第8話戦闘技術以外も学びます!

「は、なにやってんのタロウ?」


ある日、リビングで錬金術の基礎のおさらいをしてる俺を見て、イナイさんが意味が解らないと言った様子で俺に聞いてきた。

目が思いっきり見開かれているのが少し怖い。


「え、何って、錬金術ですけど・・・」


手元にある道具とイナイさんの顔に目線を往復させて、よく解らないままに応える。

だって、本当に何でそんな顔されてるのか解らないし。


「はあ!? おい、アロネス! アロネース!!」


俺の返事を聞いて、イナイさんが凄い形相でアロネスさんを呼ぶ。

な、何だろ、一体何が始まるんだろうか。


「んだよ、うっせえなぁ、どうしたイナイ」


イナイさんの叫びに応え、アロネスさんが自室から出て二階の通路から顔を出す。

顔が面倒くさい、って書いてある。


「何だじゃねえ! 何でタロウが錬金術覚えてんだよ!」

「良いじゃねーか。俺言葉しか教えてなくて仲間はずれ気分だったんだよ。魔剣作ってやろうかと思ったけど、もう技工剣お前が作っちまったし」


魔剣? 魔剣なんてあるのか。

てっきり魔導技工剣が魔剣の立ち位置だと思ってた。

技工剣と何が違うんだろ。


「ぐぬぬ・・・!」


イナイさんが気に食わなそうに唸っている。

もしかして、俺錬金術覚えちゃダメだったのだろうか。

アロネスさんが教えるっていうから、素直にホイホイ聞いてたんだけど。


「タロウ!」

「ハッ、ハイ!」


うわ、驚いた。こっちにいきなり来るとは思わなかった。

目が怖いんだけど、何を怒られるんだろう。

ていうか、何で俺怒られるんだろう。


「技工教えんぞ!」

「はい?」


怒られる事を想像して構えていたら、予想外の事を言われてしまった。

いや、教えてくれるのは楽しそうで良いんだけど、いきなり何で?

もしかしてアロネスさんと同じで、自分が何か教えてないのが気に食わないのかな。

この剣貰ってる時点でありがたいんだけどなぁ。


「いくらなんでも、技工士の技は教えたからってすぐどうにかはなんねえだろ」


アロネスさんが呆れたように言いながら一階に下りてくる。

それを聞いて、イナイさんは不満そう彼を睨みながら口を開く。


「んな事いったら錬金術なんか極めんの何十年かかんだよ!」

「10年かかんなかったぜ?」

「お前と一緒にすんな!」

「技工士極めるよりましだわ。お前こそ技工士のベテランがだいたい何十年修行して店持ってんのか、知ってんだろ」

「ふん、それこそ10年かかんねえよあの程度!」

「お前こそお前基準で考えんなよ・・・」


えーと、お互いがお互いに突出しすぎてるせいで何やら論点がずれてる様な。

それに現時点では俺、アロネスさんに教えられた事の大半解ってねーし。

ていうか解るはずが無い。そもそも俺凡人だし。

だからこそ教えて貰った事を復習してたんだ。


「えっと、俺としては教えてくれるなら、楽しそうなんで教えて欲しいんですけど」

「そ、そうか!」


とりあえず二人が喧嘩しそうな雰囲気なので、俺の意見を言っておく。

それを聞いて、ぱあっという感じでイナイさんが笑顔になった。

この人ホントコロコロ表情変わって可愛いな。この可愛らしさはちょっと狡いと思う。


「タロウ」


イナイさんの態度にホッとしていると、アロネスさんがえらく真剣な顔で声をかけて来た。

その様子に不思議に思いながらも彼に応える。


「ハイ、なんですか?」

「怪我、覚悟しろよ」

「え゛?」


技工って怪我する物なの? イナイさんが怪我してるとこ見た事ないんですけど。

いや、さっき二人の会話考えたら、この二人は自分の技術だけなら異常なレベルなのか。

これは安請け合いをしてしまったかも。

ちょっと不安だなぁ・・・。









結果としては安請け合いをしたことを後悔しない物でした。

いや、怪我はしたんだけど何ていうか、工作やってる感じで楽しかった。

科学の実験と工作を一緒にやってる様な感じ。

錬金術も科学の実験って感じなんだけど、技工とは少し違う。

技工は様々なギミックを組み込む道具を作る物。

錬金術は魔術を軸に、単一の特性を持たせた魔術道具を作る物。

大体そんな感じっぽい。


爆弾なら技工士、魔術爆弾なら錬金術って感じで言われた。

爆弾はガワを作って、火薬を詰めて、導火線つけて、っていう作業をして出来る。

魔術爆弾は魔術の通りのいい媒体に何かしらのキーワードを組み込み、それを起動する事で中に組まれた魔術を発動させる。

技工も魔術要素はあるが、技術寄りか魔術寄りかっていう点が大きな違いっぽい。

俺としては元の世界で某錬金ゲーやってたせいでどっちも錬金術気分だ。

たぶんこれ、イナイさんに言ったら怒るだろうなぁ。


でもその考えもあながち間違ってないらしいんだよな。

様々な金属や素材類は錬金術士が見つけてる感じで、それを技工士が加工してるっぽい。

二人合わせたら完全に某錬金ゲーだね!


まあ、教えられたとはいえ、どっちもまだ大した事は出来ない。

錬金術は精々初歩の傷薬が作れて、技巧は解り易い照明を作る程度だ。

何か二人とも張り切り始めて、色々覚えさせられそうな気配があるけど・・・・。

でも技工の技術は少し覚えておきたい。剣の手入れをイナイさんに任せっきりってものね。


あ、そういえば結局アロネスさんは魔剣を作ってきた。

懐に入れておける程度の短剣で、対象を内側から魔力で破壊するという、えぐい物渡してきた。

しかもその際に必要な魔力は全て周囲から集めるみたい。

これ、手加減とかできないじゃないですかヤダー。本当に危ない時だけに使おう。

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