醍醐味の一つだと思うので、できれば泊まりたい。
「ねえ、お姉ちゃん、なんか山道の麓が騒がしいよ・・?」
「ん、ほんとだ」
なにやら兵士さんが集まっている。
何かあったのかな?
『なにかあったのかな!』
ハクが興味津々にしっぽと前足をべちべち俺に当てる。
痛い痛い。めっちゃ痛い。
普通に殴られてるぐらいの威力がある。
「ハク、痛い」
『えー、竜にとってはじゃれてるだけだよー』
「人間はそんなに頑丈じゃないの」
『はーい』
お、素直。老竜に宣言してたのは本気だったのね。
そうこうしていると、麓に集まっていた人たちが俺たちに気がつく。
するとそのうちのひとりが走ってきた。
「良かった!ご無事でしたか!」
イナイを見て安堵した顔をする町の兵士さん。
まさか、ウムルで何かあった?
「どうかされたのですか?」
「山で竜の咆哮と戦いの様子が町から見て取れた上、あなた方が山に向かったと聞きましたので、万が一を考えて捜索をと・・・・」
ああー、あれ見えてたんだ。たぶんあの熱射砲だろうな。
しかし捜索隊か、いい町だなここ。
「心配をおかけして申し訳ありません。この通り問題はありません」
「そのようですね。よかった。山道の入口の兵士があなたが祠に向かったと聞いたときは驚きました。戦う気はないと言っていたと聞いていたので余計に。
ステル様に何かあればと、我々は生きた心地がしませんでしたよ」
ああ、なるほど、イナイの立場をしってるからの捜索隊か。
国のための捜索隊ね。自分の保身のためもあるか。
アロネスさんの時はどうしたんだろう?
「申し訳ありません。戦う気がなかったのは本当なのです」
「それでは、あれはまた別の者たちだったのですか?なんにせよ無事ならば良か・・・た・・」
そこでやっと俺の頭にいる物体に気がついた。
いいかげん重い。
「あ、あのその、その竜らしき、ものは」
『初めまして人間!私は山で一番若い個体のハクだよ!』
「しゃ、喋った!?」
『そりゃ喋るよ?』
後から追いついてきた兵士さんたちも、おいついたらいきなりハクが喋ったので慌てている。
え、祀ってるのに竜がしゃべるの知らないの?
「た、ただの昔話だと思ってた。竜って本当に話せるんだ」
「こ、子竜なのかな」
「なんであの少年の頭に?」
「いや、それよりもやっぱりあの人たち竜のところまでいったのか」
「でなきゃ子竜といっしょにいない、か?」
兵士さんはハクの発言で若干混乱しておられる。
「あ、あの竜神様の、御子息が、なぜ山から下りてきているのでしょう?」
兵士さんはハクに問うと、ハクは少し、不機嫌そうに応えた。
『私女だもん!!』
あ、女の子だったのね。
があっ!!と威嚇する鳴き声で文句を言うハク。
成竜時に比べると、可愛い。
「ひぃ!も、申し訳ありません」
そう言って、ハクに膝をついて謝罪する兵士。
後ろの兵士さんも釣られて膝をつく。
『むー』
「ハク、ちゃんと謝ってるんだから許してあげなよ。俺たちには竜の性別ってわかりにくいんだ」
『そうなの?むー、じゃあしょうがない。許してあげる』
「あ、ありがとうございます」
兵士さんはそう言って顔を上げたあと、俺の方を不思議そうに見る。
「あ、あの、あなたは、なぜその方とそんなに親しげなのですか?」
と言ってきたので、少し思案した。
なんでって言われると、ハクが望んだからになるのかな?
敬語やだって言われたし。
そう考えていると、俺より先にハクが答えた。
『タロウは竜に勝ったからだよ!そんなタロウに私はついてきたんだ!!』
ハクの言葉に一瞬言葉を失った兵士さんは、俺をまじまじと見て「しんじられない・・・」とつぶやいた。
うん、わかる。すっごいわかる。
「と、ともかく、無事が確認できたなら、領主様にお会いして欲しいのです。この搜索も領主様のご命令ですので」
ああ、なるほど、兵士さんが単独じゃなくて、領主にイナイの話がいってったのか。
国境の門兵、残念だったね。山道の兵士さんが仕事に忠実だったから、あなたが恐れていた事が起きちゃったよ。
ま、イナイが話すかどうかは別か。
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