第65話子竜の名前を決めるそうです!
やばかった。めっちゃやばかった。
最後のアノ一撃は、魔力量がとんでもなく、かわし損ねたら大怪我するのがわかったから、かわすのを諦めた。
結果としては、正解。あれかわそうとしてたら間違いなく食らってた。
なんですかあの熱射砲。放ったと思ったら着弾してんじゃねーか。レーザーかよ。
しかも直前まで軌道が見えないから、もはやそれしか手がなかったぞ。
セルエスさんやアロネスさんなら転移で逃げるんだろうなー・・・。
リンさんどうすんだろ。
魔術障壁を張れるだけ張って、身体保護もやって、それでも足りなかった。
それだけだったら、間違いなく突破されてた。死なないだろうし、大怪我はしなくとも、そこそこの火傷はおったはずだ。
だからぶっつけ本番で今までやってなかった事やってみた。
もうひとつの魔術。世界のルールに従うが、世界を通さないもう一つの魔術。
魔法に限りなく近づくための魔術を、別魔術扱いで上乗せできないか試してみた。
そしたら出来ちゃった。スゲー消耗したけどね!
でも食らってる最中生きた心地がしなかった。素で食らってたら死んでる威力だったもの。
結果、防御しきれたけど、実は魔力すっからかんになりました。
仙術はまだ使える余裕はあるけど、魔術はもう強化が多少使えるのが限界だ。
子竜が負け認めてくれて助かった。
あのまま続行されてたら子竜状態でも負ける予感がする。
んで、なんだって?100年付いてくるって?
それって死ぬまで付いて来るってことだよね?
ていうか、この国にとって竜神なんでしょ?ここの竜さん。でてっていいの?
「いやまあ、付いてくることに関しては構わないんですけど、いいんですか?」
『なんで?』
「いや、なんでって、なんか掟的な物とかないんですか?」
『ないよ?私たちがここからあまり離れないのは、離れられないからだもの』
「離れられない?」
『うん、本能が生まれた地を離れすぎるのを怖がるんだ。だから竜は生まれた地で生涯を終える』
そうなのか。竜ってそういう生物なんだ。
あれ?でもそれじゃあ、この子はついてこれないんじゃないの?
「それじゃあなたもダメなんじゃ・・・」
『大丈夫!それよりもさっきの戦いの方が怖かったし楽しかった!だから大丈夫!』
うん、根拠が全くわからない。
つーか、怖かったって、怖かったのはこっちだよ。
ほぼ一方的に攻撃されて終わってんじゃねーか。
『ほっほっほ、よっぽど楽しかったようだの』
いきなり老竜の声が聞こえてきたけど、姿が見えない。
あの巨体が近づいてきたら絶対わかるはずだけど。
『ここだよ、ここ』
声がした方の、下を見ると、先ほどの老竜の小さいバージョンがいた。
幻影・・じゃねえ、思いっきり実体だ。
え、なに、竜ってサイズ変更デフォルトなの?
「竜殿、その姿は?」
さすがのイナイも気になったようだ。
『これは魔力で作った分身のようなものだよ。とはいっても戦闘能力は皆無に等しいがね。アロネスに聞いておらんのかね?』
「竜と仲良くなった、という話は聞いていましたが、そこまで詳しいことは・・・」
『そうかそうか』
よーく観察すると魔力の流れが見えた。でも実体化した内側でわからないようにしているのか見えにくい。
さっきの巨大化もこの系統なのかな。
「こんな術が・・・これも竜の魔術ですか?
人間には幻影を作り出すものはいますが、実体を作ったものはいません。媒体があれば別ですが、完全に魔術のみの構築は出来ていません」
『そうだよ。これは魔力を霧散させればそのまま消える。少し離れたところから、これで見させてもらっていた。
その者の一時的な成竜への変化もこれと似たようなものだ。あちらは戦闘のための変化なので消耗は激しいがね。
いや、少年。未熟と言っていたが、なかなかどうして。人としてはかなりものもではないか』
「あ、ありがとうございます」
竜に褒められた。
本当の成竜はもっと強いってさっき子竜が言ってたし、そんな強い竜に認められたのはちょっと嬉しいな。
『少年、名前を聞いて良いか?』
「あ、すみません。田中太郎といいます」
『タロウ。君が来てくれたことに感謝する。先程の戦いを見ていたほかの竜達も君を本当の意味で認めたようだ』
あ、みられてたんすか。
どこにいんだろ。
『そしてすまないな、若い者が迷惑をかける』
「・・・・へ?」
『よいか?タロウにあまり迷惑をかけるのではないぞ?ちゃんと彼の言うことを聞くようにな』
『わかってるよ老!ついてくって言ったんだから、タロウと戦いたいってこと以外はちゃんとおとなしくしてるよ!』
『うむ。だが無理だったらすぐもどってくればよいからな?誰も責めはせん』
『うん!』
戦いたいってのもあんまり頻繁にないことを祈りたいです。
っていうか、付いてくるの確定事項なのね。
「あ、あの老、さん?」
そこでシガルちゃんがおどおどとミニ老竜に声をかける。
『む?どうしたね、小さき少女よ』
「あ、あのちょっと見てもらいたい事があるんです」
シガルちゃんが、おどおどしながらミニ老竜のそばまで行って、魔術詠唱を始める。
「その力は竜の力。我が心に刻みし竜の力。竜の炎の力よ、我が元にその力顕現せよ」
シガルちゃんはそう唱えて、さっきまで俺が食らってた竜の炎の魔術の小型を手元に作り出した。
え、なにやってんのこの子。すごくね?
俺実は戦闘中に何回か真似しようとしてたけど無理だったよ?
『なんと・・・・!少女よ、我らの魔術が使えるのか!?』
老竜もさすがに驚いたようだ。
「え、えと、竜の魔術の使い方って、こんな感じ、ですよね」
『うむ!うむ!少女よ!我らの魔術を使う人間を始めてみたぞ!アロネスもできなかったというのに!』
まじか、アロネスさんできなかったのか。
で、それをシガルちゃんがやっちゃったと。
あれ?これヤバくね?本気で尻に敷かれる未来が来るんじゃね?
「やった!お兄ちゃん!これでまたお兄ちゃんに近づけたよ!」
追い越される未来が見えるのでもうちょっとスローリーでお願いします。
とは言えんよなぁ。俺も頑張るしかないか。
複雑な思いを持ちながらシガルちゃんを撫でる。めっちゃ嬉しそう。
『少女よ、名前を教えてもらえるか?』
「シ、シガルです。シガル・スタッドラーズです」
『そうか。シガルよ。お主は将来優秀な魔術師になるであろうな。その時は是非ここに来て欲しい』
「は、はい!」
シガルちゃんは認められたのが嬉しいのか、全力で返事した。
けど、これってあれだよ?強くなったらここに来て戦えっていう話だよ?
まあいいか、そのときは一緒に行って変わってあげよう。
必要ないって言われる未来は見ない方向で。
話が落ち着くと子竜が話しかけてくる。
『よろしくね!タロウ!』
「うん、よろしく・・・そういえばあなたの名前は?」
『名前はないよ!竜に名前はない!もし呼びにくいなら付けていいよ!』
このネーミングセンスのなさはじーちゃん譲りの俺に名前をつけろとな。
よーし後悔するなよ!
「じゃあハクで」
『ハクか!わかった!』
理由聞かれなかった。あ、もしかして翻訳で意味が伝わってるパターンかな。
時々不安なだよなぁ、この魔術。
まあ老竜がかけてるみたいだから、大丈夫だとは思うんだけど・・・。
ちなみに白いからです。うん、石を投げないでね?
『改めてよろしくね!タロウ!』
「うん、よろしくお願いします。ハクさん」
『ハク!敬語もいらない!』
「あ、はい、ごめん。よろしく、ハク」
『よし!!』
ハクは気軽な対応がいいそうだ。
なんかイメージしてた竜とことごとく違うなぁ。
この子も老竜も。ここが特殊なのかな?
そんなこんなでなんか子竜が加わったんだけど、竜を人里に連れて行って大丈夫なのか?
まあ、なんとかなるか。
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